シンガポール政府系ファンド、インフレ率上昇で「深刻な不確実性」を警告

シンガポールの政府系ファンドGICは、今年度の収益が安定したと報告したが、投資家がインフレ、パンデミックリスク、地政学的課題への懸念に直面していることから、「深い不確実性」に警鐘を鳴らした。

GICは27日に発表した年次報告書の中で、ファンドのポートフォリオは2022年3月31日までの20年間で、年率7%のドル建て名目収益を記録したと発表した。

また、インフレを除いた20年間の実質収益率も年率4.2%を達成した。GICは年次決算を発表していない。

しかし、世界最大の投資家の一人であるGICは、世界環境について暗い見通しを示している。

GICの経営陣は、フィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューでは、インフレの高騰は近年得た利益を覆す可能性があると述べ、政策立案者が適切な措置をとらなければ、世界は長期にわたるスタグフレーションに直面する可能性があると警告した。

「私たちは、長期にわたる困難な状況に直面する可能性がある。(スタグフレーションは)10年も続くかもしれないと、最高経営責任者のリム・チョウ・キアットは、物価高と低成長が混在する苦しい状況を指摘したという。

シンガポールの国営ファンドGICは、数年にわたる物価上昇による混乱に備え、不動産やその他のインフレ防止資産に資金を振り向けている。FTによると、GICは資産総額を公表していないが、3月までの1年間に不動産へのエクスポージャーをポートフォリオの8%から10%に増やした。また、株式への投資比率は2ポイント低下し、全体の30%となった。

キアットは報告書の中で、「長年にわたるデフレへの懸念は、インフレ率の上昇への懸念に変わり、経済政策担当者は景気刺激策の撤回を余儀なくされている」と述べている。

「同時に、気候変動の危機は刻々と迫っており、パンデミックのリスクは長引き、地政学的な対立や国内政治の分裂も拡大している。政策立案者やビジネスリーダー、ひいては投資家にとって、簡単な選択肢はない」

シンガポール政府が100%出資する民間企業であるGICは、シンガポール通貨庁や国営投資家のテマセク・ホールディングスとともに、シンガポールの外貨準備を管理している。GICは推定で7,000億ドルを運営していると言われる。