暗号資産の暴落でロレックスとパテックが市場に溢れる

暗号資産の暴落は、中古市場で最も人気のある高級腕時計の供給不足を緩和し、パテックフィリップやロレックスの価格を押し下げている。

暗号資産の暴落でロレックスとパテックが市場に溢れる
Photo by Hugo Delauney 

暗号資産の暴落は、中古市場で最も人気のある高級腕時計の供給不足を緩和し、パテックフィリップやロレックスの価格を押し下げている。

米ビジネスメディア、ビジネス・インサイダーによると、人気の高いロレックス コスモグラフ デイトナ 116500LNは、3月中旬の約48,500ドルをピークに、16%以上下落し、現在は約39,500ドルと、数カ月にわたる下落を続けている。

オンライン時計取引プラットフォームChrono24はブルームバーグに対して、最近の暗号資産のバリュエーションの急減は「ロレックスやパテックフィリップといったブランドの高級時計の価格設定に直接影響を与えている」と語っている。

暗号通貨の評価額の急上昇は、新しいクラスの高級品購入者を生み出し、特にロレックス、オーデマ・ピゲ、パテックなどのブランドのモデルの前例のない価格上昇につながった。多くの暗号資産の価格が落ち込んだ今、これらの消費者は真逆の行動をとっている。

ブルームバーグのコラムニスト、アンドレア・フェルステッドが引用したジェフリースの分析によると、暗号資産と株の上昇によって膨らんだバブルが中古時計市場に出現し、暗号資産の富が米国での高級品販売の成長の少なくとも4分の1を占めたという。

もちろん、暗号資産だけがその要因とはいい難い。通常の株式投資家もまた、中古時計の投げ売りに寄与していると推定される。ゴールドマン・サックスの分析によると、一般に株式と債券のバランスをとる最も保守的な投資戦略として知られる古典的な60-40ポートフォリオは、今年上半期に17%の損失を出し、1932年以来最大の下げ幅を記録したそうだ。

また、興味深いことに、70年代から80年代にかけての地政学的な不安、市場の変動、高インフレが、代替投資としてのスイス高級時計の隆盛に大きく貢献したという。市場が高インフレと不況のセット(スタグフレーション)に直面しつつある現在、腕時計は重要な資金避難先の一つになる可能性があるだろう。少なくとも暗号資産よりも安全性は高い。

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米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

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米国人は自動車が大好きだ。バッテリーで走らない限りは。ピュー・リサーチ・センターが7月に発表した世論調査によると、電気自動車(EV)の購入を検討する米国人は5分の2以下だった。充電網が絶えず拡大し、選べるEVの車種がますます増えているにもかかわらず、このシェアは前年をわずかに下回っている。 この言葉は、相対的な無策に裏打ちされている。2023年第3四半期には、バッテリー電気自動車(BEV)は全自動車販売台数の8%を占めていた。今年これまでに米国で販売されたEV(ハイブリッド車を除く)は100万台に満たず、自動車大国でない欧州の半分強である(図表参照)。中国のドライバーはその4倍近くを購入している。

By エコノミスト(英国)
労働者の黄金時代:雇用はどう変化しているか[英エコノミスト]

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2010年代半ばは労働者にとって最悪の時代だったという点では、ほぼ誰もが同意している。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの人類学者であるデイヴィッド・グレーバーは、「ブルシット・ジョブ(どうでもいい仕事)」という言葉を作り、無目的な仕事が蔓延していると主張した。2007年から2009年にかけての世界金融危機からの回復には時間がかかり、豊かな国々で構成されるOECDクラブでは、労働人口の約7%が完全に仕事を失っていた。賃金の伸びは弱く、所得格差はとどまるところを知らない。 状況はどう変わったか。富裕国の世界では今、労働者は黄金時代を迎えている。社会が高齢化するにつれて、労働はより希少になり、より良い報酬が得られるようになっている。政府は大きな支出を行い、経済を活性化させ、賃上げ要求を後押ししている。一方、人工知能(AI)は労働者、特に熟練度の低い労働者の生産性を向上させており、これも賃金上昇につながる可能性がある。例えば、労働力が不足しているところでは、先端技術の利用は賃金を上昇させる可能性が高い。その結果、労働市場の仕組みが一変する。 その理由を理解するために、暗

By エコノミスト(英国)
中国は地球を救うのか、それとも破壊するのか?[英エコノミスト]

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脳腫瘍で余命いくばくもないトゥー・チャンワンは、最後の言葉を残した。その中国の気象学者は、気候が温暖化していることに気づいていた。1961年、彼は共産党の機関紙『人民日報』で、人類の生命を維持するための条件が変化する可能性があると警告した。 しかし彼は、温暖化は太陽活動のサイクルの一部であり、いつかは逆転するだろうと考えていた。トゥーは、化石燃料の燃焼が大気中に炭素を排出し、気候変動を引き起こしているとは考えなかった。彼の論文の数ページ前の『人民日報』のその号には、ニヤリと笑う炭鉱労働者の写真が掲載されていた。中国は欧米に経済的に追いつくため、工業化を急いでいた。 今日、中国は工業大国であり、世界の製造業の4分の1以上を擁する。しかし、その進歩の代償として排出量が増加している。過去30年間、中国はどの国よりも多くの二酸化炭素を大気中に排出してきた(図表1参照)。調査会社のロディウム・グループによれば、中国は毎年世界の温室効果ガスの4分の1以上を排出している。これは、2位の米国の約2倍である(ただし、一人当たりで見ると米国の方がまだひどい)。

By エコノミスト(英国)