投資銀行化するみずほ:アームIPOで米市場にくさびもソフトバンク一本足の懸念

みずほが投資銀行化の野心を実現しつつある。アームのIPOでは主幹事の座に米大手と肩を並べている。ただ、ソフトバンクへの深い依存によって得られた地位で、両刃の剣かもしれない。

投資銀行化するみずほ:アームIPOで米市場にくさびもソフトバンク一本足の懸念
2023年6月9日(金)、中国・上海で開催された陸家嘴フォーラムでスピーチするみずほフィナンシャルグループの木原正博社長兼CEO。フォーラムは本日まで開催されている。カメラマン Qilai Shen/Bloomberg

みずほが投資銀行化の野心を実現しつつある。アームのIPOでは主幹事の座に米大手と肩を並べている。ただ、ソフトバンクへの深い依存によって得られた地位で、両刃の剣かもしれない。


ソフトバンクグループ(SBG)による英半導体設計企業アームの新規株式上場(IPO)で主要な役割を果たす投資銀行4行にみずほフィナンシャルグループ(FG)が入っている(*1)。みずほの長年の支援に対するSBGからのご褒美と見ることもできるが、みずほが米国での株式引受において存在感を高めていることは確かだ。

ブルームバーグがまとめたデータによると、みずほは今年、米国株式および株式連動証券の引受会社の中で10位にランクされ、過去最高の年間順位に向かっている。昨年の13位、2021年の16位から上昇した。

アームIPOへの関与が成功すれば、その評価は高まるかもしれない。アームと同様に、マーケティングとデータオートメーションのプロバイダーであるKlaviyoのIPOでもみずほは「主幹事」の役割に就いている。

みずほは5月、M&A(合併・買収)助言会社の米グリーンヒルを5億5,000万ドル(約800億円)で買収すると発表した。この買収は多くの人を驚かせたが、その理由はみずほが支払った価格(株価の100%以上のプレミアム)だけでなく、グリーンヒルの過去10年間の収益低迷にある。

この停滞にもかかわらず、みずほはグリーンヒルを活用することで、顧客にさらなる利益をもたらすことができると考えている。「みずほ自身が認めているように、みずほには米国の大手ライバル銀行と取引で競争するための規模が不足しており、ウォール街の大手投資銀行からバンカーを雇用することは困難である。グリーンヒルの買収により、みずほは80人以上のM&Aマネージング・ディレクターを抱えることになる」とブルームバーグのTaiga UranakaとPatrick Wintersは書いている。

現在、米国は最大の投資銀行市場であり、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレーといった地元有力銀行が存在する。みずほがトップ10入りを果たすには、ドイツ銀行、RBC、BNPパリバなどの欧州系を追い抜く必要がある。

しかし、アームにおける勝利の美酒は、SBGへのリスキーな奉仕に対する小さな見返りにすぎないのかもしれない。フィナンシャル・タイムズ(FT)のCraig Cobenによると、SBGは、投資銀行業界最大級の手数料支払者として、銀行から有利な条件を引き出すことを得意としており、将来の取引手数料の見込みがなければ通常銀行がその約束を敬遠するような融資枠を確保している。アームのIPOの引受は、アーム株75%を担保としたタームローンに応じた投資銀行4社に対して、「報酬」のような形で渡された。

4行の勝利は、単独では不経済な条件での融資枠の提供によるもの、とCobenは指摘している。SBGの要求するリスキーなディールを呑み込んだ投資銀行が、アームの株式引受にありつけた、とも言えるかもしれない。

みずほとソフトバンクの関係は深く、孫正義氏のソフトウェア販売代理店に融資した41年前にさかのぼる。同行は、ボーダフォンの日本事業やスプリントの買収など、ソフトバンクのベンチャー企業に一貫して融資を行ってきた。

他行も乗り遅れたくない

日本の大手銀行数行は、みずほと同様の野心を持っているようだ。ブルームバーグが引用した金融機関の関係者によると、日本のライバル銀行もSBGが世界最大級のハイテク投資家に変貌したことを警戒しているという。

三井住友フィナンシャルグループは4月、米証券会社ジェフリーズの保有株式を最大15%まで追加所得することで合意した。三井住友FGの太田淳社長は翌5月の投資家説明会で、「我々は中長期的にバルジ・ブラケット(世界的に規模が大きく、かつ収益性が高い、多国籍の投資銀行)に次ぐポジションを目指している」と述べた。この発言は、JPモルガンやゴールドマンのような最大手の投資銀行の後続集団に入ることを意味する。ジェフリーズとの提携拡大は、最大手集団に追いつくために必要なことだと彼は言った。

脚注

*1 :アームは、IPOで調達しようとしている50億ドルから54億ドルの2%を投資銀行に支払う用意があるという。最大1億800万ドルだ。バークレイズ、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェース、みずほフィナンシャルグループの4行は、それぞれこのプールから17.5%を受け取ることになる。役割の少ない銀行も3%ずつ受け取る。

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