ウォルマートが食料品戦争でアマゾンを圧倒する理由[英エコノミスト]
2023年4月12日(水)、米イリノイ州シカゴで永久閉店を控えたウェスト・セルマック通り2551番地のウォルマートの看板。写真家 Christopher Dilts/Bloomberg

ウォルマートが食料品戦争でアマゾンを圧倒する理由[英エコノミスト]

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2017年、アマゾンが137億ドルでのホールフーズ・マーケットの買収を発表したとき、食料品事業を強化するためにいくつかの奇妙な試みが行われた。そのひとつは、「大人のためのアイスクリームトラック」を開発し、ライトを点滅させ、クラクションを鳴らしながら近隣地域を走り回り、ポーターハウスステーキ、シゴク・オイスター(至極の牡蠣の意の高級品)、任天堂のゲームやその他のグッズを販売するというものだった。これはひっそりと棚上げされた。もうひとつは、アマゾンだけが供給できるようなユニークな商品を作ることだった。その答えが「シングルカウバーガー」であり、1頭分の肉から作られた和牛ビーフパティだった。現在もアマゾンのウェブサイトでは販売されているが、永久に在庫切れとなっている。

アマゾンのホールフーズ買収は、スーパーマーケット事業でより従来型のアプローチをとることを示唆した。買収が発表されたとき、アマゾンの株価が急騰し、ウォルマートなどのライバルの株価が下落したのはそのためだろう。しかし、それ以来アマゾンは、ホールフーズやその他の業態で低調な結果を出しており、食品スーパーを誘惑の練習というよりは科学実験のように扱っている。アマゾンが小売体験に追加した最も有名なものは、実店舗での「歩いて出るだけ(Just walk out)」技術であり、オンライン・ワンクリック・ショッピングに相当するものだ。しかし、レジのないスーパーマーケットというと、食料品店よりもオタクが好むもののように聞こえる。レジでの人間同士のやりとり、精肉売り場でもみ合う狩猟採集本能、調味料売り場での食通同士のコロンブス的交流などは必要不可欠のようだ。

アマゾンはこの体験を一新しようとしている。昨年、アマゾンはイギリスのスーパーマーケットチェーン、テスコの元幹部であるトニー・ホゲットを採用した。16歳でテスコの「トロリーボーイ(押し車を回収する従業員)」からスタートしたこの英国人は、大きな仕事を任された。私が最近ロサンゼルスのアマゾン・フレッシュの店舗を訪れたとき、生鮮食品と魚のカウンターは不毛の地であり、まるで廃業セールのようだった。私は、陳列されていた3羽のロティサリーチキンのうちの1羽を同情から購入した。

ホゲットの下、アマゾンはフレッシュ店舗を無機質なものにしないよう努力している。人間のレジ係とセルフレジは、それを好む人々のために復活した。ホールフーズのノウハウは、店舗の立地を再考するために使われている。アマゾンで食料品を買うことを、ウォルマートで買うのと同じように習慣化するための努力の一環である。アンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は、アマゾンの規模に見合った「大衆食料品店業態」の構築を目指しているという。しかし、どちらかといえば、ウォルマートがアマゾンの領域に侵入する可能性の方が高そうだ。

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