Metaのメタバース戦略はAppleより「オープンで安価」な選択肢になること

Metaのマーク・ザッカーバーグCEOは社内会議でMetaのメタバース戦略はAppleより「オープンで安価」な選択肢になることだと明言し、ゲームコンソールのような価格設定で相互運用性を高める考えを示した。

米テクノロジーメディアThe Vergeが入手した社内全体会議での発言記録によると、ザッカーバーグは今月初め、「インターネットが進むべき方向」を決めるためにAppleと競争している、と従業員に語ったという。彼は、早ければ今年後半に初のARヘッドセットを発表すると見られているAppleに対して、Metaはよりオープンで安価な代替品として位置づけられると述べた。

「これは哲学とアイデアの競争であり、彼らはすべてを自分たちで行い、緊密に統合することによって、より良い消費者体験を構築すると信じている」と、The Vergeによると、ザッカーバーグは語ったという。「そして、我々は、異なる企業間で専門化することで多くのことが行われ、より大きなエコシステムが存在することが可能になると信じている」

もしザッカーバーグが望むようにVRとARが普及すれば、彼はMetaをAppleのiOSに対するAndroidと位置づけたいようだ。

同社が販売するVRヘッドセット「Oculus」は、サイドローディング(ソフトウェアを定められた通常の入手経路とは異なる手段で端末に導入すること)を禁止していない。GoogleのAndroidがサイドローディングを可能にしているのと同様である。

AppleはApp Storeによるユーザーのアプリ取得の厳格な管理を好んでいる。この点は、メタバースという言葉の最初の提唱者であるエピックゲームズのティム・スウィーニーが、Appleを相手取って行っている訴訟のポイントでもある。

7月中旬に発足したメタバース標準化フォーラムには、37の組織が参加。World Wide Web Consortium、Khronos Group、XR Associationなどの標準化団体、Sony Interactive Entertainment、Unity、Epic Gamesなどのゲーム会社、Microsoft、Adobe、Metaなどの技術系企業が含まれている。このフォーラムは相互運用性標準の開発を目的としたものだが、Appleは参加しなかった。

ザッカーバーグは「これは驚くことではない。アップルは、これまで数世代にわたって、コンピューティングのクローズドな提供者だった」と語っている。

また、Questを100ドル値上げしたばかりとはいえ、Metaのハードウェアは、ほとんどが赤字か損益分岐で販売されている。これは約50%とも言われる粗利でiPhoneを売るAppleとは異なる一方、プレイステーションやXboxのようなゲーミングコンソールと似たビジネスモデルが模索されていることを意味している

「肝心なのは、私たちのビジネスは、主にデバイスにプレミアムをつけているわけではないということです。私たちは、できるだけ多くの人がそこで交流することを望んでいます。そのためには、相互運用が可能なオープンなエコシステムにすることが必要だ」

ザッカーバーグは、Appleのハードウェアとソフトウェアをしっかりと制御して構築するというアプローチが、iPhoneではうまくいったが、メタバースについては、「オープンなエコシステムとクローズドなエコシステムのどちらが良いのか、前もってはあまりはっきりしていない」と説明したという。

「PCを振り返ってみると、Windowsは明らかに規模が大きく、人々が使うデフォルトや標準になった。Macもそうだったが、PCとWindowsは、その環境における最高のエコシステムだったと思う」

「モバイルの場合は、その逆だと思う。しかし、先進国やアメリカ、西ヨーロッパなどのハイエンドでは、カルチャーセッターやデベロッパーの多くが、iPhoneやiOSのほうに偏っているように思う。だから、Appleは世界で最も価値のある企業、あるいは世界で最も価値のある企業のうちの1つであると言えるだろう」

これを聞く限りは、メタバース機器の展開において、AppleよりMetaに期待できる気がするだろう。しかし、この社内会議の文書が意図的にリークされたものであることには留意しないといけないだろう。戦略的な意図があってザッカーバーグの「言葉」をメディアに流しているわけだ。

最初は誰しもザッカーバーグのような理想主義的な事を言うものだが、市場を独占するチャンスがあるとみるやいなや、Appleのような慣行を始めるケースはこの世にごまんとあることを付け加えて起きたい。