SPACが退潮フェイズに突入

要点

近年の株式市場ブームの象徴である特別目的買収会社(SPAC)の退潮傾向が明白だ。数々のスキャンダルに見舞われ、株価パフォーマンスは低く、合併が成就せず償還するケースが相次いでいる。


米証券取引等監視委員会(SEC)は30日、SPACについて、スポンサー(発起人)が潜在的投資家に「挑戦的な業績予想」を提示することを許容する規制を取り除くことを含む、抜本的な改革を提案した。

新規株式公開(IPO)と同等の情報開示規定が導入されることにより、SPACも従来の新規株式公開に適用される規則に沿ったものとなると想定されている。また、この動きは、経営陣が予想収益を誇張し、訴訟リスクに直面することを防ぐものだ。

「投資家は情報の非対称性、詐欺、紛争に関して、また、開示、マーケティング手法、ゲートキーパー、発行者に関して、従来のIPOから受ける保護に値する」とSECのゲーリー・ゲンスラー委員長は声明で述べている。

投資家はいまやアニマルスピリッツよりも自己資金の保全を優先し始めている。なぜなら、SPACを通じて市場デビューを遂げた銘柄のパフォーマンスは暗澹たるものだ。

過去2年間にSPAC取引を終えた企業の半数は、通常SPACが取引を開始する10ドルの価格から40%以上下落し、数百億ドルの新興企業の市場価値が消失している。スポーツ賭博のDraftKingsや、英国の大富豪リチャード・ブランソンが設立した宇宙旅行会社Virgin Galacticなど、かつて注目を集めた多くの企業の損失は、約1年前のピーク時から60%を超えている。

多くの企業が、以前発表したSPAC取引から撤退しており、撤退のためにSPACに数百万ドルを支払わなければならないこともある。WSJが引用したDealogicのデータによると、貯蓄・投資アプリのAcorns Growが最も新しく、火曜日に約22億ドルのSPAC契約を終了し、11月初めからSPAC契約を終了した10社目となった。昨年1〜10月の間にSPAC契約が終了したのは13社だった。

規制当局の監視が強化され、スキャンダルが相次ぎ、SPACの合併が不調に終わる中、投資家はSPACの取引から資金を償還する割合が高まってきている。Dealogicのデータによると、2月の平均償還率は90%に達しているようだ。

これを受け、合併の成功の可否に関わらずSPACのIPOから一律の手数料を取り、リスクに晒されずに儲けている投資銀行は、償還に直面した場合、取引手数料を削減することに同意する傾向を示している。

フィナンシャルタイムズによると、クレディ・スイスは、ベンチャーキャピタル企業ファーストマークがのスポンサーであるSPACとブロードバンド企業スターリーとの合併について、手数料を1,450万ドルから1,000万ドルに引き下げることに合意した。

その他、投資銀行が手数料を引き下げた例としては、SPACのグローバル・スパック・パートナーズで、台湾のビデオソフト会社ゴリラ・テクノロジーと合併することに合意していた。合併を4社は、合併が完了すれば、合計586万ドル(IPO収入の3.5%相当)の手数料を獲得することになる。両社は償還額に応じて手数料を比例配分し、最大で20%削減することで合意した。