食料品宅配の「速度競争」がエスカレート

要点

食料品宅配を15分で実現する「インスタントデリバリー」の登場は元々激しかった競争をさらに激化させた。大量のVCマネーが飛び交う血みどろの戦いを誰が生き残るか?


ドアダッシュは12月6日、ニューヨークのチェルシー地区で、食料品を10分から15分で顧客に届けることを約束するインスタントデリバリー(超高速配送)サービスを開始した。DashMartと呼ばれる近隣の倉庫から提供されるこの配達は、超高速食料品配達の競争が激化していることを示唆している。

サンフランシスコに本社を置く同社は、DashCorpsと呼ばれる同社の完全子会社を通じて、迅速な配達を行うために労働者をフルタイムで雇用すると言っている。このモデルは、GetirやJokrといったインスタントデリバリーのスタートアップ企業が採用しているものと似ているが、ドアダッシュが主に行っているレストランデリバリー事業では、配送にギグワーカー(個人請負労働者)を使っている点が異なる。ドアダッシュは、今後数カ月のうちに、この迅速なデリバリー事業をニューヨーク市内および全米のより多くの拠点に拡大する予定だと言っている。

最近、このようなインスタントデリバリーと呼ばれるジャンルが急成長している。これらの企業はグロサリーストア(小型の食料品店)で売っているような食料品を注文から「15分以内」で宅配するとうたっている。「Amazon on Steroids(ステロイドを使ったAmazon)」と形容されている速度を重視した戦略だ。

これらのスタートアップ企業は、食料品やコンビニエンスストアの商品を卸売価格で購入し販売している。彼らは、ダークストアと呼ばれる倉庫のネットワークを都市部で運営し、近くの家庭に15分以内に商品を届けられるようにしている。食品の輸送は、フリーランスの契約社員ではなく、通常は従業員が行う。このモデルは、パンデミックの際にロンドンやアムステルダムなどのヨーロッパの都市で流行し、今年に入ってからはニューヨークやその他の米国の都市でも拡大している。

彼らはより速い速度で価値提供することでUberやドアダッシュ、インスタカート等のプレイヤーの作った市場を乗っ取ろうとしている。彼らは投資家から大量の資金を調達し、顧客獲得のために急激な速度で資金を投下しようとしている。

高速食料品宅配「インスタントデリバリー」の急速な台頭
要点注文から15分で食料品を届ける高速食料品宅配「インスタントデリバリー」に世界中で投資マネーが注ぎ込まれている。強烈な資金燃焼という時間制限を抱えながら、最速で顧客の欲求を実現することで既存プレイヤーを押し出そうとしている。 今年7月、高速食料品宅配新興企業のJokrは南北アメリカとヨーロッパでの事業拡大を促進するために、GGV Capital、Baldton Capital、Tiger Global Management等から1億7,000万ドルの資金を調達した。 ドイツで設立されたJokrは今年始めにサービスを開始したばかりだ。 Jokrはヨーロッパでも事業を展開しているが、主に北米と、…

これらは新興プレイヤーの狙うパイを取りに行こうとする動きだ。一方、標的とされているインスタカートは防御網を築こうとする会社のうちの一社となった。最近、同社は早ければ来年2月に食料品や便利な商品を15分以内に配達する試験的なプログラムを開始する予定だと報じられた。

提案されているプログラムの一環として、インスタカートは、同社がすでに既存の顧客に提供している商品と同じ食料品店から商品を迅速に届けるための宅配業者を管理する会社に報酬を支払う。現在、ほとんどの顧客は注文した商品を2時間以内に受け取っているが、それを早めようとしている。

インスタカートは最近、複数の物流会社に超高速配送プログラムの提案書を提出するよう求めており、早ければ2月中に米国の都市で初期バージョンのサービスを開始する予定だという。インスタカートがこのプログラムを開始すれば、Jokr、Getir、Gorillasといった超高速食料品配送の新興企業との競争に突入することになる。もしインスタカートがこのプログラムを継続するなら、これまで懐疑的な見方をされてきた超高速配送モデルが、この分野の新興企業がベンチャー資金を使い果たしたとしても、今後も存続する可能性があることを示唆している。

米国のJokrやGetirなどの超高速配達スタートアップ企業は、コストコやクローガーなどの小売業者向けにアプリベースのマーケットプレイスを運営し、フリーランスの契約者を使って配達を行っているインスタカートとは異なるモデルを採用している。

インスタカートは、小売業者と直接競合しないことを公言しているため、在庫を持たずに、これらの新興企業の配送ペースに合わせることを目的としている。同社は5月に、米国の一部の都市で食料品を最短30分で受け取ることができる「優先配達」サービスを発表した。

しかし、インスタカートの代表者は最近、少なくとも1社のインスタント・デリバリー・スタートアップ、ニューヨークを拠点とするBuykに連絡を取り、Krogerや他の店舗と同様に、インスタカートアプリのサプライヤーになることを提案したと、関係者の一人は語っている。協議は継続中だと、米テクノロジーメディアThe Informationが引用した関係者は語っている。

サンフランシスコを拠点とするインスタカートは、自社アプリによる食料品の販売に加えて、コストコなどの小売店が独自に運営する食料品ショッピングアプリの配送サービスも提供している。インスタカートはいずれ、既存の小売業者向けの別のサービスとして、インスタントデリバリープログラムを提供する可能性がある。既存の小売業者の中には、インスタカートとの独占契約の終了が近づいているため、配送業者の多様化を検討しているところもある。

8月にCEOに就任したフェイスブックの元幹部、フィジ・シモが率いるインスタカートは「食料品小売業者向けサービスの強化に注力する」ため、先日、上場計画を来年以降に延期した。7月に締結したスタートアップ企業Fabricとの契約では、ダークストアのソフトウェアを開発し、そこから食料品店がより迅速に商品を顧客に届けることができるようにするというものだった。

インスタカートは、このプログラムが成功すれば、アメリカ国内はもちろん、海外にも展開したいと考えている。インスタカートは、サプライチェーン・コンサルタントのBrittain Laddをはじめとするアドバイザーと協力してプロジェクトを進めている。

競争環境は余りにも険しい。インスタカートはスーパーマーケット「ホールフーズ」を運営するAmazonや、Uberとの競争に直面している。UberのUber Eats部門とドアダッシュは今後数年間で食料品配達市場でのシェアを拡大すると予想されている。

JokrとBuykは、今後数カ月のうちに、ニューヨークからボストンなどの新しい都市に進出する予定だ。イスタンブールを拠点とするGetirは、投資家から76億ドルの評価を受けており、11月にシカゴで事業を開始し、来年末までに西海岸に進出する予定だ。

拡大のために積極的な支出を行っているこのような新興企業とは異なり、インスタカートは数四半期にわたってフリーキャッシュフローを生み出している。これは、小売業者がインスタカートアプリの顧客を獲得しようとする中で広告収入が増加したことが一因となっている。

しかし、同社は今後数ヶ月の間に現金を使い果たし、マーケティング費用を増やし、他の食料品関連の新興企業を買収する可能性がある。激しい競争の中で息をつく暇もないのだ。

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