テックIPO、6割超が発行価格下回る

今年IPOしたテクノロジー企業の64%は発行価格を下回っている。ブームだった2020年には劣るものの、2019年とは同様のパフォーマンスだったため、IPOを過剰にもてはやす時期が過ぎたと考えるべきだろう。

テックIPO、6割超が発行価格下回る
Photo by Maxim Hopman on Unsplash

要点

今年IPOしたテクノロジー企業の64%は発行価格を下回っている。ブームだった2020年には劣るものの、2019年とは同様のパフォーマンスだったため、IPOを過剰にもてはやす時期が過ぎたと考えるべきだろう。


米メディアThe Informationが参照したDealogicのデータによると、今年IPOで公開したテクノロジー企業の3分の2近くが、IPO価格を下回る価格で取引されている。

Dealogicによると、今年IPOしたテクノロジー企業は132社、調達額は約860億ドルで、募集件数、調達額ともに昨年の約2倍となった。また、特別目的買収会社(SPAC)との合併や直接上場によるテクノロジー企業を含めると、新規公開されたハイテク企業の数は、昨年の101社に対し、257社となる。

しかし、12月6日の市場終了時点で132社のテクノロジーIPO企業のうち85社がIPO価格を下回っている。全体の64%程度だ。

新規公開されたテクノロジー企業の株価はIPO後1カ月で平均24%上昇したのに対し、昨年は41%上昇した。時間が経つにつれ、今年の新規公開企業の株価はさらに悪化した。IPOから半年後のテクノロジー企業の株価は平均11%しか上昇していないのに対し、昨年は55%上昇していた(このデータには、SPACによる合併やダイレクト・リスティングは含まれていない)。

例えば、出会い系アプリの「Bumble」は、上場後数週間で急上昇したにもかかわらず、現在はIPO価格より13%も低い価格で取引されている。株取引アプリの「Robinhood」は、IPOから4カ月以上が経過した現在、IPO価格よりも40%低い価格で取引されており、初期の高騰から一転している。また、中古衣料品販売のPoshmarkの株価は、IPO価格から53%も下落している。また、中国の配車企業「Didi」は、6月下旬のIPO以来、価値が半分になっている。

もちろん、うまくいったIPOもたくさんある。例えば、アマゾンが支援する電気トラックメーカー「Rivian」は、月曜日の終値が1株117ドル近くとなり、公開価格78ドルから50%も上昇した。企業向けソフトウェア企業「Monday.com」の株価は、公開価格155ドルから288ドルへと86%も上昇した。対戦型ゲームプラットフォームのEsports Technologiesは300%以上の上昇を記録している。

しかし、これらは例外的なケースのようだ。脆弱なパフォーマンスは、それぞれの企業に特有の要因を反映している。例えば、中国政府がDidiのアプリをアプリストアから削除するよう強制し、政府がDidiの上場を望んでいなかったという報道がなされたことで、Didiに対する投資家の信頼は失われた。その後、Didiは米国での上場を廃止し、香港の証券取引所に移行すると発表している。一方、Poshmarkはパンデミック時には好調だったものの、今年は急激に成長が鈍化している。

IPOの数の多さも要因の一つである可能性が高い。今年のほとんどの期間、IPOのパフォーマンスは好調だったが、ここ数ヶ月でその利益の多くが失われているという。

全体的に見ると、今年のIPO後のパフォーマンスは、2019年のそれと比べても遜色ない。2019年に上場した企業の平均的な株価上昇率は、上場1カ月後に28%であったのに対し、今年は24%とやや低い数値となっている。半年後、2019年にIPOした企業の株価上昇率は平均8%でしたが、2021年のその数字は12%とやや高めだ。

Read more

OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

OpenAIは東京オフィスで、日本での採用、法人セールス、カスタマーサポートなどを順次開始する予定。日本企業向けに最適化されたGPT-4カスタムモデルの提供を見込む。日本での拠点設立は、政官の積極的な姿勢や法体系が寄与した可能性がある。OpenAIは法人顧客の獲得に注力しており、世界各地で大手企業向けにイベントを開催するなど営業活動を強化。

By 吉田拓史
アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表  往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表 往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビは4月10日、日本語のバリアブルフォント「百千鳥」を発表した。レトロ調の手書き風フォントで、太さ(ウェイト)の軸に加えて、字幅(ワイズ)の軸を組み込んだ初の日本語バリアブルフォント。近年のレトロブームを汲み、デザイン現場の様々な要望に応えることが期待されている。

By 吉田拓史