【FT】日本のIPOの急増はベンチャーキャピタル文化の欠如を意味する

12月のIPOラッシュに象徴されるように、日本の新興企業は上場する以外の選択肢がほとんどないことが大きな問題だ。日本では、大企業以外のベンチャーキャピタルが長期的に存在しないため、上場するかどうかの判断ができない。

フィナンシャル・タイムズ

12月下旬、東京証券取引所マザーズ市場にデビューしたInstitution for a Global Society株式会社(IGS、東京都渋谷区)は、最初の15分で株価が26%上昇した。取引開始から15分で、同社の株式は発行価格から26%も上昇したが、30分後にはその上昇分のほとんどが消え、1時間後にはさらに13%上昇した。

吐き気を催すようなスタートを切ったが、学校や企業向けに人材評価ソフトを販売する東京の会社には、長く輝かしい上場の未来が待っているかもしれない。しかし今のところ、IGSの最大の特徴は、日本で最も新規上場が盛んな月に、最後の新規上場を果たしたことだ。12月に入ってから東京では約32社が上場し、そのうち7社がクリスマスイブに集中し、25社がマザーズ市場に上場した。

この忙しさは、東京の株式市場を面白くしている(小型株に限った話だが)。IPOの主幹事証券会社にとっては、有益な仕事である。しかし、これは日本のリスクと資本配置の関係が根本的に歪んでいることを示しているのかもしれない。珠玉の企業もあるが、投資家に言わせると、これらの企業の多くは上場するには不十分なようだ。

このようにIPOが同じ期間に異常に集中しているのは、エネルギッシュな資本主義が機能していることを示唆している。また、楽観的な見方をすれば、日本の起業家精神はイメージダウンしているにもかかわらず、活気に満ちているということでもある。

その4週間に行われた広範に渡るIPOは、賭けるべき産業の幅広い選択肢を提供している。フィンテック関連企業や「人工知能によるソリューション」を謳う企業に加え、ソーシャルメディアのアカウントマネージャー、医療データの照合を行う企業、出来合いのお茶を製造する企業、美容院の予約を管理するスタートアップ企業などがある。

また、マザーズ銘柄に注目している日本の個人投資家にとっても、12月のIPOラッシュは、まさに彼らが期待しているような変化と売買の可能性を生み出した。

今月のIPOの中で最もパフォーマンスが良かったもの(デジタルマーケティングソリューションを提供する企業)は約250%上昇し、最も悪かったもの(証券会社向けアプリのクラウドアーキテクチャを提供する企業)は、デビュー時に発行価格から35%も下落し、この規模のIPOとしては過去20年間で最悪の初日の急落になった。

しかし、これに対してもっと悲観的な見方もある。12月のIPOブームは、いくつかの新規株式発行に関わった証券会社の関係者によると、「急いでいるように見えた。ほとんどパニック状態であった」という。ある証券会社の関係者は、上場するにはあまりにも未熟な企業が多いと指摘する。マザーズ市場は、日本の上場市場の中で最もエキサイティングな市場と言われているが、2021年に入ってから17%近く下落し、11%以上上昇した東証1部のTOPIXをはるかに下回っている。

年末のIPOラッシュはその兆候であり、マザーズの不振はその先行指標であるが、2022年の日本株は悪い結果になるのではないかという不安がある。

みずほ証券のアナリストは、この懸念の原因をいくつか挙げているが、中でも11月に米インデックス大手MSCIがワールド・インデックスにおける日本のウェイトを6.9%から5.7%に引き下げたことが大きい。日本株を調査する価値がないと判断する米国のファンドが増えている、ということだ。12月に23銘柄が新規公開された週には、海外投資家は現物株を40億ドル売り越した。売り越しは6週連続だった。

日銀が取引所為替証拠金取引のペースを落としていることもあり、日本の個人投資家は2021年に10年ぶりに株式の純購入者となったのである。市場のベテランや企業のIPOを支援する証券会社は、この層が中期的にも信頼できるリスクを許容していないことを知っている。

しかし、今回のIPOラッシュに象徴されるように、日本の新興企業は上場する以外の選択肢がほとんどないことが大きな問題だ。日本では、大企業以外のベンチャーキャピタルが長期的に存在しないため、上場するかどうかの判断ができない。

シリコンバレーなどではベンチャーキャピタルが対応する資金調達も、日本ではスタートアップ企業の育成に長けた公開市場の投資家の方が、企業のアーリーステージ(初期段階)での資金調達に適していると考えられているからだ。それに加えて、シャープなスーツを着た証券会社の人々は、創業者に迅速な資金を約束し、上場することで人材採用が容易になることをスタートアップ企業に思い出させる。12月のIPOパーティは、投資家にとっても新興企業にとっても、あっという間に1月の二日酔いへと転じてしまうかもしれない。

Leo Lewis (leo.lewis@ft.com)

Surge in Japanese IPOs points to lack of venture capital culture, 29 December 2021. FT.com. Link To FT.com: https://www.ft.com/content/4e8aab09-0a76-401f-984d-3719772cb6d0

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