Starlinkはアフリカのゲームチェンジャーになりうる

私たちの多くは、インターネットに無制限にアクセスできない世界を想像することは困難だ。清潔な水や電気にアクセスできることと並んで、基本的人権とみなされるべきであると主張する人さえいる。

しかし、実際には2023年1月時点の世界人口のうち、インターネットユーザーは64.4％に過ぎない。アジアとヨーロッパが、インターネットに接続している人々の大半を占めている。

アフリカは3位だ。しかし、アクセシビリティは地域によって千差万別だ。南部アフリカでは約66％の人がインターネットユーザーだ。東アフリカでは26％、中央アフリカではわずか24％だ。農村部の人々は、大陸の都市部の人々よりもはるかにアクセスしにくいのだ。

インターネットへのアクセスは、さまざまな形で世界を広げる。エンターテインメント、教育、決済、さらには民主主義の強化など、さまざまな面で世界を広げることができるのだ。

だからこそ、アフリカの人々へのインターネットアクセスの提供の進歩は、祝福に値するのだ。2023年1月、宇宙船や通信衛星の製造・打ち上げを行う米国企業SpaceXは、同社のStarlinkサービスがナイジェリアで利用可能になったと発表した。これは大陸で初めてのことだった。その後、ルワンダでも利用できるようになった。

Starlinkは、衛星を利用したインターネットサービスだ。今年後半には、コンゴ民主共和国（DRC）、ケニア、タンザニアなど、大陸の他の地域でも展開される予定だ。2024年には、さらに多くの地域をカバーする予定だ。

特に農村部や遠隔地では、デジタルインフラの不備や、光ファイバーケーブルや携帯電話マストへの投資コストが高いため、アフリカの接続格差を埋める重要な手段となり得るのだ。国連は、2030年までにアフリカ全域でユニバーサルアクセスを実現する戦略を掲げているが、これは革新的なアプローチなしには不可能だ。

Starlinkは、そのようなイノベーションの一つだ。すべてのユーザーが宇宙空間で同じインフラを利用するため、携帯電話マストの設置や陸上での光ファイバーケーブルの敷設が不要になる。

Starlinkとは？

Starlinkは、地球の表面から約550kmという近距離にある数千個の衛星からなるネットワークで、ブロードバンドインターネットアクセスを提供する。

もちろん、衛星はすでにインターネット接続に使われている。しかし、従来のインターネット衛星は1つの静止物体であり、軌道上の位置は地球に対して固定されている。また、この衛星は地球から35,000km以上離れた場所にあるため、信号がエンドユーザーに届くまでに長い時間がかかる。遠隔地でインターネットを利用したことがある人なら誰でも知っているように、信号は遠くへ行けば行くほど悪くなるため、従来のインターネット衛星は速度が遅く、信頼性が低い傾向がありた。ライブストリーミング、オンラインゲーム、ビデオ通話などのアクティビティを十分にサポートすることができない。

Starlinkの地球低軌道衛星は、衛星同士を相互に接続して信号を中継し、高速で安定したインターネットサービスを実現することができる。また、その数も多い。2023年2月17日、SpaceXは、合計で3,981基の衛星を打ち上げ、現在3,639基が稼働していると発表した。

同社は、オンデマンドで自社衛星を打ち上げ、必要に応じて最新技術に更新することができ、信頼性を高めているという。

現在、アフリカのインターネットアクセスの多くは、モバイル・ワイヤレス・インターネットによって提供されており、信号は陸上のタワーから中継される。このため、衛星インターネットに比べ、カバー範囲が狭く、速度も遅い。

Starlinkの場合、懸念されるのはそのコストだ。例えば、2023年2月初旬、ナイジェリアのブロードバンドインターネットプロバイダーであるFiberOneは、最大500Mbpsという高速でインターネットを提供していた。設置料は32,231ナイラ（約70米ドル）、月額利用料は100,000ナイラ（約220米ドル）程度だった。一方、ナイジェリアのStarlinkは、キットと設置に一度276,000ナイラ（599米ドル）ほどかかり、その後月額利用料として198,000ナイラ（43米ドル）ほどかかる。

Starlinkは、長期的には光ファイバーや携帯電話のインターネットプロバイダーよりも安価だ。しかし、月収28,000ナイラ（60米ドル）以下のナイジェリアの農村部の平均的な世帯が、それを購入できるでしょうか。アフリカのほとんどの地方や遠隔地でも平均所得が同様に低いことを考えると、アフリカ大陸でStarlinkがターゲットとしているユーザーがサービスを利用できない恐れがある。

研究用途

こうした懸念はさておき、より高速なインターネットがアフリカを前進させることは間違いないだろう。モバイル・ワイヤレス・インターネットの欠点はあるものの、アフリカを技術的に大きく発展させたと評価されている。Starlinkのようなサービスは、いくつかの分野でさらに大きな成長を促す可能性がある。教育、民主主義と統治への参加、災害リスクの軽減と緩和、健康、農業などがその例である。

惑星科学や宇宙科学の研究者として、衛星データを使った地質学的なモニタリングやモデリングなどを行っている私は、インターネットに接続できない場所でのリモートセンシングや地球観測など、衛星の活用方法に特に興味がある。Starlinkがアフリカに上陸することで、アフリカが技術開発の新たな段階に入ることを期待している。

例えば、衛星画像から農作物の収穫量を知ることができ、農家が灌漑、施肥、収穫などの判断を下すのに役立つ。また、貯水池の水位を広範囲かつ効果的に監視し、利用可能な水量の透明性を高めることで、水不足を早期に警告し、水源を共有する国間でデータを統一することも可能だ。

政府、研究者、産業界は、このようなプロジェクトに必要なデータのために、スウォームと呼ばれる特殊なStarlink衛星の利用権を購入することができる。Starlinkの衛星は数が多く、スピードも速いので、多くのデータを素早く収集し、頻繁に更新することができるのだ。Starlinkのアフリカへの到着は、アフリカ大陸の科学者、政府、産業界が協力するための素晴らしい機会だ。

原文：Starlink: SpaceX’s new internet service could be a gamechanger in Africa

筆者：Marian Selorm Sapah - Lecturer/Research Scientist, University of Ghana

情報公開：Marian Selorm Sapahは、この論文から利益を得るような企業や組織のために働いたり、相談役になったり、株式を所有したり、資金提供を受けているわけではなく、また、学術的な任命以外の関連する所属先もあらない。

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翻訳：吉田拓史、株式会社アクシオンテクノロジーズ