Apple Carの産みの苦しみはいつまで続く?

Appleの自動車プロジェクトは秘密のベールで隠されているものの、その悪戦苦闘は数々の報道で確認されてきた。最新の報道は、自社製ソフトウェアで駆動する自律走行車が、山積する課題によって悩まされ続けることを明らかにした。

米テクノロジー誌The Informationは先週、Appleの自動車プロジェクトである「Project Titan(プロジェクト・タイタン)」に関する年代記を報じた。この報道には同プロジェクトに関する新しい情報が含まれていたため、その一部をここで紹介する。

ちなみアクシオンでも、2021年までの年代記を作成したことがあるので参考にしてもらいたい。

Apple Carの経緯まとめ、長く険しい道程
Appleはこれまでに、少なくとも6年と数え切れないほどの時間を車のプロジェクトに費やしてきた。そして、それを示すために無数の特許出願をしている。その間、Appleは車のコンセプトを再設計することをやめなかった。

The Informationによると、Apple社内にはProject Titanの白い目で見ている人たちがいるという。Appleのソフトウェアエンジニアリング担当上級バイスプレジデントであるクレイグ・フェデリギは、「Project Titan」に対して「特に懐疑的」であると言われている。挫折続きで方向転換を繰り返すせいで、Appleの他の部署から馬鹿にされているようだ。

2018年にテスラのVehicle ProgramsのVPを務め、Appleで以前Project Titanを率いていたダグ・フィールドを再雇用し、彼がボブ・マンスフィールドからProject Titanのマネジメントを引き継いだことによって、「安定の時代」を迎えた、と同誌は書いている。実際、一部の従業員はThe Informationに対し、フィールドの下でのリーダーシップは、同社にとって「車をリリースするための最高のチャンス」だったと語っている。しかし、フィールドは2021年9月、フォードに引き抜かれ、退社を発表した。

Apple自動車部門に暗雲漂う
Appleの自動車プロジェクトはこの数週間で3人の主要エンジニアを失った。それ以前から上級職の離職が続いており、秘密主義のベールに隠されたプロジェクトに懐疑の視線が注がれている。

現状では、ブルームバーグが以前報じたように、ケビン・リンチが自動車プロジェクトを引き継いだ。リンチはアドビ出身のベテランで、2013年にAppleに入社し、同社のスマートウォッチとヘルスケアのためのソフトウェアグループを管理。そこでwatchOSソフトウェアを開発し、また、iPhoneの「Health」アプリや研究調査用のアプリなど、健康関連のソフトウェア開発も主導した。しかし、彼のバックグラウンドには自動車は存在しないのだ。

従業員は現在、Appleが生産したい車の最終バージョンにより近い自律走行テスト車の投入時期について議論しており、早ければ来年にも路上を走る可能性があるという。提案されている車のコードネームはM101という。

昨年8月、Appleは自動運転車のプロトタイプ数台をモンタナ州を約40マイル走破させた。同州ボーズマンからスキーリゾートの町ビッグスカイまでのドライブを空撮ドローンで撮影し、Appleのマネージャーは、絵になる山々を背景に洗練された映画を制作し、ティム・クックCEOに、費用がかかり、長く続いている自律走行車プロジェクト「Titan」がいかに進歩しているのかを見せた。

しかし、The Informationが引用した2人の関係者によると、レクサスのSUVを改造したAppleのテスト車両は、シリコンバレー本社近くの道路を地図なしで進むのに苦労し、縁石にぶつかったり、交差点を横断中に車線を維持できなくなることがあったそうだ。

ジョギング事件

今年初め、Appleのテスト車両の1台が時速15マイル(約15キロ)で走行中、ジョギング中の人にぶつかりそうになったことがあった。この車のソフトウェアは、「まずジョギングをしている人を静止している物体として認識」した後、「静止している人」、そして最後に「動いている歩行者」に再分類した。

しかし、正しい認識をくだせたとしても、車は「わずかに進路を修正しただけ」だった。そして、セーフティドライバーが「最後の瞬間にブレーキを踏み」、車は歩行者の目前で停止した。もし人間が介入していなかったら、Appleのテストでは、車は「ほぼ間違いなくジョギングしている人にぶつかっていただろう」と指摘されている。この後、Appleは「ジョギング事件」を調査するために一時的にテストを中断した。同社は識別の問題を修正し、マップのデータベースに横断歩道を追加することで解決を図ったようだ。

The Informationが引用した関係者によると、同社は一度ならず「デモウェア」の問題に陥っており、テスト車両があらかじめ決められたルートでは良い性能を発揮するものの、未知の領域を進む際にはすぐに問題が発生し、常にバックアップドライバーに制御を委ねているとのことだ。

Appleの挫折は、Project Titanの方向性を一か八かで舵取りしてきた幹部が頻繁にいなくなったことで悪化している。最大の打撃は昨年のダグ・フィールドの退社で、最近では機械学習担当のイアン・グッドフェローが復職規定を理由に退社し、Google傘下のDeepMindに鞍替えした。

The Informationによると、現在のデザインは「乗客が互いに会話できるように内側に向いた4つの座席と、フォルクスワーゲン・ビートルの屋根に似た曲線の天井を備えている」そうだ。そして、同社のデザイナーは、それらのシートの後ろから上昇し、使用しないときは自動的に下降する大型ディスプレイについて議論している。AppleがWWDCで発表した次世代バージョンのCarPlayは、それらのスクリーンで見られるもののプレビューであると思われる。

The Informationのレポート全文は一読の価値があり、Project Titan内部の混乱について、これまでで最も掘り下げた考察を提供している。

Inside Apple’s Eight-Year Struggle to Build a Self-Driving Car
Last August, Apple sent several of its prototype self-driving cars on a roughly 40-mile trek throughMontana. Aerial drones filmed the drive, from Bozeman to the ski resort town of Big Sky, so that Apple managers could produce a polished film, with picturesque mountains in the background, to show ...