クアルコム、PC市場の命運をApple出身者チームに賭ける

要点

クアルコムは「Apple M1に匹敵するチップ」を作ろうとしている。モバイルでMediaTekの強烈な追い上げを受けるクアルコムは、Appleの半導体部門出身のチームを14億ドルで獲得。同社がPCやデータセンターでインテルやAMDとの競争に食い込めるかはこのチームにかかっている。


クアルコムはPC用プロセッサを本格的に強化しようとしている。同社は11月中旬、AppleのMシリーズプロセッサと互角に渡り合えるArmベースの次世代SoCの計画を発表した。

クアルコムの最高技術責任者(CTO)であるジェームズ・トンプソン博士は同社の2021年の投資家向けイベントでWindowsをサポートする次世代Armシステムオンチップ(SoC)の計画を発表し、2023年の新チップを搭載した製品の発売に先立ち、約9ヵ月でハードウェア顧客にサンプルを提供することを目標とした。

アップルのMシリーズチップ(最新のMacBook ProとMacBook Airのラップトップ、iMacとMac Miniのデスクトップに搭載されている)に対抗する製品を提供することに加えて、クアルコムは「持続的なパフォーマンスとバッテリー寿命」でもこの分野をリードすることを目指しているという。

この新チップは、クアルコムが今年初めに14億ドルの巨額買収を行ったNuviaチームによって設計される。注目すべきは、Nuviaは、iPhoneに搭載されているAシリーズチップに携わったことのある元Apple社員の3人(John Bruno, Manu Gulati, Gerard Williams III)によって2019年に設立されたことだ。

TechCrunchが参照したAppleのプレスリリースによると、3人はApple在籍中に合計20個のチップを開発し、100件以上の特許を取得している。

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Gulatiは2017年にAppleを離れGoogleにリードSoCアーキテクトとして採用され、Pixelスマホ用のハイエンドモバイルチップを独自に構築する試みに従事していたとされる。BrunoもGulatiの誘いでGoogleに籍を移した。しかし、2019年2月にAシリーズのチーフアーキテクトを務めていたGerard Williams IIIがAppleを辞め、GulatiとBrunoもGoogleを退社し、データセンター向けArmプロセッサを設計するNuviaを共同設立した。

Nuviaの投資家にはAppleが2008年に半導体設計のために買収し、Aシリーズ開発チームとなったPA Semiの創業者でもあるAmarjit Gillも含まれていた。

Nuviaを共同創業したJohn Bruno(左)、Gerard Williams III(中央)、Manu Gulati(右) Image via Qualcomm.

クアルコムは最先端CPUで遅れをとっていることを感じ、M1、M1 Pro、M1 Maxの設計の基盤を作った3人の人材獲得を含んだNuviaの買収に進んだようだ。今回の発表で獲得したチームの目標が確定的になった。Nuvia Arm CPUの設計は、もともと高性能で電力効率の高いサーバーに焦点を当てたものとされていた。

クアルコムはAppleと同様にクアルコムもArmからアーキテクチャライセンスを取得しており、ARMv9などのArmアーキテクチャを実装した独自のCPUコアをゼロから設計することができる。Appleは、iThingsや現在のMacに搭載されているArm互換のシリコンにこの方法を多用しており、Qualcommもかつては独自のコアを設計していたが、ArmのCPU設計図を使用し、自社製のアクセラレータをチップに追加することに専念することにした。

クアルコムは、最終的にはAppleのようなアプローチに戻り、NuviaのArm互換のCPU設計を採用すると思われる。最初のNuviaチップはPCに搭載され、次に自動車、そしてAndroid OSを搭載した高級モバイル機器に搭載されるSnapdragonチップに搭載されるだろうか。

インテルやAMDのシェアを奪うには少なくとも数年かかる

同社は現実的にWindows PCの市場シェアをx86からすぐに奪うことはできないと考えている。クアルコムのCFOであるAkash Palkhiwalaは、カンファレンスで「今後3年間で、PCとコンピューティングの機会から得られる収益は増加するでしょうが、当社の予測に英雄的な仮定はない」と語った。

その一方で、同社は徐々にAppleとの関係を解消しつつある。AppleのiPhoneは、10年以上にわたってクアルコムの主要な収益源だったが、現在はインテルから取得した技術をもとに、独自の5Gモデムを開発している。Appleはクアルコムとのライセンスをめぐり長期にわたる法廷闘争を続けていた。

クアルコムはこれまでにも、Snapdragon 8cxシリーズのプロセッサや、Surface XのSQ1およびSQ2チップでのマイクロソフトとの提携など、PC用チップへの参入を試みてきた。しかし、AppleのArmベースのチップは、昨年M1シリーズを発表した際に、パワーとバッテリー寿命の革新的な性能を提供したが、クアルコムのPCへの取り組みはこれまでのところ精彩を欠いている。これまでのところ、Microsoft、Lenovo、Samsung、HP、Acerが製造しているWindows 10および11のPCに搭載されているクアルコムのArmシステムオンチップに対して、消費者はあまり興味を示してこなかった。

ArmベースのWindows PCは、x86/x64用に作られたプログラムをWindowsのArmエミュレータで実行するものが多いため、パフォーマンスが低下する可能性がある。マイクロソフトは、自社のOSに64ビットのArmのネイティブコードを作成するよう開発者に呼びかけており、ソフトウェアの再コンパイルが容易であることを強調している。一方、Armは、ElectronやChromium Embedded Frameworkなどのフレームワークを通じて、Windowsアプリケーションの開発を推進している。

クアルコムは、あらゆる面で激しい競争に直面している。モバイル分野では、MediaTekが設計やノード移行ではるかに積極的になっている。MediaTekはTSMCのN4プロセスの最初のユーザーとなり、フラッグシップSoC「Dimensity 9000」を公式ページ上で発表した。これはMediaTekがクアルコムの陣地に明確に興味を示していることを示唆している。

サムスンはRDNAグラフィックスのライセンスを取得し、自社のSoCを強化している。GoogleはSamsungと協力して自社のカスタムTensorチップを開発しており、Appleは前述したとおりインテルの技術を買いモデムの開発を進めている。

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