日本の産業用ロボットが世界の製造業に不可欠な理由
2019年9月26日(木)、米国ユタ州オレムのBlendTec製造施設で、ファナックのロボットアームがミキサー容器を印刷のための所定の位置に移動させている様子。Photographer: George Frey/Bloomberg

日本の産業用ロボットが世界の製造業に不可欠な理由

エコノミスト(英国)

パンデミックに見舞われた2年間、欠品やボトルネックは世界中のメーカーにとって常にフラストレーションの源となってきた。しかし、工場の操業やサプライチェーンの維持に携わる一握りの企業にとっては、こうした苛立ちが元気の源となり、利益をもたらしている。特に日本の産業機器メーカーは、19型インフルエンザによって人的資源が失われ、労働市場の逼迫と賃金上昇の結果、企業が自動化に舵を切ったため、受注が急増した。

世界の産業用ロボットの在庫は、過去10年間で3倍に増えました。業界団体の国際ロボット連盟によると、日本は毎年、新型ロボットの45%を供給している。また、レーザーセンサーから検査装置まで、多くの自動化機器を生産している。キーエンス、ファナック、SMC、レーザーテックの4社は、最近のハイテク株下落の後でも、5年前の2.5倍の株価を保っている(グラフ参照)。キーエンス創業者の滝崎武光は昨年、一時的に日本一の富豪となった。彼の290億ドルの資産は、華やかなハイテク投資家であり、日本企業で最も世界的に知られた顔である孫正義氏の資産の半分である。滝崎の会社やその仲間の機器メーカーは、ほとんど有名ではない。しかし、彼らが製造するハードウェアは、半導体と同様に、多くの産業界のサプライチェーンに欠かせない存在になりつつある。

ロボット好きで知られる日本から、強力なオートメーション企業が生まれたのも不思議ではない。自動車製造のトヨタや家電のパナソニックなど、効率にこだわる日本企業によって開拓されたジャストインタイム生産は、何十年にもわたって人間を機械に置き換えてきた。1990年代に日本の生産年齢人口が減少し始めた後、この競争優位の源泉は国内メーカーにとって必要不可欠なものとなった。そして、この競争優位は、人口減少社会を迎えた他の豊かな国々にとっても必要なものとなりつつある。キーエンスやSMCは、今や収益の半分以上を海外から得ている。ファナックとレーザーテックはさらに国際的で、売上の8割以上を海外から得ている。

特に、アメリカやヨーロッパでは、半導体の自国生産が盛んなため、空圧制御装置をチップメーカーに販売しているSMCのビジネスは好調だと、同社取締役の太田昌宏は言う。レーザーテックは、半導体フォトマスクの検査装置をほぼ独占している。株価は2020年に入ってから4倍に跳ね上がり、アジアで最もパフォーマンスの高い優良株の一つだった。キーエンスの精密センサーも、半導体表面のキズを検出するのに欠かせない。

もちろん、両社のデバイスは他の分野でも重宝されている。工場の大型ロボットアームを製造するファナックは、長い間、自動車の組み立てラインに欠かせない存在であった。ファナックの米国事業を統括するマイク・チッコは、電気自動車の開発には自動車メーカーにさまざまな新しい能力が要求され、そのために新しいタイプのロボットが必要になると指摘する。ファナックは、ドイツのケルンにあるフォードの工場を「フォード・ケルン電動化センター」にするため、今年中に500台のロボットを供給する予定である。

必要不可欠な存在であることは、利益をもたらすことが証明されている。日本の自動化産業の四天王は、いずれも営業利益率20%以上を誇っている。その中で最も収益性の高いキーエンスは、50%を超えている。キーエンスは、過去3四半期とも過去最高の純利益を記録している。キーエンスは、NVIDIAなどのチップメーカーと同様、製品を製造するのではなく、設計し、顧客の工場への展開を支援する。レーザーテックも、自社での製造はほとんど行っていない。この資本負担の軽さが利益維持に寄与している。キーエンスは、売上高のわずか3%を研究開発に費やしている。同様に、SMCも4%程度である。ファナックは、ほぼすべての製品を自社で製造しており、生産能力や研究開発への投資も多い。しかし、その資金を効率的に使い、ロボットメーカーらしく、自社製のロボットを多数投入して顧客向けのロボットを作っている。同社最大の「無停電」工場では、高価な人間のオペレーターを置かずに1ヶ月以上稼働させることができる。

日本のオートメーション企業の成功は、企業文化にも起因している。SMCは、顧客の機器に関する深い知識を持つシステムエンジニアを兼ねた6,000人の営業担当者のネットワークを維持している。キーエンスは、中間マージンを一切取らず、すべて自社営業部隊で製品を販売している。また、SMCと同様に、顧客の工場で多くの時間を費やし、通常では気づかないような不具合や微調整を行うエンジニアも多い。そして、その努力に見合うだけの報酬を得ている。

日本経済新聞によると、キーエンスの平均給与は昨年度15万ドルを超えたという。キーエンスは昨年度、100億ドル以上の流動資産を保有していた。質朴な企業の控えめな性格と厳格な管理態度は非常によく確立されており、質朴な態度が突然変化することは、企業にとって大きな、おそらく好ましくない変化の兆しかもしれないと言う投資家がいる。

投資家は読みに頼らざるを得ない。少なくとも、株主とのオープンな関係を求める現代の欧米の基準からすると、企業内部で何が起きているのか必ずしも明らかではないからだ。ハイテクに特化した英国の資産運用会社ベイリーギフォードが2020年に微妙な表現をしたように、SMBCの「企業統治に対する日本の伝統的アプローチ」は、株主との関わりを限定的にしか提供していないのである。キーエンスに出資しているある資産運用会社は、経営陣と直接話をしたことがないと報告している。

国際化が進めば進むほど、株主への配当も投資も、より率直に、より質素に行わなければならないというプレッシャーに直面することになる。ファナックは、米国のアクティビスト・ヘッジファンドであるサード・ポイントからの圧力により、2015年に大幅な増配を行った。今後、日本では、投資家に対する風当たりが弱くなるにつれ、オートメーション企業も様々な要請を受けることが予想される。

一方、革新的な技術を維持するためには、各社とも研究開発にかなりの費用をかける必要があるかもしれない。欧米とのハイテクをめぐる地政学的緊張の中で、中国は、ロボット工学を含むあらゆる先端技術の海外サプライヤーへの依存度を下げたいと考えている。もし成功すれば、中国の戦略は日本企業から大きな市場を奪うと同時に、新たな世界的ライバルを生み出すことになるだろう。必要不可欠な存在になることは、一つのことである。必要不可欠な存在になることと、そうであり続けることは全く別の話である。要請を受けることが予想される。一方、革新的な技術を維持するためには、各社とも研究開発にかなりの費用をかける必要があるかもしれない。必要不可欠な存在になることと、そうであり続けることは全く別の話である。

“From Why Japan’s Automation Inc is indispensable to global industry, published under licence. The original content, in English, can be found on https://www.economist.com/business/2022/02/12/why-japans-automation-inc-is-indispensable-to-global-industry

Why Japan’s Automation Inc is indispensable to global industry
A little-known pinch-point in the world’s supply chains