アジア独自の経済モデル:張り巡らされる相互投資網と欧米の影響力低下[英エコノミスト]

アジア独自の経済モデル:張り巡らされる相互投資網と欧米の影響力低下[英エコノミスト]
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700年前、日本沿岸から紅海まで延びる海上交易路には、アラブのダウ船、中国のジャンク船、ジャワのジョン船などが行き交い、陶磁器、貴金属、織物などを運んでいた。その中心には、「シンガプーラ」として知られる交易所が栄えた。アジア域内の巨大な商業ネットワークは、台頭する欧州帝国からの船乗りの到来と、アジア産品のより遠く離れた市場の出現によってのみ途絶えた。

今日、もうひとつの再編成が進行中である。20世紀後半の「アジアの工場」モデルは、大陸が米国や欧州の消費者向けに製品を生産するというものだったが、中国、日本、韓国、台湾の繁栄の驚異的な後押しとなった。1990年には、膨大な量の製品が欧米に流出したため、アジア大陸内の貿易はわずか46%に過ぎなかった。しかし、2021年には58%に達し、欧州の69%に近づいている(図表1参照)。地域貿易の拡大は、資本フローの増加にもつながり、各国をより緊密に縛っている。アジア大陸の経済的・政治的未来を再構築する、アジア貿易の新時代が始まったのである。

この新時代の到来は、1990年代の日本を中心とした高度なサプライチェーンの成長から始まり、その後、中国も同様となった。中間財(最終的に完成品の一部となる部品)が国境を越えて大量に移動し始めたのだ。それに続いたのが外国直接投資(FDI)である。アジアの投資家は現在、香港とシンガポールの金融ハブを除く自地域の対外直接投資ストックの59%を保有しており、2010年の48%から増加している。インド、インドネシア、日本、マレーシア、韓国では、アジアからの直接投資の割合が10ポイント以上上昇し、26%から61%に達した。

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コロナは世界の子どもたちにとって大失敗だった[英エコノミスト]

コロナは世界の子どもたちにとって大失敗だった[英エコノミスト]

過去20年間、主に富裕国で構成されるOECDのアナリストたちは、学校の質を比較するために、3年ごとに数十カ国の生徒たちに読解、数学、科学のテストを受けてもらってきた。パンデミックによる混乱が何年も続いた後、1年遅れで2022年に実施された最新の試験で、良いニュースがもたらされるとは誰も予想していなかった。12月5日に発表された結果は、やはり打撃となった。

By エコノミスト(英国)
中国は2024年に経済的苦境を脱するか?[英エコノミスト]

中国は2024年に経済的苦境を脱するか?[英エコノミスト]

2007年から2009年にかけての世界金融危機の後、エコノミストたちは世界経済が二度と同じようにはならないことをすぐに理解した。災難を乗り越えたとはいえ、危機以前の現状ではなく、「新常態」へと回復するだろう。数年後、この言葉は中国の指導者たちにも採用された。彼らはこの言葉を、猛烈な成長、安価な労働力、途方もない貿易黒字からの脱却を表現するために使った。これらの変化は中国経済にとって必要な進化であり、それを受け入れるべきであり、激しく抵抗すべきではないと彼らは主張した。 中国がコロナを封じ込めるための長いキャンペーンを展開し、今年その再開が失望を呼んだ後、このような感情が再び現れている。格付け会社のムーディーズが今週、中国の信用格付けを中期的に引き下げなければならないかもしれないと述べた理由のひとつである。何人かのエコノミストは、中国の手に負えない不動産市場の新常態を宣言している。最近の日米首脳会談を受けて、中国とアメリカの関係に新たな均衡が生まれることを期待する論者もいる。中国社会科学院の蔡昉は9月、中国の人口減少、消費者の高齢化、選り好みする雇用主の混在によってもたら

By エコノミスト(英国)
イーロン・マスクの「X」は広告主のボイコットにめっぽう弱い[英エコノミスト]

イーロン・マスクの「X」は広告主のボイコットにめっぽう弱い[英エコノミスト]

広告業界を軽蔑するイーロン・マスクは、バイラルなスローガンを得意とする。11月29日に開催されたニューヨーク・タイムズのイベントで、世界一の富豪は、昨年彼が買収したソーシャル・ネットワーク、Xがツイッターとして知られていた頃の広告を引き上げる企業についてどう思うかと質問された。「誰かが私を脅迫しようとしているのなら、『勝手にしろ』」と彼は答えた。 彼のアプローチは、億万長者にとっては自然なことかもしれない。しかし、昨年、収益の90%ほどを広告から得ていた企業にとっては大胆なことだ。Xから広告を撤退させた企業には、アップルやディズニーが含まれる。マスクは以前、Xがブランドにとって安全な空間である証拠として、彼らの存在を挙げていた。

By エコノミスト(英国)