コロナはオフィスを殺した:数兆円規模の債務不履行の見通しも

コロナで都市の中心から離れた米企業の従業員の一部は、レイオフやハイブリッドワークで二度とオフィスに戻ってこなかった。不動産会社のデフォルト(債務不履行)が予想され、金融セクターに鋭い痛みが走る可能性がある。

コロナはオフィスを殺した:数兆円規模の債務不履行の見通しも
Photo by Annie Spratt

コロナで都市の中心から離れた米企業の従業員の一部は、レイオフやハイブリッドワークで二度とオフィスに戻ってこなかった。不動産会社のデフォルト(債務不履行)が予想され、金融セクターに鋭い痛みが走る可能性がある。


SNS大手のPinterestは、サンフランシスコの低迷するオフィス市場に打撃を与えた最新のテック企業となった。同社は2月のレイオフで余剰化したオフィスを整理するため、解約に伴う違約金約9,000万ドルを負担したことは驚きを持って受け止められた。

不動産会社CBREの速報データによると、サンフランシスコのオフィス空室率は、すでに過去最高を記録しているが、さらに上昇を続けている。2023年第1四半期の空室率は29.5%に上昇し、この数字は次の四半期にも拡大する可能性が高いという。

パンデミックでは、都心の中心業務地区(CBD)が封鎖され、大きな打撃を受けた。パンデミックが緩和してからは、オフィス復帰の発表が相次ぎ、CBDの再活性化が期待された。しかし、復活はすぐさま頭打ちとなり、都市には多くの未使用の商業スペースが残された。

全国的に見ると、オフィス不動産の空室率は12.8%で、大不況以降最も高く、さらに高い20%を指すデータもある、とNBCは報じている。

高価格帯のオフィスも例外ではない。ムーディーズ・アナリティクスの分析によると、CBDの米国クラスAオフィスの賃貸面積は、2021年第4四半期にパンデミック以来初めて減少した。オフィスを担保とした証券は、金利上昇を受けて、より高い利回りを持つ債券や証券との競争を迫られ苦戦している。

テクノロジー企業のレイオフは、「オフィスの死」の主要因である。Alphabet、Microsoft、Meta Platforms、Amazonなどの米国のテクノロジー大手は、パンデミックによる減速や、都市部の境内から郊外への移転という不動産トレンドにより、オフィス面積を縮小してサブリースを増やした。ブルームバーグによると、全米で約1億7,400万平方フィート(約1,620万平米)のオフィススペースがサブリースに出されており、パンデミック前の水準のほぼ2倍という。

もう一つの要因は、ハイブリッドワークである。米不動産サービス大手クッシュマン&ウェイクフィールドの報告によると、ハイブリッドワークの台頭により、2030年までに米国のオフィス空室は11億平方フィートに達し、パンデミック前の水準より55%増加すると予測している。

米テック産業の集積地の一つであるサンフランシスコは、最も影響が深刻で、悪循環に飲み込まれている。市中心部では不動産価値が下落し、ホームレス・麻薬危機が進行。交通機関の運行状況は、パンデミック前の40%程度までしか戻っておらず、市政府の財政危機を背景としたサービス削減の恐れがあるため、通勤者の移動がさらに困難になっている。

シアトルやニューヨークでも、人通りが少なく、オフィス付近での消費活動が減少しているとされる。デフォルトを回避するため、ニューヨークのオフィス業者は住宅への転用を認める規制緩和を要求している。

空っぽのオフィスは、銀行不安に見舞われた金融セクターへの新たな脅威となる可能性がある。JPモルガンは、オフィスの稼働率がパンデミック時代の低迷から回復しないと仮定して、オフィス物件に関連する商業不動産担保証券(CMBS)の約21%、約390億ドル分がデフォルトになると予測している。このシナリオでは、ローン保有者の損失率は8.6%となる。この場合、銀行セクターの損失は約380億ドル、生命保険会社の損失は約160億ドルとなる。

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