Sea Limited、東南アジア市場を独走

上場決定のGrab, 合併観測のGojek, Tokopediaが二番手集団

Sea Limited、東南アジア市場を独走

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要点

今月は東南アジアのテクノロジーセクターの覇権争いに大きな変化が訪れた。Sea Limitedが他を突き放し、SPAC上場を決めたGrabと新たに誕生すると噂されるGojekとTokopediaの合併会社が二番手集団を形成している。


GojekとTokopediaが合併の噂

米メディアThe Informationの4月14日付の報道によると、インドネシアの配車新興企業Gojek社とEC新興企業Tokopedia社が、180億米ドル規模の大型合併を行い、配車、出前、ECの大企業「Goto」を設立する方向で最終調整に入ったという噂が飛び交っている。

合併は、早ければ今月中にも完了する見込み。Gotoのトップマネジメントには、両者の経営陣が詰め込まれる。GoToは、2つのプラットフォームのコアビジネスである配車、EC、出前、フィンテック、ロジスティックスなどのサービスを提供する。

Bloombergの報道によると、GotoのCEOには、Gojekのアンドレ・ソエリスティオ共同CEOが就任すると関係者は語ったという。取引の結果、GojekがGotoの58%の新会社の株式を保有し、Tokopediaが残りの株式を保有するとされた。

GojekとTokopediaは、ASEAN諸国最大の経済であるインドネシアを拠点とするユニコーン企業であり、企業価値はそれぞれ105億米ドルと75億米ドルに達している。TokopediaにはAlibabaとソフトバンクが、GojekにはTencent、Google、三菱自、三菱商事、三菱リースが出資している。

ただし、GojekとTokopediaのどちらからも最新情報や公式声明は出ていないため、これは依然として噂にすぎない。これまでも不確実な報道が行われ、それが後に覆されるということが繰り返されている。

GrabのSPAC上場

Grabは4月13日、特別目的買収会社(SPAC)のAltimeter Growth Corpとの逆合併でNASDAQに上場すると発表した。この逆合併(リバース・マージャー)は、Grabの企業価値を396億ドルとし、約45億ドルの現金を提供するが、そのうち40億ドルはPIPE(私募増資)の形で提供される。Altimeter Capitalは、このPIPEに7億5,000万ドルを出資する。このほか、ブラックロック、カウンターポイント・グローバル、テマセクなどが名を連ねる。

SPAC上場のため、十分な情報はもたらされないが、Grabは投資家向けのスライドで楽観的ともとれる見通しを示している。GMVは年平均成長率(CAGR)40%で成長すると想定され、純収益(Net Revenue)はCAGR42%で成長すると想定されている(図1)。この楽観的な見通しをもっても5億ドルの黒字に到達するのに2023年までかかるとGrabなどは予測している(図2)。

未上場企業の選択肢として、発行体により多くのコストを強いるSPACの優先順位は低い。コロナ禍で東南アジアのデジタル経済が近年続けてきた成長を一服させる中、Grabは通常のIPOではなくSPACルートに頼らざるを得なかった、と考えるのが妥当だ。

図1. 年平均成長率(CAGR)40%で成長すると想定されるGMV(左)とCAGR42%で成長すると想定されるNet Revenue(純収益)。出典:Grab / Altimeter Growth Corp
図2. 2023年には17億ドルに達すると想定すれるContribution Profit(貢献利益)と2023年に黒字化、5億ドルに達すると想定されるEBITDA。 出典:Grab / Altimeter Growth Corp

市場環境

昨年11月に公開されたGoogle, Temasek, Bain&Companyの報告書は、2020年、地域はコロナの感染拡大により成長の停滞に直面したものの、東南アジアのインターネット・エコノミーは引き続き堅調で、成長が期待される、と予測している。

報告書は、東南アジアの「インターネットエコノミーGMV」が2020年から2025年にかけCAGR24%の成長を遂げ、3,090億ドルに達すると予測している。半分程度をECが占め残りをオンライン旅行、交通・出前、オンラインメディアの順番に分け合うとみている(図3)。

図3. 東南アジアのインターネットエコノミーGMVは2020年に停滞するものの、CAGR24%の成長で2020年に3,090億ドルに到達すると報告書は予測している。出典:e-Conomy SEA 2020

インドネシアはこの調査の対象となった東南アジアの主要6カ国のインターネット経済の約6割を占めている。コロナ禍の間でも、インドネシアとベトナムのインターネットエコノミーGMVは二桁の成長を持続させている。

図4. 国別インターネットエコノミーGMV。インドネシアが6割を占める。ベトナムとタイが二番手集団。出典:Sea Limited

Sea Limited

このような東南アジアのインターネット経済の成長を一身に享受しているのが、Sea Limitedだ。2020年第4四半期、GAAP売上高は前年同期比102%成長し、15億6,660万ドルに達している。通年では、GAAP売上高は前年同期比101%の43億7,570万ドルに達した。Googleらの報告書によると、地域のインターネット経済は2020年の間停滞していたはずだが、同社の成長は止まっていない。

図5. 前年同期比/前年比100%超の急成長を遂げるGAAP売上高。出典:Sea Limited

特にコロナ禍の後通しを受けたEC事業の成長が著しく、ECの売上構成比は38.4%(2019年)から49.5%(2020年)まで増え、主力のゲームを超えた。同社はEC事業の開始時から赤字を計上し続け、ゲーミング事業と資金調達に頼ったが、現在は、東南アジア・南米・台湾等に多国展開するShopeeが、TokopediaのようなローカルのECプレイヤーとの競争で優位に立っている。

図6. 2020年第四半期、EC事業の総注文数(Gross Order)は前年同期比135%、流通総額(GMV)は前年同期比113%成長した。出典:Sea Limited

この成長のために費用がかさみ、2020年通年で13億3,382万ドルの純損失を計上した。ただ、この損失が同社の急成長の負の側面かというとそうではない。同社は昨年、コンバーティブルノート等で低い資本コストでの資金調達を実行し、2020年末時点で、61億6,690万ドルの現金および現金同等物を保有している(図7)。ある程度の赤字は許容範囲だ。

現金および現金同等物は、2017年の13億4740万ドルから61億6,690万ドルまで増えた。出典:Sea Limited

Grabの投資家向け資料と比較すると、Sea LimitedがGrabを著しく突き放していることは明白だ。GojekとTokopediaが噂通り合併するとすれば、Grabと二番手集団を形成するだろう。

結論

  • コロナ禍の収束とともに東南アジアのインターネット経済はもとの成長基調に戻ると考えられている
  • Sea Limitedは東南アジアテック業界で他を圧倒している

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