クアルコム、NvidiaのArm買収への異議を各国当局に申し立て

Qualcommは、NvidiaによるArm社の買収について、連邦取引委員会(FTC)、欧州委員会、英国競争市場庁、中国国家市場規制局(SAMR)に異議申し立てを行った。Qualcommは、この買収はNvidiaがArmの技術のゲートキーパーとして機能するリスクがあり、他のチップメーカーがArmの技術を使用できなくなる可能性があると考えている。最も重要なことは、Qualcommは、Nvidiaが買収で利益を上げる唯一の方法は、Arm社の技術をゲートキーパーにすることである、ということを示唆するケースを構築していることだ。

Armは、現在SoftBankの傘下にあり、Appleを含む500社以上の企業にチップデザインのライセンスを供与している。世界のスマートフォンの95%にArmのアーキテクチャが採用されていることから、AMDやAppleなどのArmのライセンシーのライバルであるNvidiaが同社を買収することが大きな懸念材料となっている。

Armのアーキテクチャは、iPhone 12のA14やMacBook ProのM1など、Appleのカスタムシリコンプロセッサのすべての基盤となっており、AppleはArmの命令セットのライセンスを取得している。AppleはArmからコア設計全体のライセンスを取得せず、独自のカスタムシリコンを設計しているが、この取引が許可されれば、NvidiaはApple独自のチップの背後にある命令セットに影響力を持ちうる。

Qualcommは、独占禁止法の担当者や法律顧問と話をしたことで、取引が継続されるかどうかに大きな役割を果たすと考えているという。NvidiaはCNBCに対して、規制当局が買収のメリットを理解してくれると確信していると語ったが、5人の業界幹部は、この取引が規制当局によって「ブロックされる可能性が非常に高い」と述べている。

結局のところ、この取引が反競争的であるかどうかは、非常にシンプルな考えに基づいている。Armは競争を可能にするものである。MediaTekであろうと、Amazon Web Servicesであろうと、Qualcommであろうと、NXPであろうと、どのような企業でも、R&D(研究開発)予算に関係なく、Armからライセンスを取得し、独自のArmベースのCPUを構築することができる。これはユニークなモデルだ。

ソフトバンクは昨年、AppleにArmの買収に興味があるかどうか打診したと報じられていたが、Appleはこうした規制上の懸念もあって、その機会を断ったとみられている。Qualcommのほかにも、AIチップの新興企業であるGlaphcoreは、今回の買収は反競争的だとして英国の競争市場局に懸念を示しており、中国ではファーウェイも同様に今回の買収を阻止するよう求めている。