オヨの評価急減は孫正義氏、野村、みずほの頭痛の種に
ソフトバンクが筆頭株主を務めるインド新興企業のバリュエーションが急落したとされ、創業者が日本の金融機関から借りた20億ドルを孫正義氏が保証せざるを得ないシナリオが浮上している。
ソフトバンクが筆頭株主を務めるインド新興企業のバリュエーションが急落したとされ、創業者が日本の金融機関から借りた20億ドルを孫正義氏が保証せざるを得ないシナリオが浮上している。
ソフトバンク・グループ(SBG)が、上場が近いと想定されるインドの格安ホテルチェーン・オヨ(Oyo)の評価額を27億ドルに引き下げたと報じられた。SBGはOyoの株式45%を握る筆頭株主である。
Sequoia IndiaとLightspeed Venture Partners India(いずれもスタートアップから大幅なエグジットを行っている)、Airbnb、Microsoftを支援者に持つOyoは、2019年のラウンドで約100億ドルと評価された。昨年9月にMicrosoftから戦略的投資を受けた際も、96億ドルの評価額を得ていた。
調査会社Tracxnによると、Oyoは長年にわたり株式および負債による資金調達ラウンドで32億3,000万ドルを調達してきた。つまり、バリュエーションが同社が調達した金額を下回っている可能性がある。
調査会社Entrackrによると、2019年に野村證券、みずほともう1社の日系金融機関3社が創業者のリテシュ・アガルワルに20億ドルを貸し付けた。この資金は、ケイマン諸島に本拠を置くRA Hospitality Holdingsに投入された。野村、みずほはOyoの株式にも直接投資し、野村は、 SBGが保有するOyoの株式の一部を購入した。
2019年10月当時のFTの報道では、20億ドルのうち、アガルワルは米国のLightspeed Venture PartnersとSequoia Indiaの株式買収に13億ドルを費やした。残りの7億ドルは、アガルワル自身による増資に使われる予定と報じられていた。その際のバリュエーションは約100億ドルに達したと報じられている。
2つのベンチャーキャピタル(VC)にとっては、それぞれ11倍と10倍のリターンを得る絶好の出口戦略となった。一方で、この取引は貸し手にとってはるかにリスクの高いものになった。
融資に関しては、アガルワルが当時保有していたOyoの株式9%を担保に融資が行われ、取引全体は孫自身が保証したという。返済は3年後(つまり2022年)、ちょうどOyoがIPOを予定している時期に行われる予定だったという。当時のIPO時の予想バリュエーションは180億ドルで、アガルワルの持ち株は少なくとも48億ドルの価値があり、これにより彼は利子をつけてローンを返済することができるようになる、という枠組みだ。
野村とSBGは何度も一緒に仕事をしてきたことで知られている。野村は、ゴールドマン・サックスと共同でヤフー・ジャパンを通信会社ソフトバンクの連結子会社化する取引を支援した。また、野村は2019年4月に行われたSBGの5,000億円の社債発行の主幹事でもあった。2018年12月のソフトバンクの通信会社IPOも野村は最大の引受け主幹事だった。みずほはソフトバンクのあらゆる事業体に大量の融資を行っており、一蓮托生の間柄だ。
アガルワル
Oyoの評価額がおよそ四分の一である27億ドルまで下がったため、アガルワルは追加担保の差し入れを求められているはずだ。債務総額を利息を含めず20億ドルと勘案しても、アガルワルの持分は33.15%と2021年に報じられており、これは8億9,500万ドルに相当する。約11億ドル分の担保が足らない状態だ。みずほ、野村、孫、アガルワルの間でどのような意思疎通がされているだろうか。
孫は自身が保有するSBG株を大量に担保差し入れしている。もし、アガルワルが債務をうまく扱えなくなると、孫個人に追加的なプレッシャーが掛かることになる。加えて、孫はSBGの株価が下がると追証を求められる状況にあり、SBGの自社株買いはそれを避ける意味合いを含んでいるように見える。
そしてこれは、まだ成就していないIPOに関する話だ。Oyoは、先週月曜日にインドの市場規制当局に新たな財務書類を提出している。ただ、直近の財務報告を見ると、同社から通常の格安ホテルチェーン以外の性質を見出すのは難しそうだ。今回のバリュエーションの変更は、他のホテルチェーンを参考に割り出され、これまでのプレミアムを払底したのだろう。
わずか19歳でOyoを創業したアガルワルは、SBGのマーケティング資料でアダム・ニューマンやレックス・グリーンシル(ふたりとも超大型のスキャンダルを引き起こした)とともに「次世代のAI起業家」と喧伝されていた。日本でも彼にスポットライトを当てたメディア記事がたくさんある。しかし、アガルワルが結んだ過剰にリスキーな債務契約を見る限り、実態はどうも違うようだ。