Quibiが提供する10分未満の有料購読動画は市場の試金石

有料購読動画のQuibiは今後、性能向上が減速しているモバイルにおいて、消費者向けのアプリケーションに機会があるのかを測る試金石になりそうです。

吉田拓史

26 2月 2020 — 2 min read

Quibiは今年4月にミレニアル世代にビデオサブスクリプションを提供し、10分未満の短編動画を提供する予定です。動画製品には様々な類型があり、Netflixのような専門家による高品質な長尺動画、YouTubeのようなユーザー生成コンテンツ（UGC）の短尺〜中尺動画、TikTokのようなスマホ専用の短尺動画が認められます。それからSnapchatを叩きのめしたInstagramも短尺動画の有力なプラットフォームであることを忘れてはいけません。

アイデアはこのとおりです。Quibiで番組を見ながら携帯電話を回転させると、別の視点が得られます。すべてのショー（および広告）は、ポートレートとランドスケープの両方で撮影および編集されます。作成者は2つのビデオファイルと個別のオーディオファイルをアップロードします。これらのファイルは同期されて同時に携帯電話にストリーミングされるため、デバイスを回転させるとすぐにビデオが切り替わります。

巧妙なストリーミングと圧縮の技術により、縦横両用型ビデオは標準ビデオよりも20％だけ多くのデータを使用するに留まります。視聴していないビデオフィードは、低解像度の「サイドカー」ストリームとして到着し、切り替えたときに最高品質にジャンプします。たとえば、あなたが縦の動画を見ているとしたら同時にストリームされている横の動画は低解像度で同時ストリームされており、あなたが画面を横にすると、通信状況やモバイルの処理能力などに応じて、タイムラグが生じるものの、高解像度になる。そのときには縦の動画が低解像度でストリームされている…。

ダウンロードしたオフライン視聴用の回転型ビデオはそれより大きくなりますが、それでも従来のビデオの2倍にはなりません。 CTOのロブ・ポスト氏によると、この技術はすべて同社の特許ポートフォリオの基礎となっています。

このモバイル動画の鍵は5Gです。大容量のデータ通信を多数のデバイスに許容するワイヤレスネットワークの存在がなければ、利用者は20パーセントも通信量を増やす縦横両用動画の利用を許容するとは考えられないからです。

QuibiはTikTokのようにスマホ利用者の行動を想定して短く、なおかつNetflixのように高い品質の動画を提供することで、月に4.99〜7.99ドルの有料購読を勝ち取れると見ているのです。ロサンゼルスを拠点とする同社は、T-Mobileと協力して、キャリアの顧客に無料でバージョンを提供する予定です。

「クイックバイト」の略称であるQuibiはドリームチームの陣容を整えました。ドリームワークスアニメーションとディズニーの元最高責任者であるジェフェリー・カッツェンバーグが会長であり、イーベイとヒューレットパッカードを率いたメグ・ホイットマンは最高経営責任者です。カッツェンバーグとホイットマンは、ほぼ2年前にこのアイデアを策定し、それからずっとハリウッドの有力者の協力を仰いできました。Quibiの幹部には各々の業界でキャリアを積んできたベテランが名前を並べています。

4月にリリースされるQuibiは、3つの異なるコンテンツ層に基づいて構築されます。最高層の「灯台」。中間層の「クイックバイト」。ニュースに焦点を当てた「毎日の必需品」です。カッツェンバーグは、これらの毎日の必需品を「秘密のソース」と呼び、定期的な視聴習慣を作成するために、信頼できる情報源から良質な方法で日々の情報を厳選して提供します。

Quibiが「映像ナラティブの第三世代」なのかどうか、は業界の重要な風見鶏です。VergeのAshley Carmanのインタビューによると、カッツェンバーグは、新しいビデオストリーミングサービスQuibiが、Netflix、Disney +、HBO Max、Peacock、または近日開始または開始予定のその他のストリーミングサービスのいずれとも競合していないと主張しています。

しかし、ストリーミングの巨人であるNetflixやAmazonと競合するためのコンテンツのライブラリをゼロから構築することは、Quibiがお金を使う必要があることを意味します。Bloomberg Intelligenceによると、オンラインコンテンツの需要の高まりにより、ドラマを制作するための平均費用は2〜3年前の1エピソードの500万ドル以上にほぼ倍増しました。

しかし、Quibiはまだ実際にアプリを公開しておらず、まだまだ準備ができていません。Quibiの経験豊かなベテランたちは、ユーザーの反応を見ながら、逐次、製品開発を変更していく現代的な手法には通暁しているように見えません。危険な試みのようにみえ、また、非常に興味深い挑戦でもあるQuibiがどのような結果をもたらすかは注目に値します。Quibiは今後モバイルにおいて、消費者向けのアプリケーションに機会があるのかを探る高価な実験になりそうです。