世界経済は重力に逆らっている…それは長続きしない[英エコノミスト]

世界経済は重力に逆らっている…それは長続きしない[英エコノミスト]
9月22日金曜日、東京の中央銀行本部で記者会見する日本銀行の植田和男総裁。日本銀行が超低金利の金融政策を据え置いたことで、円相場が下落し、株価も下げ幅を縮小した。Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
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戦争が激化し、地政学的な情勢が暗転するなかでも、世界経済はどうしようもなく明るい。ほんの1年前までは、高金利はすぐに景気後退をもたらすと誰もが考えていた。しかし今や、楽観論者たちさえも惑わされている。第3四半期の米国経済は、年率4.9%という驚異的なペースで成長した。世界中でインフレ率は低下し、失業率はほぼ低水準で推移しており、大手中央銀行は金融引き締めを停止した可能性がある。不動産危機に見舞われている中国は、ささやかな景気刺激策の恩恵を受けそうだ。しかし残念ながら、この好景気は長くは続かない。今日の成長の基盤は不安定に見える。前方を見れば、脅威があふれている。

抑制のきかない景気は、金利の急上昇はなくなったとはいえ、さほど下がることはないだろうという見通しを後押ししている。先週、欧州中央銀行と米連邦準備制度理事会(FRB)は金利を据え置いた。11月2日にこの記事を掲載した直後、イングランド銀行も金利を据え置くと予想された。それに伴い、長期債利回りは急上昇した。パンデミック不況の真っただ中にあったわずか1.2%から、いまや米国政府は30年間の借入に5%を支払わなければならない。低金利で知られる経済圏でさえ、急激な上昇に見舞われている。少し前までドイツの借入コストはマイナスだったが、今では10年債利回りが3%近くになっている。日本銀行は、10年物国債利回りを1%に据え置くという約束をあきらめたも同然だ。

アメリカのジャネット・イエレン財務長官をはじめとする一部の人々は、こうした金利上昇は良いことであり、世界経済が最も健全な状態にあることを反映していると言う。しかし実際には、金利上昇は危険の元なのだ。金利上昇は今後も続くだろうから、今日の経済政策は失敗し、彼らが育んできた成長も失敗するだろう。

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コロナは世界の子どもたちにとって大失敗だった[英エコノミスト]

コロナは世界の子どもたちにとって大失敗だった[英エコノミスト]

過去20年間、主に富裕国で構成されるOECDのアナリストたちは、学校の質を比較するために、3年ごとに数十カ国の生徒たちに読解、数学、科学のテストを受けてもらってきた。パンデミックによる混乱が何年も続いた後、1年遅れで2022年に実施された最新の試験で、良いニュースがもたらされるとは誰も予想していなかった。12月5日に発表された結果は、やはり打撃となった。

By エコノミスト(英国)
中国は2024年に経済的苦境を脱するか?[英エコノミスト]

中国は2024年に経済的苦境を脱するか?[英エコノミスト]

2007年から2009年にかけての世界金融危機の後、エコノミストたちは世界経済が二度と同じようにはならないことをすぐに理解した。災難を乗り越えたとはいえ、危機以前の現状ではなく、「新常態」へと回復するだろう。数年後、この言葉は中国の指導者たちにも採用された。彼らはこの言葉を、猛烈な成長、安価な労働力、途方もない貿易黒字からの脱却を表現するために使った。これらの変化は中国経済にとって必要な進化であり、それを受け入れるべきであり、激しく抵抗すべきではないと彼らは主張した。 中国がコロナを封じ込めるための長いキャンペーンを展開し、今年その再開が失望を呼んだ後、このような感情が再び現れている。格付け会社のムーディーズが今週、中国の信用格付けを中期的に引き下げなければならないかもしれないと述べた理由のひとつである。何人かのエコノミストは、中国の手に負えない不動産市場の新常態を宣言している。最近の日米首脳会談を受けて、中国とアメリカの関係に新たな均衡が生まれることを期待する論者もいる。中国社会科学院の蔡昉は9月、中国の人口減少、消費者の高齢化、選り好みする雇用主の混在によってもたら

By エコノミスト(英国)
イーロン・マスクの「X」は広告主のボイコットにめっぽう弱い[英エコノミスト]

イーロン・マスクの「X」は広告主のボイコットにめっぽう弱い[英エコノミスト]

広告業界を軽蔑するイーロン・マスクは、バイラルなスローガンを得意とする。11月29日に開催されたニューヨーク・タイムズのイベントで、世界一の富豪は、昨年彼が買収したソーシャル・ネットワーク、Xがツイッターとして知られていた頃の広告を引き上げる企業についてどう思うかと質問された。「誰かが私を脅迫しようとしているのなら、『勝手にしろ』」と彼は答えた。 彼のアプローチは、億万長者にとっては自然なことかもしれない。しかし、昨年、収益の90%ほどを広告から得ていた企業にとっては大胆なことだ。Xから広告を撤退させた企業には、アップルやディズニーが含まれる。マスクは以前、Xがブランドにとって安全な空間である証拠として、彼らの存在を挙げていた。

By エコノミスト(英国)