ニコン、カメラ以外の技術サプライヤーとして再起を図る
「ほとんどの人は当社をカメラの会社だと思っているが、歴史的に見れば、創業当時は他社に部品を供給していた」と、ニコンCEOの馬立稔和はブルームバーグのインタビューに対して述べた。

カメラと光学機器で知られるニコンが、知名度を下げ、他の企業への部品供給業者としてより存在感を増すかもしれない企業改革に着手している。
「ほとんどの人は当社をカメラの会社だと思っているが、歴史的に見れば、創業当時は他社に部品を供給していた」と、最高経営責任者の馬立稔和はブルームバーグのインタビューに対して述べた。現在では「B to C」と「B to B」の境界線は「もうそれほど明確ではない」と語った。
1917年に設立されたこのメーカーは、ほぼ独力で大衆に身近な高品質カメラをもたらし、ソニー株式会社やトヨタ自動車株式会社などのブランドに加わり、戦後の瓦礫からわずか数十年で日本を世界第2位の経済大国にした。しかし、スマートフォンやより高度なチップ製造技術の台頭により、かつてニコンがリーダーであった2013年のピーク時の1兆円(80億ドル)からおよそ50%縮小し、収益に打撃を与えている。
この流れを変えるため、馬立CEO(66)は、ニコンをチップ製造業界向け部品、先端材料、ヘルスケア製品、および関連サービスのプロバイダーとして位置づけ直し、デジタルカメラ市場での存在感を維持しようと考えている。先週発表されたニコンの中期計画では、CEOは2025年度に売上高7,000億円、営業利益700億円を目標としており、3月31日に終了した会計年度では470億円、5500億円の予想から上方修正された。
そのためには、M&Aも視野に入れている。馬立は、2,000億円から3,000億円、場合によっては1,000億円以上の案件を用意するという。馬立のニコン変革計画は、いかなる人員削減も求めてはいない。その代わり、2万人近い従業員の再教育と再集中化を図ろうとしている。実際、今年度の国内採用は、過去10年間で最多の570人にまで倍増する計画だ。
「経験、知識、そして新卒の人材が必要なのです」と馬立は言う。
光応用製品
半導体と関連するチップ製造装置の需要の高まりも、ニコンの成長見通しを後押ししている。たとえ、チップに回路をエッチングする最先端の露光装置マシンを提供しなくなったとしても、である。
かつてはニコンとキヤノンが競合していたが、現在はASMLがトップエンドの市場を独占している。ASMLは、極端紫外線リソグラフィと呼ばれる技術を使った装置の開発に成功し、インテル社やサムスン電子社などが最先端のチップを作ることを可能にした。
それでもニコンは、検査装置や関連する光学製品を提供することで、EUVのエコシステムにおける役割を維持する計画だと馬立は述べている。EUV関連機器は「予想以上に需要があり、昨年から増産している」という。
1980年に入社し、後にリソグラフィー部門を率いた馬立は、ニコンの歴史の中で、民生用機器事業と産業用機器事業の間の移行は何度も起こってきたという。「ここ10〜15年はデジタルカメラが大きなビジネスとなったが、それ以前の80〜90年代は露光機の方が収益性が高かった」という。
また、ニコンは将来の成長の種となるような新技術をいくつか持っている。その一つが、レーザーでチタン合金の部品を作る3Dプリンター「レーザーマイスター」だ。また、リブレット加工は、サメの人工皮膜のような微細な表面を作り、摩擦を大幅に低減する技術で、自動車のボディや風力発電機の表面の効率を高める省エネ技術として期待されている。
これらの製品に共通するのは、ニコンがこれらの分野に進出しても、何らかの形で「光学」を利用していることだ。
「これまでは、高度な機能を持った製品を販売すれば、それを買って自分の好きなように使ってもらえた」と馬立は言いる。「しかし、今は、その製品で何を実現したいかが重要なのだ」
Reed Stevenson, Yuki Furukawa. Nikon Looks Beyond Cameras to Reinvent Itself as Tech Supplier. © 2022 Bloomberg L.P.