鴻海のテリー・ゴウはジャック・マーと同じ運命か:習政権の照準に入る
台湾総統線に立候補した鴻海精密工業の創業者である郭台銘(テリー・ゴウ)が、習近平国家主席の照準に入ったと取り沙汰されている。アリババのジャック・マーと同じ運命を辿るのだろうか。
台湾総統線に立候補した鴻海精密工業の創業者である郭台銘(テリー・ゴウ)が、習近平国家主席の照準に入ったと取り沙汰されている。アリババのジャック・マーと同じ運命を辿るのだろうか。
中国国営の環球時報は最近、当局が鴻海の税務や土地使用を巡り調査を開始したと報じた。これを受けて、鴻海は中国当局の捜査に協力していると認めた。税務調査官が中国の2つの省にある鴻海子会社に立ち入り、他の2つの省では当局がグループ会社の土地使用について調査しているとされる。調査は、郭台銘が台湾総統戦に出馬したこととの関連性が指摘されている。
環球時報は、郭の出馬について、台湾の野党陣営を「さらに分裂」させかねないとの匿名のアナリストの言葉を引用していた。もしかしたら、長年中国でビジネスを行い、国内に影響力を持つ郭は、共産党にとって好ましくない総統候補なのかもしれない。郭は2019年に鴻海会長を退任し、総統選出馬を表明して9月には取締役も退いた。それでも9月時点で鴻海の株式12.6%を保有しており、影響力を残している。
ブルームバーグによると、郭は8月、アップルのサプライチェーンの大部分を含む中国での大規模な事業展開を根拠に、北京が自らに影響を及ぼす可能性を否定した。郭は、中国が鴻海の資産を差し押さえれば、外国からの投資が抑制され、世界のサプライチェーンが混乱すると警告。中国の威嚇には屈しないと明言していた。
中国が外国資本を魅了する力がなかった時期、台湾は香港とともに本土中国の主要な投資家だった。フィナンシャル・タイムズ(FT)が引用した関係者談話によると、中国の地方政府は、鴻海の投資を獲得するために、さまざまな優遇措置を提供してきた。例えば、鴻海が投資を検討している市や省は、地元の官僚が鴻海の創業者である郭台銘に直接交渉し、低税率や土地の割引などの優遇措置を約束してきた。
この結果、鴻海は中国の各地に工場を建設し、中国の経済発展に大きく貢献した。また、鴻海の成功は、台湾の他の企業にも中国進出の道を開いた。しかし、習近平政権の異例とも言える3期目で潮目は変わった。匿名の政府高官は、FTに対し「鄧小平、江沢民、胡錦濤の3人の前任者の時代には、外国企業に対するこのような乱暴な扱いは考えられなかっただろう」と語った。
郭の状況をジャック・マーのそれと重ね合わせる見方も出ている。ジャック・マーは結局、アリババと金融関連会社アントグループの経営権を事実上手放し、表舞台から去った。
郭とマーは孫正義の友人である。孫はインターネット産業の黎明期に、外国資本を必要としていたアリババに、投資することで成功した。孫も、アリババの他に滴滴出行の当局の意向を無視した米IPOで共産党の不興を買っているフシがあり、最近、デリバティブ取引を通じて、ほぼすべてのアリババ株を手放したことが明らかになった。
郭はソフトバンクグループ(SBG)のビジョンファンドの数ある壮大な失敗案件の一つである建設会社カテラに投資するほど、孫とは深い関係にあった(トップ画像)。
鴻海精密工業は、シャープの親会社として知られ、世界で最も大きな電子製品製造サービス(EMS)の企業。iPhoneやプレイステーションなど多くの製品を製造し、2022年の売上は約6.6兆ニュー台湾ドル(30.4兆円)だった。