ぐるなび、バーティカルAIエージェントの新アプリ「UMAME!」β版をリリース
飲食店情報サービス大手のぐるなび(本社・東京)は1月20日、次世代飲食ビジネスの基盤構築をめざす「ぐるなびNextプロジェクト」の初成果として、新たな飲食店探索アプリ「UMAME!(うまみー!)」のβ版を公開した。

飲食店情報サービス大手のぐるなび(本社・東京)は1月20日、次世代飲食ビジネスの基盤構築をめざす「ぐるなびNextプロジェクト」の初成果として、新たな飲食店探索アプリ「UMAME!(うまみー!)」のβ版を公開した。昨年8月に本格始動した同プロジェクトでは、生成AIを活用した新たなメディア戦略や飲食店支援、業務効率化などを短期間で推進する。
「ぐるなび」は1996年に創設され、電話帳や雑誌が主流だった時代に「ネットで店探し」という文化を定着させてきた。今回の「UMAME!」は、ユーザーの潜在ニーズにも応えられるパーソナライズ性を重視し、日々進化する外食シーンの新たな可能性を拓く狙いだという。同社は今後、アプリの活用データや技術をもとに飲食店の販促や顧客管理分野などで新ビジネスの創出を図り、飲食業界のDXを一段と加速させる考えだ。
ぐるなびは、検索を顧客獲得の主力としているが、各種のSNSが浸透し、さらに最近ではChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)を用いたチャットが台頭している。AIエージェントという言葉が世界市場から遅れて日本でもバズワードになりつつあるが、杉原章郎社長は1月20日に東京都千代田区で開かれた記者会見で「まだ日本市場でAIエージェントは早すぎると思うが、弊社が率先してやっていき、火付け役となりたい」と語った。また、「(UMAME!については)スマホアプリからウェアラブルへと進化し、最終的にはデバイスに依存しないサービスにしていきたい」と展望を示した。
杉原社長は、ビッグテック企業が水平的なAIを展開している現状に触れつつ、バーティカル(垂直的)なAIが分野ごとに生まれてくる可能性にも言及。「我々は飲食の分野でそのポジションを取りたい」と語った。
ぐるなびにはこれまでに蓄積した膨大なデータがあり、UMAME!は現在、この自社保有のデータのみを参照している。今後、高度なパーソナライゼーションを提供するためには多様なデータが必要になるが、杉原社長は「楽天との連携を模索している」と明らかにした。楽天とぐるなびは2019年5月に資本業務提携契約を結び、楽天は2024年9月時点でぐるなび株16.4%を保有する筆頭株主。
UMAME!は、ぐるなびが保有する飲食店関連データを基に検索拡張生成(RAG)を中核とする技術を取り入れ、さらに顧客の情報を加味して飲食店とのマッチ度を表示することでパーソナライズを図る。既存の検索に対して、RAGはユーザーが自分の好きな言葉で条件を指定したり、追加・削除が容易にできる点が特徴だ。CTOの岩本俊氏は「メタディスクリプションを利用した画像RAGも同時に実装した。少人数のチームで開発を進め、技術の進化とユーザーの利用慣れのギャップを考慮しながら、MVP(Minimum Viable Product)としてiOS版をリリースしている。今後は得られたデータをもとに改善を重ねる」と説明した。
今後もAIエージェントのデザインパターンはAIコミュニティの中で提案され続け、プロダクトレベルで大きなインパクトを持つ技術が登場する可能性がある。
※本原稿は、吉田拓史がボランティアで執筆しています。