世界4位資産家のインド成金政商を高勝率の米空売り屋が「史上最大の詐欺」と狙い撃ち

米空売りファンドが世界4位の富豪ゴータム・アダニの財閥について徹底的な調査を行い「史上最大の詐欺」を働いていると主張した。モディ政権との縁故で知られる成金政商と、数々の嘘を暴いてきた高勝率の空売り屋という絶好のマッチメイク。

世界4位資産家のインド成金政商を高勝率の米空売り屋が「史上最大の詐欺」と狙い撃ち
ゴータム・アダニ Photographer: Edwin Koo/Bloomberg

米空売りファンドが世界4位の富豪ゴータム・アダニの財閥について徹底的な調査を行い「史上最大の詐欺」を働いていると主張した。モディ政権との縁故で知られる成金政商と、数々の嘘を暴いてきた高勝率の空売り屋という絶好のマッチメイク。


米空売りファンドのヒンデンブルグ・リサーチは25日、アダニ・グループが「企業史上最大の詐欺」を働いたとする長文の報告書を発表した。

アダニ・グループのボス、ゴータム・アダニは、世界3位の富豪として知られている。ゴータム・アダニは、約1,200億ドルの純資産を築いており、過去3年間で1,000億ドル以上を、主にグループの主要上場企業7社の株価上昇によって増加させ、その間の平均上昇率は819%に達している。

同社はアダニ・グループの元幹部を含む数十人の人物に話を聞き、数千の文書を確認し、ほぼ半ダースの国々で実地調査を実施したという。ヒンデンブルグは、米国で取引されている債券やインドで取引されていないデリバティブ商品を通じて、アダニ・グループの傘下企業を空売りしていると明らかにした。

ヒンデンブルグが主張する株価操作スキーム

  • アダニ・グループは数十年にわたって、迷路のようなペーパーカンパニーを利用した「大胆な株価操作と会計詐欺の計画」を行った。
  • 株価操作に関与した疑いのある、ゴータム・アダ二の兄、ヴィノッド・アダニまたはその側近が支配する38のモーリシャスオフショア企業を特定。キプロス、UAE、シンガポール、いくつかのカリブ海諸島でも、ヴィノッド・アダニが密かに支配している事業体を確認。
  • ヴィノッド・アダニのペーパーカンパニーは、財務の健全性と支払能力を維持するために、(1)ストック・パーキング[*1]と株式操作(2)アダニの非公開会社を通じて上場会社のバランスシート上の資金を洗浄する、などの機能を果たしているようだ。
  • アダニ・グループに属するオフショアの箱会社やファンドが、アダ二グループの多くの構成企業の株式の最大の保有者。多くは、名義上の取締役を介して実質的所有権を隠蔽し、ほぼAdani上場企業の株式だけで構成されるポートフォリオを保有する。
  • アダニ・グループの株式の約30億ドル相当を保有するオフショアファンド、Elaraの元トレーダーは「アダニが株式を支配していることは明らかだ」とヒンデンブルグに語った。流出した電子メールによると、ElaraのCEOは、インドの悪名高い市場操作者であるケタン・パレックと密接に株式操作の取引に取り組んだ逃亡会計士、ダルメッシュ・ドシと取引していたことが判明。
  • これらの株価操作の疑いによってアダニ・グループの上場企業7社は、その財務内容から見て、非常に過大評価されている。

このオフショアファンドの活動は以前から指摘されてきた。2021年7月、ブルームバーグが報じたところによると、Elara、Cresta、Albula、APMSの4社は、運用額69億ドルのうち約90%をアダニ・グループに投じる前に、創業者がインドから逃亡して以来マネーロンダリングの疑惑を持たれている2社、破産した1社、エチオピア政府と対立して清算された4社の株式を大幅に保有していた。元々他の「危ないインド企業」の株価操縦に使われていたともみられるファンドが、アダニに乗り換えた経緯が指摘されている。

高すぎる負債比率

アダニ・グループは、上記の操作疑惑によって株価が高騰した株式を担保にすることで、かなりの負債を負っており、グループ全体の財務基盤が不安定だ、とヒンデンブルグは指摘する。主要な上場企業7社のうち5社が手元流動性が危険水域にあるという。

過剰債務を主張したのは、ヒンデンブルグが初めてではない。フィッチ・グループの傘下であるCreditSightsは昨年8月、アダニの港湾・電力複合企業体は「過剰レバレッジ」と指摘し、「最悪のシナリオでは」債務の罠に陥り、デフォルトに陥る可能性もあると主張していた。

世界4位の印大富豪アダニの財閥は「大幅な過剰レバレッジ」と調査会社が警告
調査会社はインドの大富豪ゴータム・アダニの巨大企業複合企業体は「レバレッジが非常に高く、既存事業だけでなく新規事業にも積極的に投資しており、主に負債で資金調達している」と指摘した。

