ロシア発プロパガンダのオアシスとなった米極右系SNS

極右系SNSでは、大規模の陰謀論とヘイトが制限されずに飛び交っている。ウクライナ戦争以降、通常のプラットフォームでは偽情報工作の拡散効率が落ちていると考えられるが、極右系SNSはオアシスの様相を呈している。


最近人気を集めている極右系動画共有プラットフォームRumbleでは、ロシアの国営ニュースチャンネルであるテレビ局「RT」が製作したプロパガンダが24時間体制で放映されている。

最近、物議を醸した番組がある。それは、米国人捕虜が「ロシア軍が民間人を無差別に殺害している」という「西側からのプロパガンダ」に騙されてウクライナの戦いに参加した、と語るものだった。捕虜はこの動画を撮影するまで拷問を受けていたことがニューヨーク・タイムズの調べで判明している。

ロシア軍がウクライナに侵攻した後、ロシアのプロパガンダを流布するRTはアメリカではほとんど放送されなくなり、欧州連合(EU)諸国でも禁止されている。TwitterとYouTubeの親会社であるGoogleは、RTのコンテンツを抑制するための措置を取っている。しかし、自由放任主義のRumbleはその抜け穴だ。

Rumbleは、オハイオ州の共和党上院議員候補であるJ.D.バンスが共同設立したベンチャーキャピタル(VC)から大規模な投資を受けている。このVCの支援者が、日本でもよく知られる著名投資家のピーター・ティールだ。ティールはJ.D.バンスの選挙運動の資金をほぼ一人で賄ってもいる。

Rumbleには、極右のための他のどのプラットフォームよりも、はるかに多くの人々が集まっている。最近のプレスリリースで、同社は8月の月間平均ユーザー数が7,800万人に達し、このうち6,300万人が米国とカナダにいると主張している。Similarwebのデータによると、Rumbleは現在、トランプが旗振り役のTruth Socialの10倍以上、Parlerの100倍近いトラフィックがある。

2013年に設立されたRumbleは、もともと動画から収入を得たいユーザーにツールを提供することで差別化を図っていたが、今では「極右の御用達動画サイト」になっている。

Rumbleは2020年後半から上昇基調にある。右翼タレントのダン・ボンギーノが資本参加し、人気番組をYouTubeから持ち込んだ。サイトは大きな成長を遂げ、それは1月6日の暴動後にエスカレートした。2020年初めの月間平均ユーザー数は100万人だったのが、2021年第3四半期には3,600万人に達したという。2021年12月には株式公開の計画を発表している。

近年、Facebook、Twitter、Youtubeなどのソーシャルメディアに代わる新たな選択肢がいくつか登場している。その中には、オルタナティブ・ソーシャルメディアと呼ばれる、「トランプ派向け」のものがあり、通常のプラットフォームで遮断される傾向がある偽情報、陰謀論が流通している。これらのサイトは、トランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)や反ワクチン、1月6日の国会議事堂襲撃のシンパを抱えている。

ピュー・リサーチ・センターがBitChute、Gab、Gettr、Parler、Rumble、Telegram、Truth Socialの7つの代表的なオルタナティブ・ソーシャルメディアを調査した結果、以下のような特徴がわかっている。

  1. これらのサイトのいずれかをニュースのために利用していると答えた米国人は10人に1人以下(図表参照)
  2. これらのサイトは、既存のサイトには居場所がないと感じている人たちの避難所になっている
  3. ほとんどの人が言論の自由と反検閲を支持
  4. これらのサイトの著名なアカウントの15%が、他の場所で禁止されている
  5. 7つのサイトのうち少なくとも1つから定期的にニュースを入手している人の大多数(66%)は、共和党員または共和党寄りであり、より定評あるサイトでのニュース消費者が民主党員または民主党寄りであるのとは対照的である。
右派のオルタナティブ・ソーシャル・メディアを利用するのは、米国人の6%。出典:ピュー・リサーチ・センター