米FTCはマイクロソフトの「業界最強ゲーム」の囲い込みを阻止するか?
Microsoftはゲーム業界で最も価値のある制作スタジオを9兆円の巨額で買収しようとしたが、規制当局が立ちふさがっている。これまで有力スタジオの買収を繰り返してきたMicrosoftに勝算はあるのか。
Microsoftはゲーム業界で最も価値のある制作スタジオを9兆円の巨額で買収しようとしたが、規制当局が立ちふさがっている。これまで有力スタジオの買収を繰り返してきたMicrosoftに勝算はあるのか。
Microsoftは、687億ドルでのActivision Blizzardの買収案をめぐり、連邦取引委員会(FTC)と法廷で対決している。FTCは、8月2日に別件の法的紛争が始まる前に、この買収を中止させる仮処分を求めている。Microsoftは7月18日までに買収を成立させなければ、Blizzardに30億ドルの破談金を支払うか、買収条件を再交渉しなければならない。法廷は22日に始まったばかりであり、英国の競争・市場庁(CMA)も、この買収を阻止しようとしている。
大規模合併の可否はゲーム業界の今後に大きな影響を与える。Blizzardは『コールオブデューティ』というモンスター級のヒットコンテンツを展開しており、これがMicrosoftのXboxプラットフォームに独占展開される展開となれば、ソニーや任天堂らのコンソール提供者との間の均衡が壊れる可能性がある。Microsoftは大手ゲームスタジオの RareとBethesdaを最近買収完了したばかりであり、Blizzardが加わることは警戒を引き起こしている。
消費者側から見ると、ゲームタイトルとプラットフォームの結びつきが過剰に高まると、選択が狭まることにもなる。
『コールオブデューティ』が唯一無二の資産であるか、は重要な争点となった。FTC側のロビン・リー博士は、証言の中で「コール オブ デューティ」を特別な価値を持つゲームと評し、Xboxがこれを独占した場合、プレイステーションが同等のゲームをすぐに作ることは難しいと述べた。また、リーは、「コール オブ デューティ」の毎年の新作リリースは他のゲームとの大きな違いであり、高品質のゲームが頻繁にリリースされない現状で、新しいコンテンツの供給はそのゲームの貴重さを示すものだと主張した。
これに対し、Microsoft側のエリザベス・ベイリー博士は、「コール オブ デューティ」が必須のゲームタイトルであるという意見に反論した。ベイリーは、「コール オブ デューティ」が特別に重要なゲームであるという見方は誤っていて、リーの市場観は現実を反映しておらず狭すぎると主張。さらに、ベイリーは、今回の買収により、Blizzardのゲームの知名度と普及率が拡大する可能性があると述べた。
買収が成立した場合、Microsoftが『コールオブデューティ』を自社プラットフォーム限定コンテンツにするか、もまた重要な争点である。Microsoftはこれまで限定化は実行しないという説明をしてきた。だが、同社はBethesdaのときにそれを覆した前例がある、とFTCは主張した。プレイステーションのジム・ライアンCEOは、Bethesdaの今秋発売の『Starfield』がXboxで独占販売されることを反競争的だとは考えていないと証言した。プレイステーションも同様の独占契約をスタジオと結んでいる。
しかし、ライアンはマイクロソフトが「完全な差し押さえや部分的な差し押さえ」を通じてプレイステーションを『コールオブデューティ』へのアクセスから締め出すことで、「何らか形で我々にダメージを与える」という見方を示した。
その他のハイライト
- Xboxゲームスタジオの責任者であるマット・ブーティがMicrosoft Gaming CFOのティム・スチュアートに宛てた電子メール(2019年12月)では、「われわれは、ソニーを廃業に追い込むことができる非常にユニークな立場にある」と示唆されている。ブーティは、クラウドゲームサービスにおいて、コンテンツは堀であり、Xbox Game Passに対抗できるのは、GoogleやAmazonではなく、ソニーだけだと考えていた。
- Microsoft Gaming CEOフィル・スペンサーは社内メモ(2019年2月)で、モバイルゲームのMAU(月間アクティブユーザー数)が全世界で伸びているにも関わらず、TAM(アクセス可能な市場)は伸びていないことを指摘し、モバイル市場での前途に暗い見方を示していた。
- Microsoftの戦略レビュー(2020年4月)は、Google PlayやApple App Storeのエコシステムへの参入が難しく、ブラウザベースのゲーム体験のサポートにもっとリソースを割くべきだと示唆している。
本筋からそれるが興味深い点
- Microsoftの内部文書では、カスタムシリコンの開発や、クラウドからWindows OSをストリーミングする計画が明らかにされている。