プライバシー遵守のGoogleキラーProtonの台頭

暗号化メールサービス新興企業のProtonMailは5月下旬、社名を「Proton」に変更すると発表した。同社は今後、関連製品の「エコシステム」を提供し、すべて1つの有料会員制サービスを通じてアクセスできるようになる。Protonの加入者は、暗号化された電子メールだけでなく、暗号化されたカレンダー、ストレージ、VPNにもアクセスできるようになる。

Protonのすべてのサービスは無料版として提供され、より高度な機能とより多くのストレージは有料プランで利用できる。これらによって、プライバシー重視の人にとってのGoogleの地位をより包括的に得ようという目論見と考えられる。

ProtonMailはスイスにある素粒子物理学の研究所、ヨーロッパ合同原子核研究機構(CERN)の研究員がプライバシーについて議論する中で、エンドツーエンドで暗号化し、外部からの監視が不可能なGmail的なメールシステムを開発したことに端を発している。2014年5月にクラウドファンディングでサービスを開始し、2016年3月にCERNとMITの科学者グループが中心となり、自由に利用できるオープンソースコードで使いやすいエンドツーエンドの暗号メールサービスを提供することを目的として立ち上げられた。

暗号化された電子メールは、実は1980年代から存在していたが、その利用は極めて困難であった。エドワード・スノーデンが米国家安全保障局(NSA)の監視プログラムの詳細を共有するためにエンドツーエンドの暗号化メールを使うように記者に頼んだとき、記者はこのシステムをうまく使うことができなかった。

ProtonMailは基本的に暗号化されたメッセージと秘密鍵を分離している。すべての暗号化はProtonMailのサーバーではなく、ユーザーのコンピューターで行われ、ProtonMailがオリジナルのメッセージを見る方法はない。これは、他のすべてのシステムとは異なる。Gmailは暗号化を施しているが、暗号化されたメッセージと、そのメッセージを解読する鍵は持ち続けているからだ。

ProtonMailは、あなたのメールを積極的にスキャンして、関連する広告をオンラインで配信する Gmailのような無料サービスの広告ベースの収益モデルに代わるものだ。台湾生まれの元素粒子物理学者であるプロトンのCEOであるAndy Yenは「Googleが常に抱えている課題は、基本的にユーザーの情報を広告主に販売しているため、ユーザーのデータから最大の価値を引き出すために、法律やユーザーの許容範囲内で、ユーザーのプライバシーを侵害する動機付けがあることだ」とタイム誌のインタビューで主張している。

「私たちのモデルは、実際にお客様のプライバシーを可能な限り保護することであり、それがお客様が私たちにお金を支払う理由だからだ。そして、その直接的な関係により、ビジネスとしての私たちと、お客様が実際に望んでいることとの間で、より良い利害の一致が可能になると考えている」

YenはAppleが用いる「プライバシーの保護者の側に立っている」というレトリックにも同意していない。彼はWiredのインタビューで、Appleがアプリストアの管理を一元的に行う理由のひとつにプライバシーを上げている点について質問され、「Appleが基本的に主張しているのは、『私たちは世界で唯一、プライバシーを正しく守ることができる企業だから、私たちにアプリストアの利用を継続させる必要がある』ということです。これは、プライバシーを独占しようとするもので、私は何の意味もないと思っている」と答えている。