中国のテック大手取り締まりは終わったか?

中国政府の大手テクノロジー企業の取り締まりがついに終わった、という見方が力を持ちつつある。シグナルのようなものは確かに発せられているが、習近平政権がどこに終着点を設定しているかはまだ不透明だ。


中国政府は、アリババとテンセントの現地法人に「黄金株」を導入する方向で動いているとフィナンシャル・タイムズ(FT)が先週末報じた。この出資は、通常インターネットグループの主要事業体の1%の株を取得するもので、特定の事業決定に関する特別な権利を伴うものだ。

ブルームバーグが引用した企業データベース「Qichacha」の情報によると、中国国家インターネット情報弁公室(CAC)の一部門が1月4日、広州にあるアリババのデジタルメディア子会社の1%を取得した。同社のメディアポートフォリオには、ストリーミングプラットフォームのYoukuやモバイルブラウザのUC Webなどの事業が含まれている。また、CAC関係者の名前を持つ新しい取締役が同日任命されたことが記録されており、フィナンシャル・タイムズの報道を裏付けている。

政府がテンセントの黄金株を取得する計画の具体的な内容はまだ議論中だが、グループの主要な中国事業子会社の1社への出資が含まれると、FTが取材した3人の関係者は述べたという。関係者は、アリババ、バイトダンス、微博の株式を取得した北京拠点のファンドではなく、本拠地である深センの政府機関が株式を取得するよう働きかけていると述べている。

黄金株は2015年以降、国家が民間のニュースやコンテンツ企業に影響力を行使するための一般的な手段となっている。中国のメディア規制当局は2016年、特別管理株を取得する国家グループに対し、少なくとも1%の株式、取締役会の席、コンテンツを審査する権利を要求するよう助言していた。TikTokの親会社バイトダンス、ライブ動画配信のKuaishou、中国版Twitterの微博は黄金株をすでに差し出したと言われている。

中国のインターネット企業の2巨頭による黄金株の差し出しが、どのような結果を生むかは依然として不透明だ。このような慣行によって2社の活力を奪う結果になるのか、それとも黄金株取得によって規制当局によるさらなる締め付けのリスクが下がるのか、判断を下すことは難しい。

ゼロ・コロナやサプライチェーン危機、不動産市場の崩壊などに伴う経済停滞を凌ぐため、規制当局がテクノロジーセクターへの「懲罰」を緩めようとしている、という見方もある。ロイターのコラムニストRobyn Makは「数年続いたロックダウン(封鎖措置)で景気が悪化し、海外需要も冷え込んでいる今、当局としては巨大ネット企業に人員削減を止めてもらう必要がある」と書いている。

先週は、馬雲(ジャック・マー)が、傘下の金融会社アント・グループの経営権を手放すと発表したニュースもあり、これもまた懲罰の解消の一旦と捉える見方も出ている。発表後の9日、アリババ株は香港市場で7%上昇した。アントがマーの経営権放棄を発表する1週間ほど前に、同社の消費者金融部門は中国の銀行規制当局から105億元(約2,000億円)の資金調達の認可を得た。新たな投資家には、アントとアリババの本拠地である杭州市の地方政府が支援する企業も含まれている。

中国人民銀行の中国共産党書記である郭樹清は1月初旬、国営新華社通信とのインタビューで、プラットフォーム企業14社の金融事業を是正しようとするキャンペーンは「基本的に完了した」と述べていた。ただし、郭は、まだ解決されていない問題がいくつかあるとし、プラットフォーム企業を監督して規制遵守を促し、「発展をリードし、雇用を創出し、国際競争に大きな役割を果たす」よう育成していくとも述べている。

3つの点に留意しないといけない。まず、これは共産党高官の発言ではあるものの、習近平国家主席がどう考えているかについてはわからないことだ。次に、郭の発言は「プラットフォーム企業14社の金融事業」に限定されている、ということだ。それから、「基本的に」という言葉の範囲は余り明瞭ではないことだ。株式市場は敏感に反応しているが、これらのシグナルが確証のもてるものになるには、もう少し様子を見る必要があるだろう。