![AIのゴールドラッシュで儲ける企業はNVIDIAだけではない[英エコノミスト]](/content/images/size/w2640/2023/06/398771787--1-.jpg)
AIのゴールドラッシュで儲ける企業はNVIDIAだけではない[英エコノミスト]

サンノゼ郊外にある灰色の四角いビルには、点滅する機械がずらりと並んでいる。ハイエンドサーバー、ネットワーク機器、データストレージシステムが、色とりどりのワイヤーで結ばれている。頭上では大型の空調設備がグルグルと回っている。その騒音に、来場者は思わず声を上げてしまう。
このビルは、データセンターのスペースをリースする企業、エクイニクスのものだ。内部の設備は、人工知能(AI)システムの運用に利用を拡大している企業顧客のものだ。AIのゴールドラッシュは、バーチャル会話システムChatGPTのような生成モデルの驚異的な精巧さに拍車がかかり、この技術の可能性を利用する人たちに大きな利益を約束している。しかし、ゴールドラッシュの初期と同様、必要なピックやシャベルを売る人たちは、すでに幸運を手にしているのだ。
5月24日、多くのAIサーバーに搭載される半導体を設計しているNVIDIAは、4月までの3ヶ月間、アナリストの売上と利益の予測を上回り、今四半期の売上はウォール街の予測の半分である110億ドルになる見込みだと述べた。5月29日、NVIDIAのボスであるジェンスン・フアンは、世界は「新しいコンピューティング時代の転換点」にあると宣言した。その翌日、決算後に30%上昇した同社の市場価値は、一時1兆ドルを突破した。
AMDのような設計会社から台湾のTSMCのような製造会社まで、他のチップ企業もAIの興奮に飲み込まれている。色とりどりのケーブル、うるさい空調設備、データセンターの床面積から、AIモデルの実行やデータの整理に役立つソフトウェアまで、あらゆるものを含むコンピューティング・インフラのプロバイダーも同様だ。このような企業30数社を均等に加重した指数は、11月のChatGPTの開始以来40%上昇しており、ハイテク企業の多いNASDAQ指数の13%と比べても力強い(グラフ参照)。「新しい技術スタックが出現している」と、ロビー団体であるAI Infrastructure AllianceのDaniel Jeffriesは総括する。

一見すると、ChatGPTや急速に拡大するライバル企業の背後にある巧妙な「大規模言語モデル」よりも、AIの仕組みの方が刺激的でないように見える。しかし、モデルを構築するメーカーや、モデルを利用するアプリケーションのメーカーが、将来のAIのパイを奪い合うためには、今すぐ、しかも大量のコンピューティング・パワーが必要だ。
生成的なものを含む最新のAIシステムは、AI以外のアプリケーションはもちろんのこと、旧来のものよりもはるかに計算負荷が高いのだ。インターネット企業のクラウドコンピューティング部門であるGoogle Cloud PlatformでAIインフラストラクチャを担当するAmin Vahdatは、過去6年間、モデルサイズは毎年10倍ずつ増加していると述べている。ChatGPTの最新版であるGPT-4は、前作の5倍以上となる1兆個のパラメータを使ってデータを解析している。モデルが複雑になればなるほど、学習させるための計算量も増えていくる。