ベンチャーキャピタルが不動産投資家に変身?

ベンチャーキャピタル(VC)が第三者割当増資と引き換えに不動産の持分を受け取るという異例の取引が注目を集めている。コンピュータ産業のために生まれたVCが新たな変身を遂げようとしているのだろうか。


ウィーワーク共同創業者のアダム・ニューマンが新たに立ち上げた賃貸アパートの新興企業Flow(フロー)は、最近、ベンチャーキャピタル(VC)のアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)から3億5,000万ドル(約506億円)の出資を受けた。

ニューマンは、この資金と引き換えに、保有する膨大な不動産の一部を事実上譲り渡すことに同意したと、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が引用した事情通の関係者は述べている。

報道によると、フローに投資することで、a16zは、ニューマンがサンベルト(カリフォルニア州からノースカロライナ州に至る、北緯37度線以南の温暖な地域)に保有する4千戸のアパートメントの一部の持分を取得した。ニューマンの保有する不動産の価値はおよそ10億ドルと言われる。

この取引は、フローが失敗した場合にa16zにある種の保障を提供するだけでなく、ニューマンがウィーワークで行ったような、会社が窮地にある中で創業者自身が真っ先にエグジットするというズルを許さない仕組みになっている。

VCが投資の見返りに不動産の持ち分を受け取ることは、不動産を所有するVCが非常に少ないこともあり、非常に珍しいことである。

フローは通常の不動産会社との差異を認めるのが難しい。したがって、a16zは「サンベルトのアパートメントを買った」と言えなくもない。ソフトバンクグループの孫正義会長のような人物が再び現れ、かつて不動産サブリース企業を新進気鋭の数兆円企業のように見せかけたニューマンのセールストークが再び奏功すれば、a16zはこの取引のアップサイドを享受することになる。

この取引はVCの携帯に関する議論に新しい一石を投じることになった。VCは急成長する非上場企業に焦点をあわせたアセットクラスであり、年金基金や大学基金などがより大きなリターンを求めてリスキーなVCへの投資を進め、市場が急拡大してきた。

今では、VCの金主である年金基金、政府系ファンドらに加え、上場企業を扱っていたヘッジファンドや隣の畑のプライベート・エクイティもスタートアップ投資に乗り出しており、競争が激しい。

米国のVCの中には、ヘッジファンドの「越境」に対して、上場株を保有できるように自らをヘッジファンドとのハイブリッドに変化させる選択を採ったファンドもいた。a16zもその一つである。

また、伝統的なVCの一部は、より新興企業の初期段階に注力するようになっている。これは「他業種組の鼻が利かない分野」であることと、また全面的に波及してきたバリュエーションの高騰がまだ到達していない「最後の楽園」であるためだ。