ガザ市街戦がイラク戦争のそれより凄惨になる理由[英エコノミスト]
![ガザ市街戦がイラク戦争のそれより凄惨になる理由[英エコノミスト]](/content/images/size/w1200/2023/11/403689428.jpg)
ガザでの戦争は市民に残酷な犠牲を強いている。ハマスが運営する保健省は、8,000人以上が死亡したと発表した。そのうちの3,000人以上という子どもの数は、過去3年間のすべての戦争における子どもの年間死者数を上回っている。英エコノミスト誌は衛星画像から、ガザの住宅ストックの10分の1以上が破壊され、28万人以上が帰る家を失ったと推定している。多くの点で、これは異常な破壊力を持つ市街戦の常態に合致している。しかし、イスラエルによるガザでの戦争はまた独特でもある。
既成市街地での戦争は常に血なまぐさい。2004年の米国のファルージャへの最初の攻撃では、600人もの民間人、つまり人口の0.2%が殺された。その年の後半に行われた2度目の攻撃では、さらに約800人が死亡し、街の建物の大半が損壊した。バグダッド郊外のサドル・シティの戦闘では、2008年3月から4月にかけて、人口約200万人のうち1,000人近くが死亡したとみられている。
近年最大の市街戦は、イラク軍とクルド人地上部隊を含むアメリカ主導の連合軍による、イスラム国(IS)グループに掌握されたモスルへの攻撃だった。民間人の被害を追跡している非営利団体Airwarsによれば、2016年から17年にかけて、少なくとも9,000人の民間人がモスルで殺害された。これは当時の人口の0.6%に相当する。被害を受けた建物のうち、80%以上が住宅だった。
これらの事例から、ガザでの戦争は破壊的ではあるが、歴史的な基準からすれば異常なものではないことがわかるかもしれない。しかし、重要な違いもある。まず最大の違いは、民間人の地位である。モスルでは、ガザは民間人の逃亡を阻もうとし、発砲したり、市外への通路を採掘したりした。それにもかかわらず、多くの人々が去った。2016年10月から2017年6月までの間に90万人近くが脱出した。ロシアでさえ、2022年2月から5月にかけてウクライナのマリウポリを包囲していた際、人道的な一時停止を交渉し、一部の市民が脱出を許可された。イスラエルはこれまで、欧州連合(EU)などによるそうした一時停止の要請を拒否してきた。