クリプト業界、連鎖破綻の危機か?

クリプト(暗号通貨)業界で240億ドル相当の資産を運用した分散型金融(DeFi)プラットフォームが経営破綻の危機に直面している。さらなる信用の収縮がドミノ現象の呼び水になるか注視が必要だ。

クリプト業界、連鎖破綻の危機か?
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クリプト(暗号通貨)業界で240億ドル相当の資産を運用した分散型金融(DeFi)プラットフォームが経営破綻の危機に直面している。さらなる信用の収縮がドミノ現象の呼び水になるか注視が必要だ。

分散型金融(DeFi)プラットフォームであり、最大のクリプトレンディング業者の1つであるCelsius Network(セルシウス・ネットワークス)は、日曜日の夜、「すべての引き出し、スワップ、アカウント間の転送を一時停止する」と発表した。

同社のトークンであるCELは、CoinMarketCapによると、この記事の執筆時点で18セントで取引されている。これは、CELが3ドルだった4月8日から94%減少している。1年前、このトークンは7ドル近い価値があった。

セルシウスは、顧客がビットコイン、イーサリアム、テザーを預け、毎週利払いを受けることができるようにする。時間軸とトークンに応じて、このプラットフォームは年18%もの利息を提供する。セルシウスのウェブサイトでは、170万人が直接的、間接的に顧客であると明言している。

この発表は、週末の間に暗号通貨市場が更に暴落したことを受けたものと考えられる。

セルシウスの高い利回り、失敗したステーブルコイン・テラとのつながり、そしてその自己資本については疑問が呈されてきた。同社のプラットフォーム上の資産価値は、2021年12月下旬に開示した240億ドルから減少し、約38億ドルまで著しく減少した。3月から5月にかけて、10億ドルが流出したとフィナンシャル・タイムズ紙(FT)は報じている。

同社は6月7日の「Damn the torpedoes」と題したブログ記事で、「セルシウスには、当社の包括的流動性リスク管理フレームワークによって指示された、義務を果たすための準備金(と十分すぎるほどのETH)がある」と述べていたが、それはすぐさま裏切られた。

暗号通貨調査会社ナンセンは5月にテラの崩壊の要因の一つにセルシウスの裁定取引が関わっていたと主張した(セルシウスはコメントをしていない)。しかし、その結果、テラが崩壊することによって大暴落が起き、それがセルシウスのもともと怪しかった持続可能性を直撃したことになる。

懐疑論者は、セルシアス・ネットワークは破綻するに違いないと繰り返し警告してきた。中には、セルシアスはポンジ・スキームだと主張する人さえいる(本当に多くのクリプト/Web3のプロジェクトはポンジ・スキームと指摘されている)。ポンジ・スキームは新規加入者の出資金を既存加入者の利益に還元することを繰り返す持続不可能な詐欺的手法のことを指す。

その規模の大きさから、セルシウスは暗号通貨市場の他の多くの部分に触れている。例えば、セルシウス・ネットワークは、ドルペッグのステーブルコインであるテザーから5億ドルを借り入れている。この借金はビットコインを担保にしている。「ビットコインが下落すれば、マージンコールが発生し、さらにビットコインを渡さなければならない」と、セルシウスのアレックス・マシンスキーCEOは昨年、フィナンシャル・タイムズ紙に語っている。

セルシウスがテラと同じ運命をたどる時、連鎖的なDeFiの破綻が起きるかどうかが今後の焦点となる。最大級のDeFi貸金業者が11月のベンチャーキャピタルファンディングから数ヶ月で消え失せようとしている事実は、他の貸金業者にも厳しい視線が注がれることを意味するだろう。破綻によって加速される信用の収縮が自転車操業のクリプトスタートアップの資金調達環境を苦しくし、セルシウスやテラのような持続不可能なリターンを保証した他の新興企業の寿命が短くなったことは確かだ。

セルシウスは、州や連邦政府の規制当局の監視の対象となっている。同社は他の数社とともに、仮想トークン預金に利息を支払う企業に対する証券取引委員会の広範な調査の対象になっていると、ブルームバーグは今年初めに報じている。

また、その予兆は昨年時点であった。セルシウスのCFOは昨年11月にイスラエルでマネーロンダリング、詐欺、性的暴行の疑いで逮捕された(これらの疑惑は前職での行動に関するもので、逮捕後セルシウスでは停職処分となった)。

セルシウスは昨年まで非常に有望な新興企業だと信じられていた。11月に「応募超過」のシリーズB資金調達ラウンドを7億5,000万ドルに拡大した際に32億5,000万ドルと評価されていた。同社の投資家にはステーブルコインの発行元であるテザー・インターナショナル、成長株ファンドのWestCap Group、カナダで2番目に大きい年金基金であるケベック州金融公社(CDPQ)が名を連ねていた。

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