アント、ディディ、バイトダンスの上場は来年3月まで塩漬けか

アントグループ、ディディグローバル、バイトダンス、といった中国大手企業による新規株式公開(IPO)は、習近平氏の3選とそれに伴う官僚の配置換えを見越し、少なくともあと6カ月は承認されない可能性が高いようだ。

アント、ディディ、バイトダンスの上場は来年3月まで塩漬けか
香港証券取引所。ハンセン指数を映すパネル。"RISE 2018 - Venture" by RISEConf is licensed under CC BY 2.0.

アントグループ、ディディグローバル、バイトダンス、といった中国大手企業による新規株式公開(IPO)は、習近平氏の3選とそれに伴う官僚の配置換えを見越し、少なくともあと6カ月は承認されない可能性が高いようだ。


米テクノロジー誌The Informationは中国企業との政府間協議に直接関わる人物を情報源として報じたところによると、10月16位日に開催される中国共産党第20回全国代表大会では、習近平主席の3選が確実視されているが、これに伴い官僚の配置換えが行われる予定だ。

同誌が引用した情報源は、来年3月まで官僚は現状のポストに留まるが、同昇進や別のポストへの移動を危うくする難題には手を出さないだろう、と言っている。したがって、IPOの凍結は、少なくとも3月まで続くと考えていいようだ。

大手弁護士事務所Skadden, Arps, Slate, Meagher & FlomからバイトダンスのCFOに転じたJulie Gaoは8月下旬、同社がIPOを行わないことを従業員に告げたと、関係者が香港紙South China Morning Postに語っている。バイトダンスの評価額は7月に打撃を受け、投資家は2,750億ドルという低い評価額で同社の株を買っていると報じられた。同社はピーク時には4,000億ドルと評価され、世界の未上場新興企業の中で最高値の1つだった。

バイトダンスは少なくとも来年後半頃までIPOの可能性を先送りしなければならないことが確実となった、と同紙は書いている。国内では、政府はバイトダンスのニュースやエンターテイメントアプリを、公式メッセージを広めるのに重要な強力なプロパガンダツールとみなしている。国営メディアの従業員がバイトダンスの従業員を兼務している、と米ビジネス誌フォーブスが報じた

バイトダンスは、約3,000億ドルのバリュエーションでの最大30億ドルの自社株買いを投資家に対して提案しており、新規株式公開(IPO)の計画が失速した後、既存の支援者に現金化する方法を提供している。

米国では政府・議会からの圧力が増している。今週、TikTokの最高執行責任者であるVanessa Pappasは、上院公聴会で米国のユーザーデータを中国の管理から封印するよう強い圧力にさらされた。

また、バリュエーションの下落は従業員インセンティブのストックオプションの魅力を引き剥がすことになる。バイトダンスは従業員を引き止めるための補償として、ストックオプションの価格を20%引き下げると伝えた、と言われる。

アントグループのIPOはより不透明だ。ジャック・マーはアント・グループの経営権を手放すことを計画しているとされるが、中国の法制上、マーが経営権を放棄すると、アントはIPOの再開を少なくとも1年、証券取引所によっては3年間延期する必要があるという。

ここ数週間、IPO凍結が解消される可能性について、好材料も出ている。最近、中国と米国は、米国に上場している中国企業の会計を米国当局が監査できることで合意し、北京から大きな譲歩を得たためだ。米国と中国の間で、監査開示に関する意見の相違があり、ラッキンコーヒーの不正会計やディディに対する上場直後のサイバーセキュリティ調査が、軋轢を生み出していた。

Read more

OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

OpenAIは東京オフィスで、日本での採用、法人セールス、カスタマーサポートなどを順次開始する予定。日本企業向けに最適化されたGPT-4カスタムモデルの提供を見込む。日本での拠点設立は、政官の積極的な姿勢や法体系が寄与した可能性がある。OpenAIは法人顧客の獲得に注力しており、世界各地で大手企業向けにイベントを開催するなど営業活動を強化。

By 吉田拓史
アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表  往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表 往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビは4月10日、日本語のバリアブルフォント「百千鳥」を発表した。レトロ調の手書き風フォントで、太さ(ウェイト)の軸に加えて、字幅(ワイズ)の軸を組み込んだ初の日本語バリアブルフォント。近年のレトロブームを汲み、デザイン現場の様々な要望に応えることが期待されている。

By 吉田拓史