反ESGの牙城テキサスが再エネ転換のリーダーに
共和党の勢力圏で、全米最大の化石燃料の産出地でもあるテキサスの再エネ採用が急増し、「意識の高い」カルフォルニア州を凌駕する勢いだ。熱波と経済合理性が州民を太陽光、風力、蓄電池のセットに駆り立てている。
共和党の勢力圏で、全米最大の化石燃料の産出地でもあるテキサスの再エネ採用が急増し、「意識の高い」カルフォルニア州を凌駕する勢いだ。熱波と経済合理性が州民を太陽光、風力、蓄電池のセットに駆り立てている。
州内9割の電力系統運用を行うテキサス州電気信頼性評議会(ERCOT)によると、9月30日現在で18,364メガワット(MW)の太陽光発電設備が設置されており、ピーク時には約370万世帯分の電力を供給できる。テキサス州におけるこの太陽光発電の急増は、主に政策というより市場原理によるもので、特に夏のピーク時の電力需要を満たすのに役立っている。
ジェトロ・ヒューストン事務所長の桜内政大が9月に公開したレポートによると、テキサスは風力発電のリーダーで、2008年から2023年の間に発電量が急増した。しかし、太陽光発電も急速に成長し、2023年(1〜7月)にはテキサスの総発電量の7.3%を占めるようになったという。
テキサス州は今夏深刻な熱波にさらされ、9月にはエアコン使用などの要因によって、電気需要が急増し、大規模な停電の一歩手前までいった。テキサス州民は節電によって大事を免れた。Nathalie Limandibhratha, US Power Associate, BloombergNEFによるレポートは、太陽光と風力が6月下旬の需要急増時に風力発電がそれを補ったことを伝えている。「特に風力発電による高い再生可能エネルギー出力は、純負荷を減少させ、それによってテキサス州のより管理しやすい電力価格を維持するのに役立った」。
特筆すべきは、カリフォルニア州のように、電力会社に再生可能エネルギーの購入を義務付ける規制を設けず、発電のグリーン化を図ったことである。ブルームバーグが引用したERCOTのデータによると、過去10年間で、テキサス州の再生可能エネルギーと蓄電容量は約44,000メガワット急増した。これに対し、化石燃料による発電(主にガス)は、古い発電所の廃止を考慮しても、わずか944メガワットしか増加していない。
BloombergNEFのレポートは、6月20日のリアルタイム価格は1メガワット時(MWh)あたり5,000ドル近くに達し、その日の電力取引額は10億ドルを超えたことを伝えている。これは急増する再エネ発電事業者にとって、売電に力強いインセンティブが付与されていることを意味する。
英エコノミスト誌は、再生可能エネルギーを「リベラルなエネルギー」と敬遠していた保守的な一家が7基の風力発電タービンを所有するようになったことを例示している。サミュエル・デイビスは、テキサス土地自由連合(Texas Land and Liberty Coalition)の代表を務め、牧場主の間で風力と太陽エネルギーを推進する立場になった。彼の両親はガソリンスタンドを買い取り、ガソリンのポンプを撤去して電気自動車(EV)の充電ステーションに改装しているという。
ホワイトハウスによると、テキサス州は昨年可決された画期的な米国の気候変動法の最大の受益者となり、10年末までに大規模な太陽光発電、風力発電、蓄電プロジェクトに約665億ドルの投資を呼び込むと予想されている。
再エネ政策の経緯
地元誌TexasMonthlyのRussell Goldは、再生可能エネルギー大国としての台頭は、再生可能エネルギーに関心を寄せる寄付者の影響を受けたジョージ・W・ブッシュ知事(1995年〜2000年)の時代に始まったと書いている。Goldによると、リック・ペリー時代(2000年〜2015年)には、テキサス州西部のエネルギー豊富な地域と需要の高い都市を結ぶ大規模プロジェクトを立ち上げられ、最近のグレッグ・アボット知事(2015年〜)の批判や再生可能エネルギーの成長を抑制しようとする努力にもかかわらず、テキサス州は再生可能エネルギーと非再生可能エネルギーの両分野で優位を保っている。同州は、石油と天然ガスの生産で依然トップでもある。
再エネ採用を遅らせようとする共和党
しかし太陽光発電事業者にとっては、州当局と共和党が支配する議会が送電網のグリーン化を遅らせようとする動きを見せているため、自由放任の黄金時代は終わりを告げるかもしれない。共和党幹部は、断続的な再生可能エネルギーは化石燃料で発電された電気ほど信頼性が高くないと主張し、天然ガスを強化する対策を提案している。