SVB的状況にある米銀は多い―最新論文が示唆

米国には破綻したシリコンバレーバンク(SVB)と同様に金利リスクのヘッジが不十分だった銀行が多くあることを示唆する論文が出た。他の中小銀行が、含み損の緩慢な拡大を発端として破綻する可能性は否定できない。


南カリフォルニア大学マーシャル経営大学院のエリカ・ジャン教授、ノースウェスタン大学 ケロッグ 経営大学院のグレガー・マトボス教授、コロンビア大学経営大学院のトマシュ・ピスコルスキ教授、スタンフォード大学経営大学院のアミット・セル教授が執筆し、 SSRNに掲載された未査読論文では、調査結果は、銀行のヘッジ戦略が実質的な金利リスクから自らを保護するのに十分でなかったことを示唆しており、一部の銀行はさらに大きなリスクを取り、状況を悪化させる可能性すらあったことに言及している。

米国の銀行は、2.2兆ドルの資産価値の損失を金利デリバティブ(金融派生商品)のポジションからの利益で十分に相殺できなかったため、金利リスクに対する保険を十分にかけられなかった、とジャン教授らは分析している。

分析によると、支払不能のリスクが最も高い銀行は、より多くのヘッジを行わず、場合によってはヘッジを減らした。脆弱な銀行は、金融引き締め期にヘッジ活動を縮小し、金利がさらに上昇したときに損失が大きくなった。

SVBのケースは、資金繰りが脆弱な銀行が復活のためにギャンブルを行う可能性があることを示す例となる、とジャン教授らは主張している。このような銀行は、現在の会計上の利益を増やすために、ヘッジを売る一方で、大きな損失をもたらす可能性のあるリスクを負った。このような状況では、銀行の株主は利益を得るかもしれないが、悪いシナリオでは、米連邦預金保険公社(FDIC)が損失を負担することになる。

ジャン教授らは、証券およびデリバティブの会計処理は、銀行のヘッジ戦略やインセンティブに影響を与える可能性を指摘している。銀行は、ヘッジ取引に関連する資産を、負債証券とデリバティブという2つの主要なカテゴリーに分けて報告しているが、求められる会計処理は多様であり、時価評価が生じ損益計算書において損失を計上しなければいけないようなヘッジは、一般的な経営者は避けたがることは想像に難くない。このようなインセンティブ構造は、銀行が適切なヘッジを行う理由を奪いかねない、ジャン教授らは主張している。

研究者らはデータソースとして、銀行の米連邦金融機関検査協議会(FFIEC) に対するForm 031と041の報告と米国証券取引委員会(SEC)に対する10Kおよび10Q報告を利用した。

コメント

この論文が提供する洞察は、破綻したSVBと同様の状況にある銀行が米国には多くあることを示唆している。金利上昇へのリスクヘッジが十分でなかったために生じた含み損によって、銀行が新たに倒れても誰も驚きはしないだろう。

参考文献

  1. Jiang, Erica Xuewei and Matvos, Gregor and Piskorski, Tomasz and Seru, Amit, Limited Hedging and Gambling for Resurrection by U.S. Banks During the 2022 Monetary Tightening? (April 3, 2023). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=4410201 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.4410201