コンピューティングの電力消費量は英国並み、改善できる?[英エコノミスト]
オークリッジ国立研究所のエクサスケール級HPE Cray EXスーパーコンピュータ「Frontier」。OLCF at ORNL - https://www.flickr.com/photos/olcf/52117623798/ (CC BY 2.0)

コンピューティングの電力消費量は英国並み、改善できる?[英エコノミスト]

「最初に気になるのは、その静寂さです」とフィンランド科学センターのボス、キンモ・コスキは言う。北極圏の南250km、フィンランドのカヤーニという町にあるヨーロッパで最も強力なスーパーコンピューター、LUMI(フィンランド語で「雪」を意味する)について、コスキ博士はこう語る。

昨年完成したLUMIは、気候モデリングから新薬の探索まで、あらゆる用途に使用される。数万個のプロセッサーを搭載し、毎秒429兆回の計算が可能だ。これは世界で3番目に強力なスーパーコンピューターとなる。水力発電で電力を供給し、その廃熱をカヤーニの家庭の暖房に利用しているため、二酸化炭素の排出量もマイナスである。

LUMIは、専用スーパーコンピューターとインターネットの多くを動かすクラウドインフラの両方で、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)の未来を垣間見せてくれる。過去10年間、機械学習、ゲノム解読、株式市場や核兵器から気象まであらゆるもののシミュレーションといった技術によって、HPCの需要は急増してきた。このようなアプリケーションは、投げられるだけのコンピューティング・パワーを喜んで消費するからだ。同じ期間に、最先端のAIモデルを訓練するのに必要なコンピューティング・パワーは、5カ月ごとに倍増している。

HPCは、そして一般的にコンピューティングは、エネルギーを大量に消費するようになりつつある。国際エネルギー機関(IEA)は、データセンターが世界の電力消費量の1.5%から2%を占めており、これは英国経済全体とほぼ同じであると見積もっている。これは、2030年までに4%まで増加すると予想されている。温室効果ガス排出量削減の政府公約を見据え、コンピューター業界は、より少ない資源でより多くのことを行い、製品の効率を高める方法を見つけようとしている。それは、個々のマイクロチップ、そのチップから作られるコンピューター、そしてコンピューターを収容するデータセンターである。

まずはマイクロチップから。デジタル・コンピューターは、過去80年間で飛躍的に効率が向上した。現代のマシンは、第二次世界大戦直後に1回の計算で消費していたのと同じエネルギー量で、約10兆回の計算ができる。この大きな進歩の多くは、業界がムーアの法則(集積回路に詰め込める部品の数が2、3年ごとに倍増するという観測)に忠実であろうとした結果である。

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