テスラの弱気予想、今年のEV業界の軟調をほのめかす

テスラは過去最高益を上げたものの、今年の生産・納車台数については弱気な見通しを示した。これは、急速なEV市場の成長が一時的に軟化するシグナルだろうか。


テスラは25日に2022年第4四半期の決算を発表した。利益は前年同期比59%増の約37億ドルで過去最高だった。テスラの年間利益は、2021年の55億ドルから2022年には126億ドルに増加している。

同社は販売台数の成長は鈍化すると予想した。テスラは2023年の見通しの中で生産目標なのか納車目標なのかを明示せずに180万台で計画すると述べた。同社はこれまで、車両台数の長期的なCAGR(年複利成長率)を50%にすることを目標としてきた。仮に2023年に180万台の生産を実現すれば、2022年比で約37%増であるが、2020年の50万台強の生産台数を起点にすると、CAGRは50%を超えることになる。わずか5年前、テスラは約25万台しか生産していなかったことを考慮すれば、この成長は驚異的であることには変わりない。

投資家と業界の関心を勝っているのは、テスラが年末から積極的な値下げをしていることだ。「このような価格変動は、一般消費者にとって本当に大きな違い」とイーロン・マスクは決算説明会で語っている。第4四半期に生産車両が納車車両を3万4,000台も上回ったことから、値下げは需要の減退と関係があるとの見方もある。

楽観派は、競合EVが増える中、テスラが勝算の高い価格競争を始めた、とみている。モデルYのいくつかの構成では希望小売価格が13,000ドルも下がった。最も売れ筋のEVであるモデル3とモデルYの特定の構成が、EV税額控除のおかげで、最大7,500ドルのさらなる割引の対象となる可能性がある。最も完成度の高いEVラインナップの値引きは確かに他社へのプレッシャーになるだろう。

テスラには設備投資の計画が並んでいる。テスラはネバダ州に36億ドルを投資し、年間200万台の自動車とセミトラック用の電池を製造するための施設を拡張する計画を発表した。ブルームバーグはここ数週間、メキシコとインドネシアの工場計画を確定させたと報じている。

仮にテスラの成長神話が、この四半期を境に崩壊するとしたら、EV業界が「テスラ一強の物語」を最終的に終えたとも言えるだろう。

テスラのライバルは、間違いなくBYDである。Bloomberg NEF(BNEF)のアナリストチームは、2023年にEV販売台数で、BYDがテスラを上回ると予想した。プラグインハイブリッド(PHV)を含めると、BYDはすでに2022年にテスラを追い抜き、BEVの販売台数は2021年の32万1,000台から昨年は約91万1,000台に急増した。

もちろん、高価で収益性の高いテスラと、概ね安価で収益性の低いBYDを台数で比較するのはフェアではないかもしれないが。