マイクロソフト、反Apple戦線になめらかに加勢

Appleとは異なるオープンプラットフォームを自称

マイクロソフト、反Apple戦線になめらかに加勢

要点

マイクロソフトは、アプリ開発者や規制当局がAppleのプラットフォームの閉鎖性に圧力をかけているのを見て、オープンプラットフォームを掲げるホワイトナイト(白馬の騎士)のポジションをとっている。マイクロソフトは現状、反トラスト規制の対象となっていない。


6月24日のWindowsに関する発表会で、マイクロソフトCEOであるサティア・ナデラは、Windowsを「クリエイターのためのプラットフォーム」とするビジョンを示し、自らをAppleの厳格なプラットフォーム管理と対極をなす存在として描いた。

発表会の最後に行われたナデラのスピーチは、Windowsが、macOSやiOSとは対称的に、クリエイターや消費者にとってオープンなことを有名ブロガーや哲学者の引用を援用して終始主張した。

発表会では、マイクロソフトは、アプリストアのルールを変更し、より多くの種類のアプリやAndroidアプリを許可することを発表した。さらに、マイクロソフトは、AppleとGoogleが許さない、アプリが独自の決済システムの実装を許可するとも明らかにした。

7月28日より、開発者が自社またはサードパーティの決済システムをアプリに使用した場合、マイクロソフトはその収益の100%を開発者に還元するという。この「減税」は、ゲームアプリには適用されないものの、同社は最近、8月1日からMicrosoft Storeでのゲーム収益の手数料を30%から12%に引き下げ、Appleよりも小さくしたことを発表していた。

マイクロソフトが自らをAppleと対極に見せる戦略を採用した文脈を理解するのに、最も重要な役割を果たすのは、昨年始まったAppleと人気ゲームFortniteを提供するEpic Gamesの係争である。

2020年半ば、Epicは、iOSとAndroidの両方でFortnite内に独自の決済システムを実装し、AppleとGoogleのポリシーに違反して、双方のストアからアプリを削除された。AppleとGoogleは、独自の決済システムを通じてアプリストアを回避せず、デジタル商品のアプリ内購入に対する30%の手数料を受け入れるようEpic側に迫った。

これに対し、Epicは2020年8月、App Storeにおける慣行が反競争的であるとして、Appleを提訴した。EpicのCEOであるティム・スウィーニーは7月のCNBCのインタビューで、「Appleは、ソフトウェアの配布やソフトウェアの収益化を絶対的に独占することで、エコシステムをロックダウンし、機能不全に陥れている」と語り、「Googleは本質的に、ユーザーインターフェース上の障壁を作ることで、競合するストアを意図的に阻害している」と語っていた。

マイクロソフトは同年10月、これに機敏に反応して、アプリ開発者への約束として10の原則を発表した。その中には、Appleへのあてつけのように、プラットフォーム上の競合ストアを排除したり、アプリが収益を上げるために使用する特定のビジネスモデルを削除したりしないことが含まれていた。今回、マイクロソフトはこの原則をWindowsのポリシーとして具体化したことになる。

マイクロソフトもEpicの騒動と同時期にクラウドゲームxCloudのiOS展開をめぐってAppleと激しくやりあっていた。Appleは、様々なプラットフォーム運営者の手練を使い、マイクロソフトのxCloudやGoogleのStadiaのようなゲームストリーミングサービスが、iOSデバイス上で望んでいたように動作することを困難にし続け、App Storeのポリシーで徐々に切り分けを行い、厳しい制限の下でサービスを動作させるように仕向けた。AppleはiOSで自社ゲームサービスのApple Arcadeを展開している。

マイクロソフトはAppleとの論争の中で、xCloudのiOS展開を正当化するため、ゲームと同じようにインタラクティブな体験を提供するアプリとして、夢を記録する「Shadow」とNetflixを例示したことが、2021年5月に行われ、現在判決を待っているEpicとAppleの訴訟(以下、Epic訴訟)で提出された両者の電子メールの記録から明らかになっている。これと直接的な関係があるかは定かではないが、同時期にShadowが一時App Storeから排除されており、流れ弾に当たったように見える(Netflixは流石に巨大すぎて削除できなかったのだろうか)。

昨年、App Storeの責任者に任命されるまでの30年間、同社のマーケティングを率いてきたAppleフェローのフィル・シラーは、Appleは、ゲームストリーミングサービスに対して、たとえ数百タイトルのストリーミングカタログの一部であっても、個々のアプリをApp Storeに提出して審査を受けることを要求している、と「説明」している(シラーは経営陣から「針のむしろ」の役を仰せつかったようだ)。

Epic訴訟では、Epicの弁護士は、iOSにクラウドゲーミングアプリを提供するために苦労しているマイクロソフトとNVIDIAの代表者に尋問し、Xboxの重役であるLori WrightがAppleがApp Storeを厳しく管理していることが、マイクロソフトのゲーム事業に悪影響を与えていると証言した。Nvidiaのクラウドゲーミングサービスのプロダクトマネージャーも証人として、Appleが厳しく管理しているApp Storeでは、開発者は面倒な回避策を取らざるを得ないと証言した。

Androidスマートフォンやタブレットで25 以上のタイトルをWi-Fi またはモバイル ネットワークを通してクラウドストリーミングでプレイできるxCloud。iOSからは事実上排除されている。image via Microsoft / Xbox.

