キーエンスは、日本企業の中でも決して知名度の高い企業ではない。市場ウォッチャーを含む多くの人に尋ねても、キーエンスについて多くを語らないだろう。しかし、世界の工場経営者に同じ質問をすれば、すぐにその名を知ることができるだろう。1974年、大学を卒業していない若い起業家、滝崎武光によって設立された同社は、数十年にわたり、センサーやロボットを使って製造業が工場を最大限に活用するための支援を行ってきた。航空宇宙（ボーイング）から半導体（サムスン、TSMC）まで、あらゆる業界の大企業を顧客に持つ。
1930年代、デトロイト郊外にあるフォードのリバールージュ工場では、10万人の従業員が働き、49秒に1台の割合で自動車が生産されていた。メキシコ人画家ディエゴ・リベラは、新しい繁栄の時代を切り開くために、英雄的な労働者と未来的な機械が調和して働く姿を描いた一連の壁画を描いた。 それから約100年後、リバールージュは新たな息吹を得ようとしている。建設作業員が、アメリカで最も売れているピックアップのEV版、F-150ライトニングを生産する組立ラインを忙しく拡張しているのだ。リベラが訪れたときよりも、カランコロンという音は少なくなり、ヒューヒューという音が増えている。機械の爪が車のフレームを軽々とあちこちに運んでいく。自動運転の荷車は、工場の床を滑るように移動する。フォードは、アメリカ製の電気自動車（EV）を購入した人に対する新しい税額控除のおかげで、販売台数が急増することを期待している。しかし、ルネッサンスを迎えているのは工場だけではない。かつてリバールージュが体現しいた、最先端の製造業に従事する多くの人々によって繁栄するアメリカという夢もまた、同様なのだ。
アジアの技術系企業の中には、経営難に陥った米金融機関シリコンバレー銀行への現金預金を公表しているところもあるが、その額は自社の経営にとって重要でないことを強調しているところがほとんどだ。
