消費者向け健康データ計測製品が開発ラッシュ

コンシューマ用

企業や研究者たちは、個人データを作成して数値化し、その情報を健康や幸福の増進に役立てることを目的とした、次世代のヘルスケアを夢見ている。その中には、家庭内に設置され、受動的に病気の初期兆候をスキャンする機械など、まだ初期段階の技術もある。また、限定的に使用されているものもある。また、スマート体温計や血糖値モニターのように、広く普及しているものもあるが、これらの支持者たちは、収集したデータに大いなる可能性を見出している。

Biostrap EVO: 睡眠計測器

モバイルアプリと連携する スリープトラッカー via Biostrap EVO

Biostrap EVOは、現在市販されている最も先進的なスリープトラッカーの一つ。このデバイスは、睡眠段階や夜間の心拍数や呼吸数などのバイオメトリクスをモニターし、毎晩、1~100の範囲でスリープスコアを生成する。さらにEVOは、スリープスコアに睡眠効率、夜間心拍変動、安静時心拍数などの指標を組み合わせることで、夜間の体の回復力を計算する。この回復力のスコアは、家庭や職場など、日々過ごす場所でのストレスに対処する能力を表すことを目的としている。

EVOには、トラッキングのニーズに応じて3つのセットが用意されているが、そのうちの一つの「バイオストラップ・アクティブセット」は睡眠だけでなく、血管の健康状態を示す動脈弾性の測定や、シューズクリップやアンクルストラップを使った歩数測定など、フィットネスに関連する機能が充実している。

Levels: 血糖値測定

Levelsの血糖値トラッカー. via Levels.

糖尿病でなくても、腕に装着した小型機器で血糖値を継続的に測定する「血糖値測定器」を装着している人がいる。血糖値の上昇や急上昇は、心臓病、脳卒中、糖尿病などの原因となるため、血糖値を把握することで、自分に合った食生活を送り、より健康的な生活を送ることができると、血糖値モニターの支持者たちは語っている。Levelsのソフトウェアでは、ユーザーがさまざまな食品を食べたり、運動したり、睡眠をとったりしたときの血糖値をアプリ上で確認することができる。LevelsのチーフメディカルオフィサーであるCasey Means博士は「最終的には、人々が複数のバイオセンサーを持つことで、細胞機能を最適化したり、病気を予測したりすることを目指している」と書いている。

Kinsa: スマート体温計

Kinsaのスマート体温計 via Kinsa.

体温計は、日本中の家庭に普及している。体調を崩したときに最初に相談する医療器具でもある。体温とそれに伴う症状を集約することで、将来的には集団レベルでの病気の定量化と診断が可能になると考えられる。今後、スマート体温計は、症状や体温、その他のデータに基づいて、患者が特定の種類のインフルエンザやコロナウイルス感染症に感染しているかどうかを判断するのに役立つかもしれない。サンフランシスコに拠点を置くスマート体温計企業Kinsaは簡易な診断が可能になれば、患者は医師の診察を受けずに済み、迅速に薬を手に入れることができると提案している。Kinsaは、2013年に発表したスマート体温計を、流行を検知して、いつ、どのように治療を受けるべきかを伝えるシステムにすることを目指している。これまでに米国内で約250万台の体温計を導入している。

MIT: 人の屋内での行動をトラックするセンサー

センサーによって得られたデータを機械学習で分類・分析。高齢者などの家庭で、深刻な病状の初期兆候を検出するのに役立ち、コロナウイルス感染症の患者のモニタリングにも利用された。 via Katabi 2018

マサチューセッツ工科大学の研究者たちは、家の壁に取り付けられるラップトップサイズのデバイスを作った。このデバイスは、生体に触れず健康指標を測定する方法として、居住者の周囲の電磁波を分析する。この装置は、機械学習を利用して、呼吸、心拍数、動き、歩行、ベッドに入っている時間、睡眠の長さと質を、壁越しでも追跡することができる。このデバイスは、医療機関や病院、医学部などで使用されている。この装置は、パーキンソン病、アルツハイマー病、免疫疾患などの臨床研究に使用されており、パンデミックの第一波の際には、隔離されたコロナウイルス感染症の患者の監視にも使用された。このプロジェクトを主導したMITのコンピュータサイエンスと人工知能研究所の教授であるディナ・カタビ博士は、このデバイスは高齢者などの家庭で、深刻な病状の初期兆候を検出するのに役立ち、ウェアラブルの代替品として使用できると言う。

NatureQuant: 自然の中で過ごす時間を計測

日常生活における屋内外の時間を記録するアプリNatureDose, via NatureQuant.

米国オレゴン州ベンドにあるNatureQuantは、自然の中で過ごす時間を定量化することを目指している。NatureQuantは今週、日常生活における屋内外の時間を記録するアプリ「NatureDose」を発表した。このアプリは、GPSや加速度計などの携帯電話のセンサーを使って、湖や並木道など、人が通る自然の種類をマッピングする。そのデータをNatureQuantのマッピングシステムと組み合わせることで、人が自然の要素に近接しているかどうかを判断する。

このアプリは、自然の中で過ごす時間が不安やうつにどじみた影響を与えるかを明らかにすることを目的に、大学で臨床試験が行われている。最終的には、医療従事者がこのデータを利用して自然の中で過ごす時間を処方し、ライフスタイルや季節、地域に応じた推奨を行うことも可能になると考えている。例えば、ビタミンDが不足しているユーザーに、紫外線を浴びるのに最適な時間を知らせることができる。

PÜL SmartCap: 水分補給量の計測

via PÜL SmartCap

水分補給は、脳機能、心臓の健康、消化などの身体機能に役立つことが知られている。将来的には、コネクテッドデバイスが、各個人にとって最適な水の量を評価してくれるようになるかもしれない。最近発売されたPÜL SmartCapは、携帯電話に接続された水筒のキャップで、消費者が目標を設定したり、付属のアプリで水分補給量を記録したりするのに役立つと期待されている。PÜLは「米国の人口の75%が慢性的な脱水状態にあることを発見した」と主張している。

ハーバード大学助教授Sima: 唾液中のバイオマーカー測定で疾患を予測

精密口腔医療を進めるためのシステムアプローチ。バイオマーカーの同定、患者の層別化、口腔疾患の分子メカニズムの理解のために、修正可能なリスク因子と修正不可能なリスク因子、免疫代謝シグネチャーを統合することを示す模式図。 出典: Sima et al. (2021).

口腔内の酸性度を追跡するなど、歯のデータを数値化することで、虫歯になる前に予測したり、口腔内の健康と他の健康問題との関連性を導き出すことが将来的にはできるようになると考えられている。ハーバード大学歯学部の口腔医学・感染症・免疫学の助教授であるCorneliu Sima博士らはナイトガードなどで唾液中の特定のバイオマーカーを測定すれば、糖尿病に関連する歯ぐきの炎症などの病気が明らかになるかもしれないと主張している。Simaらの論文では、口腔の情報は様々な疾患を予測するのに役立つ可能性がある。歯やインプラント表面の微生物バイオフィルムに対する慢性的な免疫-炎症反応は、心血管疾患、糖尿病、胃腸疾患などの全身状態と関連しているとしている。

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