アダ二・グループのファミリービジネス

報告書はアダニ・グループがアダニ一族によって支配されており、一族が関与した様々なスキームについて詳述している。

  • アダニ・グループは汚職、マネーロンダリング、納税者資金の横領の疑いをめぐって捜査されてきた
  • 疑惑の弟。ゴータム・アダニの弟であるラジェッシュ・アダニは、2004年から2005年頃にダイヤモンド取引の輸出入スキームで中心的な役割を果たしたとしてインド歳入情報局(DRI)に告発された。この計画では、オフショアの箱会社を利用して、人為的な売上高を生み出していたとされている。ラジェッシュは、文書偽造と脱税の別々の疑惑で少なくとも2回逮捕されている。その後、彼はアダニ・グループのマネージング・ディレクターに昇進した。
  • 疑惑の義兄。ゴータム・アダニの義兄であるサミール・ヴォラは、同じダイヤモンド取引詐欺の首謀者として、また規制当局に虚偽の供述を繰り返したとして、DRIに告発された。彼はその後、重要なアダニ・オーストラリア部門のエグゼクティブディレクターに昇進した。
  • 疑惑の兄。ゴータム・アダニの兄であるヴィノッド・アダニは、詐欺を促進するために使用されるオフショア法人のネットワークの管理に関与した疑いで、アダニに対する政府の調査の中心で定期的に名前が上がっている。

ヒンデンブルグは、不採算の特別目的買収会社(SPAC)合併上場企業や暗号資産企業を狙うことで有名になった。これらの「時代のあだ花」の次に、急成長するインド経済を象徴する巨大財閥が標的となったことは、驚きにあふれている。

ヒンデンブルグは優秀な空売り屋である。ブルームバーグ・ニュースの算定によると、ヒンデンブルグは、2020年以降、約30社をターゲットにし、ターゲット企業の株価は平均して翌日には約15%下落し、6カ月後には26%下落したという。

アダニ・グループは「選択的な誤報と陳腐で根拠のない、信用できない主張の悪意のある組み合わせ」と反論している。

たとえ、ヒンデンブルグが正しかったとしても、インド国内では「魔法」を使えるアダニ・グループが沈むかはまだわからない。ゴータム・アダニはインドの縁故資本主義の権化のような人物である。

アダニは40年かけて、エネルギー、農業、不動産、防衛などにまたがるビジネス帝国を築き上げた一種の「政商」だ。ナレンドラ・モディ首相と親密な関係にあり、彼のコングロマリットが矢継ぎ早に事業拡大を続けるのは、インド政府の意向と密接に結びついていると考えられている。

1月26日17時34分現在、アダニ・グループの上場企業の株は浴びせ売りを受け、グループの上場株が120億ドル下落した。

*1:ストック・パーキング(元の所有者が短期間で株式を買い戻すことを前提に、別の当事者に株式を売却する違法な行為)

Read more

アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表  往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表 往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビは4月10日、日本語のバリアブルフォント「百千鳥」を発表した。レトロ調の手書き風フォントで、太さ(ウェイト)の軸に加えて、字幅(ワイズ)の軸を組み込んだ初の日本語バリアブルフォント。近年のレトロブームを汲み、デザイン現場の様々な要望に応えることが期待されている。

By 吉田拓史
新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

世界が繁栄するためには、船が港に到着しなければならない。マラッカ海峡やパナマ運河のような狭い航路を通過するとき、船舶は最も脆弱になる。そのため、スエズ運河への唯一の南側航路である紅海で最近急増している船舶への攻撃は、世界貿易にとって重大な脅威となっている。イランに支援されたイエメンの過激派フーシ派は、表向きはパレスチナ人を支援するために、35カ国以上につながる船舶に向けて100機以上の無人機やミサイルを発射した。彼らのキャンペーンは、黒海から南シナ海まですでに危険にさらされている航行の自由の原則に対する冒涜である。アメリカとその同盟国は、中東での紛争をエスカレートさせることなく、この問題にしっかりと対処しなければならない。 世界のコンテナ輸送量の20%、海上貿易の10%、海上ガスと石油の8~10%が紅海とスエズルートを通過している。数週間の騒乱の後、世界の5大コンテナ船会社のうち4社が紅海とスエズ航路の航海を停止し、BPは石油の出荷を一時停止した。十分な供給があるため、エネルギー価格への影響は軽微である。しかし、コンテナ会社の株価は、投資家が輸送能力の縮小を予想している

By エコノミスト(英国)
新型ジェットエンジンが超音速飛行を復活させる可能性[英エコノミスト]

新型ジェットエンジンが超音速飛行を復活させる可能性[英エコノミスト]

1960年代以来、世界中のエンジニアが回転デトネーションエンジン(RDE)と呼ばれる新しいタイプのジェット機を研究してきたが、実験段階を超えることはなかった。世界最大のジェットエンジン製造会社のひとつであるジー・エアロスペースは最近、実用版を開発中であると発表した。今年初め、米国の国防高等研究計画局は、同じく大手航空宇宙グループであるRTX傘下のレイセオンに対し、ガンビットと呼ばれるRDEを開発するために2900万ドルの契約を結んだ。 両エンジンはミサイルの推進に使用され、ロケットや既存のジェットエンジンなど、現在の推進システムの航続距離や速度の限界を克服する。しかし、もし両社が実用化に成功すれば、超音速飛行を復活させる可能性も含め、RDEは航空分野でより幅広い役割を果たすことになるかもしれない。 中央フロリダ大学の先端航空宇宙エンジンの専門家であるカリーム・アーメッドは、RDEとは「火を制御された爆発に置き換える」ものだと説明する。専門用語で言えば、ジェットエンジンは酸素と燃料の燃焼に依存しており、これは科学者が消炎と呼ぶ亜音速の反応だからだ。それに比べてデトネーシ

By エコノミスト(英国)