ユニクロは日本企業の「第二の故郷」である東南アジアで拡大する

ユニクロは日本企業の「第二の故郷」である東南アジアで拡大する
2022年10月28日(金)、東京都新宿区にある株式会社ファーストリテイリングが運営するユニクロの店舗の看板。Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

東南アジアのどの都市を走っても、日本の商業的な存在感を感じることができる。トヨタ、ホンダ、日産の自動車が道路を埋め尽くしているのは、この地域で何十年にもわたって市場を支配してきた結果だ。衣料品小売業ユニクロの親会社であるファーストリテイリングがその気になれば、これらの自動車のドライバーもすぐに日本の服を着ることになるだろう。

ユニクロの2月末までの3ヶ月間の営業利益は、前年同期比48%増の1,030億円となり、株主にとって嬉しい結果となった。同社の株価は過去12ヶ月で53%上昇し、日本の大型上場企業の中で最も好調な企業の1つとなっている。同社の株価は、2021年2月につけた史上最高値まであと10%に迫っており、時価総額は760億ドルで、日本の上場企業の中で6番目に大きい企業である。

一見すると、ユニクロは日本の小売業が海外で成功した珍しいストーリーである。ファーストリテイリングの主な競合他社は、H&Mの親会社であるヘネス・アンド・マウリッツと、ザラの親会社であるインディテックスで、それぞれスウェーデンとスペインに本拠地を置いている。しかし、ファーストリテイリングの海外での成長は、欧州の同業他社と同様に、日本の工業・製造業企業の足跡をたどることになる。

日本の工業系企業、特に自動車メーカーは、1960年代以降、東南アジアを第二の故郷とした。ファーストリテイリングは、特にアジアで急成長しており、2月末までの半年間で、売上高(本国と中国を除く)は前年同期比71%増となった。この地域の売上高は、前年同期の11%から16%に増加し、同じ期間に25%から22%に減少した中国本土、香港、台湾に迫りつつある。1960年代、日本企業の関心は、石油探査や天然資源の供給、輸入代替工業化政策をとる国での工業製品の生産にあった。今、この地域はユニクロにとって、工場を置く場所というより、有望な市場である。

この比較は地理的な問題にとどまらない。高齢化が進む日本で人口動態の制約を受けたファーストリテイリングは、テクノロジーとオートメーションで労働者を代替し、日本の大手メーカーをさらに模倣している。産業オートメーションの巨人としてほとんど知られていないキーエンスは、日本で2番目に大きな上場企業で、1,100億ドルの価値がある。2017年からユニクロはすべての衣料品に小さな識別タグを埋め込み、レジでの自動スキャンを可能にしている。

自動化への依存は、同社の事業運営やサプライチェーンにも深く浸透している。2019年には、倉庫での仕事を自動化する目的で、日本のMujinとフランスのExotec Solutionsという小型ロボット会社と手を組んだ。すでに2018年には、より大規模な自動化企業であるダイフクと手を組み、東京の倉庫の労働力を90%削減することに成功していた。

節約は、もはや会社の収益につながるボーナスだけではない。ユニクロは3月に一部の社員の給与を最大40%引き上げたが、これは人材獲得競争に勝つため、企業の賃金を国際的な類似企業と同等にするためで、今後は世界標準に基づいた給与を設定する予定だ。同社が従業員の給与を上げるために利益率を下げることを避けたいのであれば、自動化による節約は必要不可欠である。■

From "Uniqlo’s success mirrors the growth of Japan’s industrial giants", published under licence. The original content, in English, can be found on https://www.economist.com/business/2023/04/20/uniqlos-success-mirrors-the-growth-of-japans-industrial-giants

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翻訳:吉田拓史、株式会社アクシオンテクノロジーズ

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