RISC-Vの普及の鍵はインテルが握る

要点

インテルとRISC-Vは共生関係を見出した。RISC-VはArm追撃のための足りないリソースをインテルから補填してもらうことを期待し、インテルはRISC-Vの支援によってIFSに新しいビジネスチャンスがもたらされることを期待している。


今月パリで開催されたRISC-V Weekで、インテル ・ファウンドリー・サービス(IFS)のRISC-Vエコシステム実現担当シニアディレクターであるゲイリー・マーツは、インテルはRISC-V Internationalのメンバーとして、RISC-Vのシステムオンチップアーキテクチャとソフトウェアスタックにさらに「相当な貢献」する予定だと述べている。

マーツは、インテルがRISC-Vコミュニティにリソースを提供し、技術ギャップを埋める手助けをする予定だ、と宣言した。 RISC-Vオープンインストラクションは、チップの特性に対応することなくアプリケーションやソフトウェアスタックを展開できるよう、プラットフォーム間で一貫性と安定性を保つ必要がある。

これはオープンソースの命令セットアーキテクチャ(ISA)を唄うRISC-Vにとっては願ったり叶ったりの宣言だった。

RISC-Vは、サーバーやPCで主流のプロセッサを動かすにはかなり遠い存在である。RISC-Vにはx86やArmのISAに見られる、PCやサーバーのような市場で普及するために重要な多くの機能が欠けている。RISC-V Internationalは、サーバーやPCなどの市場でRISC-Vに勝機を見出すために必要な機能の開発で、膨大な量の作業に直面している。

RISC-Vを設計したSiFiveのCEOであるパトリック・リトルは3月、同社の設計を用いた商用プロセッサがPCに搭載されるのは2025年後半、サーバー向けの取り組みはそれよりも先になると予想していると語った

英テクノロジーメディアThe Registerによると、マーツは、 SoC側では、ブートセキュリティ、ファームウェアレジリエンス、パーティショニング、アイソレーション、仮想化、パフォーマンスモニタリングなどの分野でインテルが貢献すると述べた。

また、データセンターにおける信頼性、可用性、保守性、自動車における機能安全、モバイル機器における電源管理など、特定のセグメントに対してSoCアーキテクチャの機能を最適化することも視野に入れているという。さらにソフトウェアに関しては、インテルは「ベンダー間で互換性を持たせなければならないスタックのコア部分に注力する」とマーツは述べた

インテルは2018年にRISC-Vチップ設計者のSiFiveに投資したが、昨年、同社の復活の鍵となる受託製造事業IFSがx86、Arm、RISC-V ISAに対応したチップを作る意思があることを明らかにし、RISC-Vに関する半導体の巨人の姿勢が強固なものとなった。さらに2月には、ISAの運営団体であるRISC-V Internationalに加盟し、RISC-Vコンポーネントの製造を含むチップ設計者を支援する10億ドルのイノベーションファンドを立ち上げたと発表している。

インテルは、2月にRISC-V Internationalに加盟した際、非営利団体の理事会とISAの新機能や仕様を決定する技術運営委員会に参加できる最高ランクのプレミアム会員になった。

インテルはRISC-Vの支援によってIFSに新しいビジネスチャンスがもたらされることを期待している。RISC-V InternationalのCEOである カリスタ・レドモンドが最近、ISAの将来の成功にはインテルのような企業が不可欠であると語ったことを考えると、インテルとRISC-Vは共生的な関係にあるようだ。

また、x86やArmといったプロプライエタリなISAに歴史的に関係してきたRISC-V Internationalメンバー企業にとって、RISC-Vリスクを分散するためにRISC-Vに注目している。また、人工知能(AI)のようなドメイン固有のコンピューティングのニーズに応えるための融通の利く代替のISAとRISC-Vをみなしている。

レドモンドは半導体企業は、RISC-V、x86、ArmのISAを同じ道具箱の中の道具として見るようになるのではないかと考えているという。これにより、デバイスやITインフラで使用されるISAがより多く混在することになり、これはすでに始まっていることだという。