![米国のインフレとの戦いはさらに難しくなる[英エコノミスト]](/content/images/size/w2640/2023/07/400497916.jpg)
米国のインフレとの戦いはさらに難しくなる[英エコノミスト]

疑われる要素は何もなかった。連邦準備制度理事会(FRB)の最新会合に向け、投資家たちは中央銀行が再び金利を引き上げる確率を99%近くと予想していた。7月26日、政策決定者たちは12回の会合で11回目となる利上げを実施し、この40年間で最も急激な金融引き締めに踏み切った。しかし、中央銀行の次のステップは不確実性に覆われている。
エコノミストの中には、今回の利上げがこのサイクルにおけるFRBの最後の利上げになると確信している者もいる。インフレ率は2022年の高水準から低下し、6月の消費者物価は前年同月比わずか3%上昇にとどまった。変動の激しい食品とエネルギーコストを除いたコア・インフレ率はもう少し頑強だったが、それさえも軟化し始めており、基調的な物価上昇圧力が和らいでいることを示している。これは、FRBが緩和する道筋を開くものであり、願わくば米国を話題のソフトランディングへと導くものである。銀行のモルガン・スタンレーのエレン・ゼントナーは、FRBは「長期ホールド」を予想し、来年初めの利下げを予感している。
また、そうとも言えない見方もある。インフレはここ数年、常に楽観論者の足を引っ張ってきた。例えば、エネルギー価格が上昇すれば、消費者と企業はインフレ予想をすぐに修正し、FRBを再利上げに向かわせる可能性がある。住宅価格の回復が加速すれば、それも懸念を煽るだろう。賃金の急上昇がインフレ率に影響を与えるため、労働市場の活況も懸念に拍車をかける。今日の失業率は3.6%で、FRBがこのサイクルで初めて利上げを実施した2022年3月の水準と同じである(図表1参照)。引き締めのペースは通常、失業率を押し上げると予想される。その代わり、意欲的な労働者の増加など、コロナの大流行からの回復が景気を下支えしているようだ。