チップ大手TSMC、目先の売上減少を補うため支出削減を計画［ブルームバーグ］

(ブルームバーグ) -- 台湾積体電路製造（TSMC）は支出を減らすことで予想を下回る売上高に対応した。この戦略は、テクノロジー業界の低迷がまだ底を打たないだろうという懸念を一層深くした。

同社は今期、4年ぶりの減収となる可能性を示唆。しかし経営陣は、サーバー用チップの需要回復が見込まれることから、通期では微増になると予想している。

同社は、テクノロジーと規模の優位性に賭けて、景気後退の最悪の事態を乗り切ろうとしている。米国が中国製チップの貿易規制を強化する一方、金利上昇、インフレ高騰、潜在的な世界不況の懸念により、消費者はスマートフォンやコンピューターへの支出を抑えている。

最高経営責任者（CEO）の魏哲家は電話会議で、「需要は3カ月前に考えていたよりも軟調だ」と述べた。TSMCとその顧客は、今後数カ月の需給見通しについて「より慎重になる」と同氏は述べた。

世界最大のチップ受託製造業者であるTSMCは、AppleのiPhoneとMac用シリコンチップの独占サプライヤーであるが、米ハイテク大手の中国における組立工程での問題も影響している可能性がある。Appleは、鄭州工場でのコビッド関連の混乱により同社のサプライチェーンの脆弱性が露呈したため、生産量の見積もりを縮小せざるを得なくなった。

ブルームバーグ・インテリジェンスの見解

TSMCは顧客の多様化要求に応え、サムスンやインテルとの競争激化に立ち向かうため、当面は米国と日本を中心とした海外での生産能力拡大が中心になるだろう。急激な減価償却費と操業コストの上昇は、スマートフォン需要回復の不確実性の高まりと相まって、TSMCの売上総利益率を圧迫している−− アナリスト チャールズ・シャム

TSMCの発表によると、第1四半期の売上高は167億ドルから175億ドルとなり、アナリストの平均予測である179億ドルを下回る。上半期の売上高は1桁台半ばから後半に回復し、2023年通年では微増になると予測している。

海通国際証券のアナリスト、ジェフ・プーは、「TSMCの上半期のガイダンスはアナリストの予想とほぼ一致しており、通期の予想は予想よりも良い」と述べた。下半期の成長は、AMD、NVIDIA、Appleなどの顧客からの需要に支えられるだろう、と同氏は述べた。

TSMCは、資本支出が2022年の363億ドルから今年は320億ドルから360億ドルに減少すると述べた。アナリストは、TSMCが2022年の計画を約10％削減した後、349億ドルに減少すると予測していた。

台湾で最も価値のある企業である新竹に本社を置くTSMCの株価は、パンデミックの間に倍増した後、昨年27％下落し、今年は約8％上昇している。同社は台北の取引終了後に発表した。世界最大のチップ・ギア・メーカーでTSMCの主要サプライヤーであるASMLの株価は、アムステルダム取引で約1％上昇した。

ウォール街の大手銀行の中には、TSMCに慎重な姿勢を見せているところもある。先週、ゴールドマン・サックス・グループとUBSグループは、2023年のTSMCの売上高はほとんど変わらないと予想し、後者は株価目標を引き下げた。Bloombergがまとめたデータによると、アナリストの平均目標株価は過去10ヵ月で39％引き下げられ、過去2年間で最低となった。

同社とその顧客は、エレクトロニクス需要の長期的なトレンドが引き続き上昇すると予想している。TSMCは先月、次世代チップの量産を開始し、米アリゾナ州への投資額を400億ドルに増やした。

TSMCの発表によると、12月までの四半期の純利益は78％増の2959億台湾ドル（約97億ドル）。アナリストの平均予想は2,878億台湾ドルだった。売上高は43％増の6,255億台湾ドルで、2年ぶりの未達となった。

TSMCの技術的リーダーシップは、業界全体が低迷する中でも価格面で優位に立っている。利益率の指標である売上総利益率は前期の52.7％から62.2％へと過去最高を記録した。しかし同社は、物価の上昇と海外での生産拡大計画により、利益率が圧迫される可能性があると警告している。

世界の政策立案者は、最先端チップへのアクセスの多くが、北京が侵略を予告している台湾にかかっていることに警戒感を抱いている。アップルを含む主要顧客は、TSMCに先端チップ製造の多角化を求めている。TSMCは日本に第2工場を建設するほか、ヨーロッパに自動車用チップ工場の建設も検討していると幹部は述べている。

--取材協力：Vlad Savov、Gao Yuan、April Roach

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