老舗セコイアがVCファンドのモデルを放棄

世界で最も歴史があり、最も成功しているベンチャーキャピタル(VC)の1つであるセコイア・キャピタルが、上場企業の株式も保有し、10年というククリを外し、いつでも資金を出し入れできる、従来のVCとは完全に異なるファンド構造に転換した。

老舗セコイアがVCファンドのモデルを放棄

要点

世界で最も歴史があり、最も成功しているベンチャーキャピタル(VC)の1つであるセコイア・キャピタルが、上場企業の株式も保有し、10年という括りを外し、定期的に資金を出し入れできる、従来のVCとは完全に異なるファンド構造に転換した。

転換の説明

同社が発表した新しいファンド形態では、オープンエンド型(いつでも自由に換金することができる)のファンドSequoia Fundが設立され、セコイアの既存のファンドを「下位ファンド」(シード、ベンチャー、グロースなど)として配下に置くことになる。

セコイアの今後の投資はすべて、Sequoia Fundの「単一で永続的な構造」を介して行われる。Sequoia Fundは、投資家から資金を受け取り、米国や欧州の新興企業に投資するSequoiaのベンチャーファンドに資金を供給する。また、セコイアが保有するAirbnbなどの上場企業の株式も保有する。

Sequoia Fundはサブファンドの唯一のリミテッドパートナー(LP:出資金の範囲で責任を追う投資家)となる。下位ファンドのマネージャーは、それぞれのリターン評価に合わせて、親のSequoia Fundに資産を拠出する時期を決定する。

外部のLP、つまり金主は、Sequoia Fundに口座を持ち、毎年の償還権を持ち、その口座残高からサブファンドへの配分要求を行う。つまり、クローズドエンド型ファンド(資産を取り崩すことができないタイプのファンド)とオープンエンド型ファンドが継続的に相互に資金を行き交わせることになる。

下位ファンドでは、30%のキャリー(成功報酬)を含むSequoiaのプレミアム・フィー構造が維持される。ほとんどのVCファンドのキャリーは20%であり、30%を課せられるのは、セコイアがApple、Google、NVIDIA、オラクル、エレクトロニック・アーツ等無数の優良企業に投資し、類まれなリターンを叩き出した結果だ。

親のSequoia Fundでは、1%未満の管理費と、長期パフォーマンス・フィー(運用成績に基づいた報酬)が設定される。セコイアの社員は、Sequoia Fundの資本金の少なくとも5%を拠出する予定だ。

また、セコイアは投資顧問のライセンスを取得することを計画しており、これにより、暗号やセカンダリーなどの分野での投資を拡大できる可能性がある。General CatalystとAndreessen Horowitzは、近年、投資顧問のライセンスを取得したことで、プライベート資本市場以外の非伝統的な資産を支援する際の柔軟性が増した。これらの企業にとっては、市場動向の流動性に適応するための変化であり、株式公開が盛んな時期には公開企業を支援し、イニシャル・コイン・オファリング(ICO)のような新興企業の資本増強のトレンドを掴むことができた。

また、セコイアは投資家に対して、株式公開をする予定はないと述べている。

これらの変更は、TikTokのオーナーであるバイトダンスなど、インドや中国でのセコイアの投資にはすぐには適用されないが、これらのプラットフォームはいずれ組み込まれる可能性がある。特にセコイア・キャピタル・チャイナは、中国のモバイルインターネットの繁栄を一身に享受した極めて成績の良いファンドであり、その動向に注目が集まる。

なぜファンド構造を変更したか?

セコイアはこれらの変更はすべて、セコイアと創業者、セコイアとLPの間の利害をより一致させるためのものだと主張している。

セコイアは、10年で満期を迎え、償還を行う従来のVCファンド構造では株式を早く売りすぎてしまうと考えているようだ。

「Apple、Google、Cisco、Unity、Snowflake、Zoomなど、カテゴリーを代表する企業との経験から、これらの企業の設立には数年以上の時間がかかることがわかっている。近年、最も有望な企業の多くは、非公開期間を長くとり、規模を拡大し、戦略的な拠点を広げてから、市場でのリーダーとしてデビューすることを選んでいる。このような企業は、その優位性を何十年にもわたって発揮し、その価値の多くはIPOの後に発生する」とセコイアのパートナーRoelof Bothaは書いている。

「例えば、私たちが2011年初めに提携し、現在も私が取締役を務めるSquareは、2015年のIPO時の時価総額が29億ドルでした。その5年後、Squareは860億ドルに成長し、現在では1170億ドル以上の価値がある」。

外れ値のスタートアップがもたらす長期的なリターンは途方もないもので、会社の最初期から上場後も長く付き合った方がファンドの利益を最大化できる。

過去15年間の分配金に関するある社内分析によると、セコイアがあと12カ月だけ株を持ち続けていたら、80億ドル以上の追加リターンが得られたと、セコイアは米ニュースメディアAxiosに明らかにしている。

セコイアの代表的な投資案件のGoogleの株式を長期保有していたら、とんでもなきことが起きていた。セコイアは1999年にGoogleに約1,200万ドルを投資したが、上場後の2007年には1つのファンドの投資家に対して、Googleの株式の27%に相当する約650万株のGoogle株を分配した。分配された株式は当時およそ13億ドルの価値があった。もし、これをセコイアが保持し続けていたら、現在の時価総額1.96兆ドル(約222兆円)の27%に当たる5,292億ドル(約60兆円)となっていた。最初の約1,200万ドルの4万4,100倍だ。

税務上の影響

セコイアは現在、約450億ドルの米国および欧州の公開株を保有しており、その多くをSequoia Fund(Airbnbのような企業の株式を含む)に投入することで、LPとはすでに合意しているという。

セコイアは、これらの株式を譲渡した時点で繰越利益の税務上の取り扱いが明確になったと考えており、今後譲渡する場合は同時期の税率が適用されることになる。

Axiosによると、セコイアは約1年前に、一部のLPと相談しながらこのコンセプトを検討し始めた。今年の初めには、詳細を説明せずにトップレベルの構造変更を承認するようLPに求め、今週の月曜日に具体的な内容を発表した。LPの説明会は明日と木曜日に予定されている。

Axiosは3人のSequoiaの長年のLPに話を聞いたが、それぞれがこの動きを支持していたという。その理由の一つは、株式売却の責任をLPではなくセコイアに負わせることができるためだが、より大きな理由は、セコイアがこれまで一度も彼らを間違った方向に導いたことがないためだという。

懸念されるのはボラティリティの増大で、テクノロジー株の変動によってSequoia Fundの価値が大きく影響を受ける可能性がある。これは、伝統的なVCのポートフォリオマネジャーが四半期ごとに対処するものではなかった新しい課題だ。

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