シンクロン、米国で初めて脳埋め込み装置を患者に移植  マスクのニューラルリンクに先んじる
脳血管に埋め込んだ装置が受信した電気信号によってコンピューター上でタイピングを行う患者のイメージ。出典:Synchron

シンクロン、米国で初めて脳埋め込み装置を患者に移植 マスクのニューラルリンクに先んじる

ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の新興企業であるシンクロン(Synchron)が初めて米国内での人へのデバイスの移植を実現し、イーロン・マスクのニューラリンク(Neuralink)に先んじた。

編集部

ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の新興企業であるシンクロン(Synchron)が初めて米国内での人へのデバイスの移植を実現し、イーロン・マスクのニューラリンク(Neuralink)に先んじた。

米ニューヨークに拠点を置くシンクロンは、7月初め、米国の患者に初めてデバイスを移植したと報じられた。ブルームバーグが最初に報じたところによると、この新興企業は7月6日、ニューヨークのマウントサイナイ病院で、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の脳に1.5インチのデバイスを移植したという。

この装置は、患者が考えるだけで、ウェブを見たり、電子メールやテキストでコミュニケーションできるようになることを期待している。この装置は、コンピュータに送られるコマンドによって、患者の思考を行動に変換する。シンクロンはすでにオーストラリアの4人の患者にこの装置を移植しており、彼らは脳への移植を利用して、WhatsAppでメッセージを送ったり、オンラインで買い物をしたりすることができるようになったとのことだ。

オーストラリアに拠点を置く同社は昨年、米食品医薬品局(FDA)から、重度の麻痺を抱える米国の患者6人を対象にした人体実験開始の許可を得ている。2019年、同社はオーストラリアのメルボルンで、最初のヒトの患者にデバイスを移植した。

一方、イーロン・マスクのニューラリンク(Neuralink)はまだFDAの承認を受けていないが、マスクは同社が2022年までにコンピューターチップを人間に移植し始める計画であると述べている。しかし、このインプラントは患者の頭蓋骨の一部を切除する必要があり、同社はまだ人体実験の認可を受けていない。

ニューラルリンクとシンクロンの製品には、サイズと設置方法という、いくつかの重要な違いがある。シンクロンの製品は、カテーテルを使って人間の頭蓋骨を切らずに、頸静脈から脳の血管に挿入することができる。その際、2回に分けて手術を行う必要がある。一方、ニューラリンクは、より小型で強力な装置を計画しており、その場合、個人の頭蓋骨の一部を切除する必要があり、ロボットを使って手術を行うことになる。

シンクロンは2021年7月にFDAの承認を得て、6人の患者の脳内に挿入する「ステントロード(Stentrode)」の人体実験を開始していた。ステントロードは、血管や気管など管状の内臓器官を広げるのに使用されている医療機器に小さな電極がついたデバイスのことだ。

テントロード(Stentrode)を血管内に挿入しているイメージ。出典:シンクロン(Synchron)
テントロード(Stentrode)のイメージ図。出典:シンクロン(Synchron)

シンクロンは、今後数カ月から数年の間に、デバイスのサイズを小さくする一方で、コンピューティングパワーを高めることを目標としている。これが成功すれば、各患者の脳のさまざまな部位に多数のステントロードを設置することができ、より多くの機能を発揮させることができるようになるという。介入神経科医でシンクロンの最高経営責任者でもあるトーマス・オクスリーは、彼の技術によって、脳の働きに関する新しいデータや洞察が大量に生み出され、精神疾患を含む多くの疾患に対するブレークスルーにつながる可能性があると期待している。「脳の解読に関するルネッサンスの始まりのような気がする」と彼はブルームバーグに対して語っている。

今年初め、ニューラリンクの共同創業者で元プレジデントのマックス・ホダックは、マスクのスタートアップを去った後、シンクロンに投資していたことをブルームバーグは明らかにしている。