アプリベンダーや規制当局が連動してAppleを糾弾するターン

Epic訴訟では、Appleは、Wrightの証言をめぐって信頼性の欠如の認定を行うよう判事に求める申請書の中で、「合理的な観察者は、Epicがマイクロソフトの隠れ馬(stalking horse)としての役割を果たしているのではないかと思うかもしれない」「マイクロソフトはこの訴訟において、当事者として提訴せず、あるいは企業の代表者を証言に派遣しないことで、身を隠している」と非難したとBloombergが報じている。Appleは、Epicが裁判で召喚したマイクロソフト関連の証人の数は、スタンフォード大学のSusan Atheyを含めて、5人に上ったと主張した。

Appleに対して公に反旗を翻しているのは、Epic Gamesだけではない。音楽サービスSpotifyは2019年にAppleがApp StoreのポリシーでEUの競争ルールを破っていると申し立てた。欧州委員会は4月、予備的な結論として、Appleが自社音楽サービスApple Musicを展開している傍ら、App Storeでライバルに高額な手数料を請求し、他の定額利用の選択肢を知らせることを禁じている、と判断している。

Facebookはアプリ広告のためのユーザー追跡の手段に対して、Appleのプライバシー保護ポリシーによって圧力をかけられており、これへの反撃として、自らを「中小企業の代弁者」と提議してAppleを避難する新聞全面広告を掲載した。最近の開発者会議WWDCでは、Appleは、それまでの施策に加えてさらにFacebookの広告ビジネスに圧力をかけうるプライバシー仕様改善を発表した。

またタスク管理ツールのBasecampもまた同時期にAppleと激しくやりあったアプリ開発者である。Appleは、Basecampが提供する定額制電子メールアプリ「Hey」を当初、iOS App StoreでHeyアプリを承認していたが、Heyがアプリ内課金を提供していないことで規則に違反していると判断し、バグ修正のためのアップデートを拒否した。

これに対し、BasecampのCTOであるデイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソンは、Appleに30%の手数料を支払うくらいなら、「この家を自分で燃やしてしまう」と語った。ハンソンとApp Storeなどのデジタルマーケットプレイスに関する独占禁止法の調査を主導している下院反トラスト委員会委員長のディヴィッド・シシリン議員(民主党)は米メディアThe Vergeのポッドキャスト番組に出演し、シシリン議員は、アップル社の30%の手数料を「非良心的」で「高速道路強盗」と呼んだ。シシリン議員は1年4カ月にわたる調査に基づいて、6月上旬に米下院に提出された超党派の反トラスト(独占禁止)法案5本で主導的役割を果たしている。

反トラスト規制の対象を免れているマイクロソフト

マイクロソフトは、Appleを糾弾するオープンプラットフォーム陣営に腰を据えることで最大の利得を得ることができる。マイクロソフト自身がWindowsのためにアプリストアのエコシステムを構築しようとしたが、iPhone(あるいはAndroid)で見られたような成功のレベルには全く及ばなかった。ソフトウェア分野では、Androidがそうであったように追随者がオープンな仕組みで連合を形成する傾向があるが、マイクロソフトのアプリストアは間違いなく追随する側だった。

マイクロソフトはオープン下で損をする立場ではない。同社のビジネスモデルは、Windowsを販売することや、アプリの収益から利益を得ることとは、もはや関係がなくなっている。同社の主要な収益源はMicrosoft 365、Azure、そして各種のエンタープライズサービスであり、同社の財務状況は恐ろしいほど良好で、高額の企業買収を繰り返し、時価総額は2兆ドルを突破している。

ビッグテック規制の対象とならず、クリエイターのためのオープンプラットフォームを訴えるナデラCEO。彼の就任以降、マイクロソフトの株価は700%上昇した。Photo: "World Economic Forum Annual Meeting" by World Economic Forum is licensed under CC BY-NC-SA 2.0

マイクロソフトは今ところ、超党派の下院法案の対象となるかは微妙な状況だ。この法案ではインターネット上の販売やサービスを仲介する「オンラインプラットフォーム」の著しい優位性を規制の枠内に入れる、というロジックで作られている。マイクロソフトは、時価総額6,000億ドル以上、月間アクティブユーザー数5,000万人以上など、これらの法案で定められた「対象プラットフォーム」とみなされる基準を満たしているが、法案は同社の特定の事業分野を対象としていない。

マイクロソフトにも同様の締め付けを行うべきだという意見もある。米下院議員のジム・ジョーダン(共和党)は、6月21日にマイクロソフトに宛てた書簡の中で、他の大手技術プラットフォームと同様の独占禁止法上の監視を受けるよう求めている。しかし、下院反トラスト小委員会の共和党トップであるケン・バック議員(共和党)は彼の言動を諌めており、ジョーダンの意見が主流派になる兆候はない。

このような万全の背景のなかで、マイクロソフトは自身を、Appleの閉鎖性の対局にあるクリエイターのためのホワイトナイトと描いた。巡り巡って1998年当時のマイクロソフトとは似ても似つかない位置取りをしているのだ。

Photo: "File:Steve Jobs and Bill Gates (522695099).jpg"by Joi Ito from Inbamura, Japan is licensed under CC BY 2.0

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