アジア独自の経済モデル:張り巡らされる相互投資網と欧米の影響力低下[英エコノミスト]
![アジア独自の経済モデル:張り巡らされる相互投資網と欧米の影響力低下[英エコノミスト]](/content/images/size/w1200/2023/09/getty-images-gKETmlXFWdg-unsplash.jpg)

700年前、日本沿岸から紅海まで延びる海上交易路には、アラブのダウ船、中国のジャンク船、ジャワのジョン船などが行き交い、陶磁器、貴金属、織物などを運んでいた。その中心には、「シンガプーラ」として知られる交易所が栄えた。アジア域内の巨大な商業ネットワークは、台頭する欧州帝国からの船乗りの到来と、アジア産品のより遠く離れた市場の出現によってのみ途絶えた。
今日、もうひとつの再編成が進行中である。20世紀後半の「アジアの工場」モデルは、大陸が米国や欧州の消費者向けに製品を生産するというものだったが、中国、日本、韓国、台湾の繁栄の驚異的な後押しとなった。1990年には、膨大な量の製品が欧米に流出したため、アジア大陸内の貿易はわずか46%に過ぎなかった。しかし、2021年には58%に達し、欧州の69%に近づいている(図表1参照)。地域貿易の拡大は、資本フローの増加にもつながり、各国をより緊密に縛っている。アジア大陸の経済的・政治的未来を再構築する、アジア貿易の新時代が始まったのである。

この新時代の到来は、1990年代の日本を中心とした高度なサプライチェーンの成長から始まり、その後、中国も同様となった。中間財(最終的に完成品の一部となる部品)が国境を越えて大量に移動し始めたのだ。それに続いたのが外国直接投資(FDI)である。アジアの投資家は現在、香港とシンガポールの金融ハブを除く自地域の対外直接投資ストックの59%を保有しており、2010年の48%から増加している。インド、インドネシア、日本、マレーシア、韓国では、アジアからの直接投資の割合が10ポイント以上上昇し、26%から61%に達した。