EV業界はナトリウムイオン電池を無視し難くなってきた

中国の大手メーカーがナトリウムイオン電池を搭載したEVを開発している。この電池は提供できる航続距離は短いが、希少材料に依存せず安い。低価格帯から市場を侵食する可能性は否定できない。


中国の大手自動車メーカー、江淮汽車(JAC)は、23日に中国江蘇省で開かれた業界会議で中科海钠科技(HiNa Battery Technologies)のナトリウムイオン電池を搭載したデモカーを公開した。一回の充電での航続距離は約250キロメートルという。

BYDは1月末、ナトリウムイオン電池を採用した最初の量産型EV「海鴎」を2023年第2四半期に発売する予定と、漏洩した試作車の画像とともに報じられた。ナトリウムイオン電池を搭載した海鴎の航続距離は300キロメートル。リチウムイオン電池版は400キロメートルだ。

BYDは、ナトリウムイオン電池は、リチウム、コバルト、銅、グラファイトを使用せず、原材料の使用量が大幅に少ないため、生産コストが安く、リチウムイオン電池のようにリサイクルも可能だ。

寧徳時代新能源科技(CATL)の研究センター副所長のQisen Huangは昨年11月、ナトリウムイオン電池関連のフォーラムで、この電池は一般的に航続距離が400キロメートルまでのモデルのニーズを満たすことができると発言していた。

CATLは、ナトリウムイオンとリチウムイオンの混合を実現し、互いに補完し合うことで電池システムのエネルギー密度を高めることを可能にしたとHuangは述べたとされる。このアプローチにより、ナトリウムイオン電池は航続距離500kmまでのEVモデルに対応できるようになったという。

CATLの破壊的なナトリウムイオン電池は「本物」か?
蓄電などエネルギー密度が高くなくてもよい領域で潜在性

CATLは2021年7月に第1世代のナトリウムイオン電池を発表した。電池単体のエネルギー密度が160Wh/kgに達し、世界最高水準に達したと述べ、2023年に基礎サプライ・チェーンを形成する計画であることを明らかにした。

中国のシンクタンク、EVタンクはこのほど発表したリポートで「2030年の国内出荷量が347ギガワット時(GWh)になる」と予測。初期は二輪車などへの搭載が進み、後に自動車や蓄電設備への搭載が活発化するとみている。

ただし、ナトリウムイオン電池の実用化は、まだ始まったばかりだ。中国国内の年産能力はHiNaの2GWhにとどまる。ただ、各電池メーカーは実用化に向けた研究を急ピッチで進めており、EVタンクは23年末時点の年産能力が13.5GWhになると展望している。

ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池と内部構成や動作原理が同一であり、低コストで材料が豊富であることから、最も有望な次世代エネルギー貯蔵技術の一つとして期待されている。 また、正極材料にコバルトやニッケルを使わないことや、ナトリウムはアルミニウムと合金化しない特性を活かし、負極側にアルミニウム電流コレクタを使用すれば、さらに低コスト化することが可能だ。

参考文献

  1. Yang, Chao, Sen Xin, Liqiang Mai and Ya You. “Materials Design for High‐Safety Sodium‐Ion Battery.” Advanced Energy Materials 11 (2020): n. pag.