マスクは最大十数億ドルの損でTwitter買収から脱出できそう

テスラCEOのイーロン・マスクは、スパムや偽アカウントに関するTwitterが提出したデータへの疑念を理由に買収合意を覆そうとしている。Twitterにとっては自らを最も高く売れる機会を失う可能性が高まっている。

マスクは最大十数億ドルの損でTwitter買収から脱出できそう
2020年12月1日(火)、ドイツ・ベルリンで開催されたアクセル・シュプリンガー賞の授賞式に到着した、スペースXの創業者でテスラの最高経営責任者であるイーロン・マスク。Photographer: Liesa Johannssen-Koppitz/Bloomberg

テスラCEOのイーロン・マスクは、スパムや偽アカウントに関するTwitterが提出したデータへの疑念を理由に買収合意を覆そうとしている。Twitterにとっては自らを最も高く売れる機会を失う可能性が高まっている。

テスラCEOのイーロン・マスクは、440億ドルのTwitter買収契約を破棄したいと考えていることが、彼の代理人弁護士が金曜日に同社の最高法務責任者に送った手紙により明らかになった。

証券規制当局に提出されたマスクの顧問である弁護士事務所スキャデン・アープスのマイク・リングラー弁護士は、収益化可能なデイリーアクティブユーザー(mDAU)の約5%がスパムアカウントであるというTwitterの主張について、これを評価するための必要なデータや情報を提供していないと、先週金曜日の規制当局への提出書類の中で主張した。

リングラーによると、Twitterは「その契約の複数の条項に重大な違反をしている」し、契約を締結する際に「虚偽かつ誤解を招く表現」をしたようだという。Twitterは、公開情報のみからスパムアカウントを算出することは不可能であり、専門家チームがレビューを行って5%という数字に到達していると述べている。

これに対して、Twitterの取締役会会長であるブレット・テイラーは、金曜日の午後、取締役会が当初合意した価格と条件で取引を実施するために法的措置を取る予定であるとツイートした。Twitterは法廷闘争によってマスクに買収を完了させるか、「特定履行」と呼ばれる法的保護のもとで公正な補償を要求することになるだろう。

テイラーは「デラウェア州の裁判所で勝訴できると確信している」とツイートしている。最高経営責任者(CEO)であるパラグ・アグラワルもこのメッセージをリツイートしている。

4月25日に締結されたTwitterとの買収契約の条件に基づき、マスクは最低でも10億ドルの手数料を請求される可能性がある。しかし、Twitterのフェイクアカウントのデータに関する彼の不満の正当性を裁判所が認めた場合、この10億ドルが課されなくなる可能性がある。

マスクにとってはいずれにしても薄いダメージで「逃げ道」を確保することに成功したと言っていいだろう。マスクの訴えが通った場合はタダ。通らなかった場合も10億ドルと裁判費用がのしかかるが、テスラ株を大量に売ったマスクにとっては、十分に支払える金額だ。

これに先立って、ワシントン・ポストはマスクのチームは、買収案件の支援者たちとの資金提供に関する議論を止めたと報じていた。資金のパイプラインが途絶えたとすると、現在のマスクにはすでに買収を完了させる能力が欠如していると考えることもできる。

Read more

米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国人は自動車が大好きだ。バッテリーで走らない限りは。ピュー・リサーチ・センターが7月に発表した世論調査によると、電気自動車(EV)の購入を検討する米国人は5分の2以下だった。充電網が絶えず拡大し、選べるEVの車種がますます増えているにもかかわらず、このシェアは前年をわずかに下回っている。 この言葉は、相対的な無策に裏打ちされている。2023年第3四半期には、バッテリー電気自動車(BEV)は全自動車販売台数の8%を占めていた。今年これまでに米国で販売されたEV(ハイブリッド車を除く)は100万台に満たず、自動車大国でない欧州の半分強である(図表参照)。中国のドライバーはその4倍近くを購入している。

By エコノミスト(英国)
労働者の黄金時代:雇用はどう変化しているか[英エコノミスト]

労働者の黄金時代:雇用はどう変化しているか[英エコノミスト]

2010年代半ばは労働者にとって最悪の時代だったという点では、ほぼ誰もが同意している。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの人類学者であるデイヴィッド・グレーバーは、「ブルシット・ジョブ(どうでもいい仕事)」という言葉を作り、無目的な仕事が蔓延していると主張した。2007年から2009年にかけての世界金融危機からの回復には時間がかかり、豊かな国々で構成されるOECDクラブでは、労働人口の約7%が完全に仕事を失っていた。賃金の伸びは弱く、所得格差はとどまるところを知らない。 状況はどう変わったか。富裕国の世界では今、労働者は黄金時代を迎えている。社会が高齢化するにつれて、労働はより希少になり、より良い報酬が得られるようになっている。政府は大きな支出を行い、経済を活性化させ、賃上げ要求を後押ししている。一方、人工知能(AI)は労働者、特に熟練度の低い労働者の生産性を向上させており、これも賃金上昇につながる可能性がある。例えば、労働力が不足しているところでは、先端技術の利用は賃金を上昇させる可能性が高い。その結果、労働市場の仕組みが一変する。 その理由を理解するために、暗

By エコノミスト(英国)
中国は地球を救うのか、それとも破壊するのか?[英エコノミスト]

中国は地球を救うのか、それとも破壊するのか?[英エコノミスト]

脳腫瘍で余命いくばくもないトゥー・チャンワンは、最後の言葉を残した。その中国の気象学者は、気候が温暖化していることに気づいていた。1961年、彼は共産党の機関紙『人民日報』で、人類の生命を維持するための条件が変化する可能性があると警告した。 しかし彼は、温暖化は太陽活動のサイクルの一部であり、いつかは逆転するだろうと考えていた。トゥーは、化石燃料の燃焼が大気中に炭素を排出し、気候変動を引き起こしているとは考えなかった。彼の論文の数ページ前の『人民日報』のその号には、ニヤリと笑う炭鉱労働者の写真が掲載されていた。中国は欧米に経済的に追いつくため、工業化を急いでいた。 今日、中国は工業大国であり、世界の製造業の4分の1以上を擁する。しかし、その進歩の代償として排出量が増加している。過去30年間、中国はどの国よりも多くの二酸化炭素を大気中に排出してきた(図表1参照)。調査会社のロディウム・グループによれば、中国は毎年世界の温室効果ガスの4分の1以上を排出している。これは、2位の米国の約2倍である(ただし、一人当たりで見ると米国の方がまだひどい)。

By エコノミスト(英国)