
数十億ドル規模の自然災害は新常識となる:Mark Gongloff
気候変動を最小限に抑えるために化石燃料を捨てることは、安くも簡単でもないだろう。しかし、10億ドル規模の災害が発生するたびに、それを怠ればますます高くつき、命にかかわることになることを思い知らされる。
(ブルームバーグ・オピニオン) -- 気候変動を最小限に抑えるために化石燃料を捨てることは、安くも簡単でもないだろう。しかし、10億ドル規模の災害が発生するたびに、それを怠ればますます高くつき、命にかかわることになることを思い知らされる。
今週、米国海洋大気庁が発表したところによると、米国では今年すでに、10億ドル以上の被害が発生した自然災害が7件発生している。その中には、カリフォルニアの洪水、中西部と南東部の春の嵐、北東部の冬の嵐などが含まれる。2000年代前半までは、10億ドル規模の災害が7件発生すれば、典型的な年であったと考えられていた。しかし、今では5月上旬に発生するのが普通であり、山火事やハリケーンのピークまでまだ数カ月ある。
先月、Journal of Climate Change and Health誌に発表された研究によると、このような大災害の発生ペースは、二酸化炭素の大気中濃度や地球の気温の上昇とほぼ同時に、過去数年間で指数関数的に増加しているとのことである。世界各国政府は数十年にわたって自国の排出量をゼロにする計画を立てていないため、炭素濃度は上昇し続け、地球をより暑く、自然災害をより頻繁に、激しくすることが予想される。

調査によると、1980年代、米国では年間平均でわずか3件の10億ドル規模の災害が発生していた。しかし、過去5年間で、その平均は18回近くまで増加した。
この数字だけでは、大災害の規模が拡大していることを実感することはできない。NOAAによれば、昨年は新常識の中では平均的な年だったかもしれないが、18の大規模災害の被害額は合計1,752億ドルに上り、記録上3番目に高額な年だった。最もコストのかかる5年のうち3年は2017年以降に発生しており、その総額は7,100億ドルで、昨年のインフレ削減法で承認された連邦気候変動対策費3,690億ドルを圧倒している。
そして、これらの数字は単に再建費用を反映したものだ。この数字には、増え続ける人命や経済的な機会損失は含まれていない。1980年代には、10億ドル規模の災害で年間平均約300人が亡くなっいた。それが、2010年代には523人にまで増えている。
しかし、高額な災害の数が急増する一方で、アメリカ人は災害の渦中に身を置き続けている。フロリダ、テキサス、アリゾナなど、致命的な天候のリスクが高まる州は、近年、米国で最も急速に成長している州である。そのため、住宅保険料が高騰し、多くの住宅所有者が洪水などに対する追加補償を見送るようになっていると、先週のニューヨーク・タイムズ紙は報じている。Nationwide Insuranceは、米国の住宅の3分の2が十分な保険に加入していないと述べている。もちろん、これはNationwide Insuranceが言うようなことだが、保険料の高騰で住宅所有者が尻込みするのは目に見えている。その結果、悲劇が起こったときに、より多くの費用を負担することになりかねない。
格付け会社や資産運用会社、活動的な投資家たちは、コストがかかろうとも気候変動リスクに対する説明と備えを企業に求めている。
世論調査では、アメリカ人の3分の2が気候変動への対策を望んでいる。しかし、化石燃料産業とその同盟者たちは、エネルギー転換のコストが負担になると主張して、実際の行動を遅らせようとしている。しかし、遅れの代償に比べれば、大したことはない。
Multibillion-Dollar Natural Disasters Are the New Normal: Mark Gongloff
© 2023 Bloomberg L.P.
翻訳:吉田拓史、株式会社アクシオンテクノロジーズ