NFTは死んだ、でもガラパゴス日本で生き残る

大半のNFTの価格はゴミ同然になった。ボット以外にこの壊れたおもちゃを売り買いしている存在はいないだろう。しかし、この21世紀を代表するまやかしは、日本で生き延びるかもしれない。ガラパゴスは罪である。


コナミデジタルエンタテインメントは、9月下旬の「東京ゲームショウ2023(TGS2023)」において、ブロックチェーン技術を活用したサービスを提供するためのNFTマーケットプレイス「リセラ(Resella)」を発表した。このマーケットプレイスでは、ゲーム内のアイテムやキャラクターとしてのNFTを簡単に売買することができ、取引手数料やWeb3ウォレットの準備といった煩雑な手続きが独自システムにより簡素化されている、とコナミは説明した。

この発表はTGSのゲーム業界関係者公開日に行われたものだ。その後の一般公開日に私はTGSを訪れたが、ブロックチェーンとNFTに言及するゲームパブリッシャー/スタジオは極めて少数派だった(*1)。総来場者数24万3238人のほとんどの関心は、通常のゲームに注がれたようだ。これは、ブロックチェーンをめぐるゲーム業界の状況を反映している。つまり、ビジネス側はブロックチェーンの利用に興味があるが、ユーザー側はまったく興味がないのだ。

グローバル市場では昨年、ブロックチェーンの採用について一定の決着がついている。このブログに詳しく書いた。そしていま、ゲームにブロックチェーンを使おうとしているのは、ベンチャーキャピタル資金の絞り粕か、ガラパゴスの中で情報劣位に陥る日本企業だけのように思われる。

日本よ、目を覚ませ、Web3はクソだ!
Web3の誇大広告は日本の政界にまで浸透し、大手メディアでは誤った説明が繰り返されている。バブル崩壊以降の30年間を経済停滞の中で過ごした日本にとって、Web3への投資は船が再び誤った方向に進んだことのシグナルとなってしまうだろう。

しかし、オンラインの中では、ブロックチェーンは主役の一人のような顔をしている。PR費用が支出されているせいか、TGSに関するオンラインニュースを読むと、コナミやブロックチェーンゲームスタジオdouble jump.tokyoらの催しがピックアップされている。ブロックチェーンが、TGSで重要な役割を果たしたように感じる非ゲームプレイヤーのビジネスパーソンもいるだろう。

NFTはそのデジタルデータの固有性や、その言葉の定義すらあやふやな「唯一性」を保証しないまやかしだ。このまやかしは、ユーザーの無知をつく形で、集金装置の役割を担うことが期待されている。

NFTはすでに死んでいる。NFT ScanとCoinMarketCapが提供したデータに基づくdappGamblのレポートによると、研究者が調査した73,257のNFTコレクションのうち、69,795、つまり95%強の価格がゼロだった。

95% of NFTs are Dead - Trends, Predictions & Statistics 2023
Are NFTs (Non Fungible Tokens) dead? Maybe so. We analysed over 60.000 NFTs to find out which ones are still valuable.

同報告書によると、2021年8月のピーク時には28億ドル近い取引高を記録し、かつては暗号資産界のスターだったNFTは、2023年7月までに、週間取引額はピーク時のわずか3%に過ぎない約8,000万ドルまで落ち込み、厳しい弱気相場であることを示している。7万3,000以上のNFTコレクションを包括的に分析した結果、約95%(69,795)の時価総額がゼロETH(暗号通貨の単位)であり、推定2,300万人の「犠牲者」にとって投資の価値がないことが判明した。需要が薄く、所有者のいるNFTは20%に過ぎず、NFTのうち6,000ドル以上の値札を付けているのは上位1%未満である。

現在の約8,000万ドルの取引額も「オーガニックな」ものかは確実ではない。暗号資産業界では、同一人物または2人の共謀者の間で自作自演の取引を行う市場操作であるウォッシュ・トレーディングの存在が指摘されてきた。多くの暗号資産取引所やNFTマーケットプレイスが、架空のでっち上げ取引のかどで規制当局や司法の罰則を受けている。ネオマ・ビジネス・スクール助教授のArash Alooshとジョージ・メイソン大学助教授のJiasun Liの論文は、流出したマウント・ゴックスの内部データを用いて、ウォッシュ・トレーディングの証拠を検出した。先物取引では20世紀初頭に禁じられた違法行為が、暗号資産界隈では当たり前のように横行している。

NFT取引高急落と虚偽取引のあやしい関係
NFTの取引高はブーム前の水準まで戻った。暗号資産界隈では自作自演の取引で価格を高騰させるテクニックが使われていると言われる。取引高の急減とこの虚偽取引にはどのような関係があるだろうか?

NFTの死からは、一時は時代の寵児のように扱われたブランドも自由ではない。

キャンベラ大学 政治経済社会学部 上級講師John Hawkinsの分析によると、ばかげたサルの絵で有名な「Bored Ape Yacht Club」の価格はピークから約90%下落し、とるに足らないドット絵の「CryptoPunks」の下落幅は80%でもちこたえた。他の有名な例としては、当時のTwitter CEOジャック・ドーシーによる「最初のツイート」のNFTがある。暗号資産起業家のシナ・エスタビは2021年3月にこのNFTを290万ドルで購入した。彼が1年後に売却しようとしたときの最高入札額は6,800ドルだった。7月時点で価格は4ドルまで下がったことが確認された(このNFTは「最初のツイート」との論理的関係性を指摘することができない純粋なまやかしだ)。

ヤフコメもNFTを非難

最後に、悪名高いヤフーコメントのなかに的を射た、ダイヤモンドのようなコメントがあったので引用しよう(10月2日19時時点で消えてしまった[*2])。「NFTなどブロックチェーンにURLをリンク先の所有者の許可も取らずに書き込めると言うだけの代物で、そもそも何の価値もない」と無名の投稿者は書いている。「リンク先のデジタルデータが唯一無二になるんだ美術品のような一点物になるんだと言い張るウソの宣伝で、単なるブロックチェーン上のブックマークを高値で取引させて来た詐欺商売もそろそろ終焉を迎えそうですね」

ヤフコメは社会的に有意義である。

脚注

*1:ブロックチェーンベンダーOasysとブロックチェーンゲームスタジオのdouble jump.tokyoが比較的大きなブースを出展し、NFT輪投げという興味深いゲームを展開した。この分野に残る唯一の大手企業とも言えるフランスのUbisoftのブースでは開発中のNFTゲーム『Champions Tactics: Grimoria Chronicles』を紹介した。

*2:次のURLに存在した。魚拓を取っておくべきだった。https://news.yahoo.co.jp/articles/c50fb04080463abe8247396380c98cdfdbd15ff2/comments